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毒書人の楽園(小説版)

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読み終えた小説をいろいろ紹介していきます
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#読書

『探偵はパシられる カモシダせぶん』史上最弱の探偵短編集ですけど

自分で選んで買う本というのは、偏ります。 というか、好きな作家が決まると、その作家の本を買い続けるという習性を持っている私としては、好きになった作家の本を中心に買っていくので、新しい作家に巡り会うというのが、ちょっと難しい。 でも、新たな作家とも出会いたいので、人から本を薦められる機会があればできるだけ聞きたいのですが、全く知らない人に本を薦められてもちょっとなぁとなってしまいます。 そこで、先日から御書印を集める事にしたので、御書印をもらうときにその書店員さんに本を薦めても

『コメンテーター 奥田英朗』時代に即した精神病とは

人気シリーズの精神科医・伊良部一郎シリーズの一七年ぶりの最新作ということで、それまでの本を読んでいた私も当然購入したわけですが、しばらく積ん読本となっていました。 購入した時点では、まだコロナ騒ぎが収まっていない時期でしたが、今ではコロナは過去の病気というか、あれだけ騒いだのは何だったのかと思わせるほどの下火ぶりです。 主人公の伊良部先生というと、破天荒な精神科医で、奇想天外な言動と型破りな治療法で患者達を翻弄する名医というよりも迷医という方がふさわしいような気もする医者です

「ムゲンのI」:知念実希人が贈る、傑作ファンタジーミステリーを読み終えて

ムゲンのI   