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#24 地方都市の新たな魅力に出会う ブロンプトンとローカル線の旅/冬のまほろば 晴れたり曇ったり②

ブロンプトンと往く、冬の奈良の旅。桃山から西の京まで近鉄で輪行し、薬師寺を拝観して斑鳩へ。法隆寺と中宮寺をお参りしたのち、奈良市内を目指します。 (旅行日:2024年2月10日〜11日)

▼ ここまでの記録はこちらです。


◆ 花の寺 白毫寺

斑鳩から奈良市内までは何回か自走したことがあります。が、自転車向きの交通量が少ない風情ある道が、なかなか見つかりません。色々なルートを試してみて、まあこれなら許せるか、というのも見つけたのですが、日々加速度的に脳細胞が破壊されているお年頃でもありまして、その日走った道は既に忘却の彼方にあります。
そこで今回はブロンプトンに装着しているBeelineでルートを検索してみましたが、交通量の激しい主要道を果てしなく走らされることになり、晴れたり曇ったりの陰鬱な冬空と相まって、あまり快適なライドではありませんでした。

ともかくも、途中でラーメンと餃子で腹ごしらえし、奈良市南東の山懐へ。
目指すは白毫寺です。

築地塀の小さな門まで、約100段の、風情ある石段を登っていきます。

境内に参拝客は3人ほど。
風の音と鳥のさえずりだけが聞こえる、静かなお寺。
ここは花の寺として知られるが、何せ一年で最も寒い時期なので、椿と白梅がちらほら咲いている程度。3月下旬になると、奈良三大名椿の一つに数えられる五色椿が開花するそうです。
また、秋には、長い石段の両脇が、萩の白い花で埋め尽くされるそう。

ここからは、奈良市街地、そして生駒山を一望できます。去年の冬、初めてここへ来たのですが、この雰囲気がすっかり気に入ってしまい、再訪したいと思い続けていました。
今日も、奈良公園周辺の喧騒とは無縁の境内で、しばらく風と鳥たちの唄に包まれて過ごしました。

◆ 酒場放浪記@奈良

ならまちの風情ある街並みを抜け、JR奈良駅の西口にある今宵の宿へ。三連休というのに、前夜に”HafH”から予約できたのは幸運でした。
部屋で30分ほど昼寝しているうちに、もう夕方5時。外へ出ると、通り雨が降ったようで、地面が濡れ、空気は一段とひんやりしていました。
奈良に来ると呑みに行く店はいつの間にか固定化されていて、今日も奈良駅東口にある、ご夫婦で経営している小料理屋へ足を運びました。お値段はやや高めながら地場のおいしい料理を地酒と共に味わえる店です。大将と女将さんも、いつも京都から自転車で来る人、としてわたしを認知して下さっており、暖簾をくぐりやすいのです。

▲ 1杯目 マカジキのお造りとビール

ビールとヒレ酒を飲みながら、マカジキ、しめ鯖、白子焼き、大和ポークの西京焼き、もう1〜2品頂いたのですが失念。
ヒレ酒で指先までポカポカになって店を出ると、また小雨が落ちてきて、程なく本降りに変わりました。今宵はならまちの深部をうろついて、2軒目を探そうかと思っていたのですが、選択の余地なくアーケード街に逃げ込みます。
アーケード街にはジャズバーがあって、今夜はライブもあるよう。しかし窓から覗いてみると、店内は常連らしきお客さんで既に満席近く、この中に入り込むのは気が引けました。
もう少し歩いていくと、以前来た時には見かけた記憶のないバーがありました。程よい客の入りでもあり、ドアを開けてカウンターに腰を下ろします。

▲ 去年12月に開店したばかりだそう。

座った席の真ん前に「厚岸」のボトルが置かれていました。いいお値段なのは承知していますが、堪らずストレートでオーダー。
「厚岸、お好きなんですか?」と若いマスター。はい、大好きです。このウィスキーも、特産の牡蠣も。何回か行ったこともあります…
アイリッシュも何種類か並んでいました。聞けば、マスターは1月にアイルランドへ行き、現地で色々仕入れてきたそう。わたしも若い頃に2回ほど旅した思い出の地で、いつかまた再訪したいと願っています。マスターお勧めの、ジェムソンのFive oak Cask Releaseというのを頂きます。何ともふくよかな味と香りが口腔に満ち溢れました。

締めにアイリッシュコーヒーを頂いて店を出ました。マスターも、若い女性のバーテンダーも一生懸命な、いいお店でした。

◆ 山の辺の道

2日目(2月11日)。今日もはっきりしない空模様。
本日の目的地は、奈良盆地の南端に建つ聖林寺。お目当ては国宝の十一面観音像です。以前、奈良国立博物館の展覧会で拝観したことがあり、次はお寺へ足を運んでみたいと思っていたのです。
このパッとしない天候なので、未だ乗ったことのないJR桜井線で、適当なところまで輪行してしまおうか、とも考えました。昨晩行った店の大将にも「昔からの山の辺の道が残っているのは天理の先」と教えてもらっていました。
しかし奈良市内から聖林寺までは30Kmばかり。あまり走るのを億劫がっているのも中高年の健康にはよろしくないので、えいやっ、とペダルを踏み出しました。まだ人影も少ないまらまちを抜け、程なくすると家並みは尽きて、JRの線路に沿ってしばらく走ります。

やがて、町はずれの帯解寺に行き当たりました。ここは安産の祈願所ということで、独身のおっさんにはあまり縁がないのですが、せっかくなのでお参り。

帯解寺の先から、山の端を曲りくねっている道へ方向を転じました。少し自転車旅らしい風情ある雰囲気が出てきました。

しかしそれも束の間、丘陵地の中の産業道路のような面白みのない道に変わります。これはルート選択を誤ったか。丘の上にはシャープの総合研究所が威容を見せています。
アップダウンを繰り返した後、道は天理教本部の広大な敷地に行き当たりました。敷地を大きく迂回して、晩秋にはきっと壮観であろう銀杏並木を山の端へ登り返し、再び南下。

しばし農道を走ると、田んぼの中にぽつりと立つ赤い鳥居が現れました。

この先に夜都伎神社というのがあります。山の辺の道は、この少し手前にトレイルの起点があるようです。

夜都伎神社は、茅葺きの屋根が美しい、清涼な神社でした。

この少し先に、竹之内環濠集落、そして菜の花畑があるとgoogle maps に記されていました。
竹之内環濠集落は、室町時代、動乱から集落を守るため周囲に堀を設けたもの。大和では今でも各所に痕跡が残されています。
往時の堀は今も一部が残り、土壁と焼杉の家並みが身を寄せ合い、その間を細い路地のような道がうねっていました。

その先に菜の花畑。数人の写真愛好家が三脚を立てていました。

その先も、農村地帯を巡る道が続きます。昨日来、あまり気持ち良い道を走っていなかったのですが、この区間はハイカーに道を譲りながら、点在する古墳、寺社などを巡ってのんびりとペダルを踏む事ができました。

◆ 聖林寺

桜井市に入り、奈良盆地の南端が迫ってきました。このエリアは、高校生の頃だったか長谷寺へ来たことはありますが、それ以来全くご縁がなく、今回もまた下調べゼロで、聖林寺の十一面観音菩薩だけを目的にやってきました。
巨大な鳥居が立っています。なんじゃこりゃ、と一応写真だけ撮りました。

▲ あとで調べたら、とても由緒ある神社でした

軽い朝食しか食べていないので、AEONのテナントに入っていたマクドナルドでブランチ。そして桜井の市街地を抜けていきます。冬空の下、人気のない家並が続いています。
パッとしない町だなあ…と思いながら、南郊の山の端を目指しました。

ところが、まさにこの日の夕方、桜井を特集したNHKの関西ローカル番組が放送され、後日再放送を見ました。写真撮影しただけで通過してしまった大鳥居は、日本最古の神社である大神神社。またここは三輪そうめんの産地であり、三輪山の伏流水を使った酒どころでもあるそう。何となれば、数十年ぶりの長谷寺参拝も組み合わせ、桜井で一泊する価値があったかもしれない、と後悔したことでありました。

さて、緩やかな坂道を詰め、小ぢんまりとした聖林寺へ到着し、国宝の十一面観音菩薩に再会しました。明治期に廃仏毀釈を逃れてこの小さな寺へ来て、やがてフェロノサが秘仏の禁を解いたというこの仏像は、優美さとともに威厳をたたえた傑作。しかし、この地にまで足を運ぶ人は少なく、静かにじっくりと拝観することができます。

時間を忘れて、30分近くも向き合っていました。

今日も晴れたり曇ったり、パッとしない空模様なので、今回はこれで打ち止めとし、奈良駅までJR桜井線で輪行して、ならまちをボタボタ走ってか帰ろうか、とも思いました。しかし、聖林寺から坂を下っていくうち、少し青空が覗いたので、明日香村までさらに走りました。
明日香は3回目。過去2回は共に京都からロードバイクで走ってきました。石舞台古墳、岡寺、飛鳥寺などが田園の中に点在する風景が気に入っています。
今回はまだ行ったことのない高松塚古墳、キトラ古墳を巡りましたが、有名な壁画はレプリカ以外見ることはできないので、ただの土饅頭のような古墳を外から眺め、樫原神宮前駅へゴール。

▲ 明日香村の家並
▲ 高松塚古墳

寒々しい冬空も相まって、パッとしない小旅行でした。橿原神宮前駅構内の立ち飲み屋で、京都行き特急の発車時刻を待つ間、いつものように地酒をちびちびやりながら、思いつきで出てきたが故の準備の悪さ、計画性のなさを反省したことでありました。
好きな土地へ何度も足を運ぶなら、その土地をもっと深く知ろうとする努力もしないと、既知の場所やルートをなぞって終わりになってしまいがち。
一方、年齢と共に未知の町へ足を運ぶことが減っていることにも、ふと気付きました。若い頃、バックパックを背負って何度か欧州を旅した時のような、旅先でのワクワク感を取り戻したいものです。

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最後までお読み頂き、ありがとうございました。これからも、ブロンプトンを連れて地方都市やローカル線を訪ねていきたいと思います。
これまでのローカル線とブロンプトンの旅、こちらへまとめております。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。


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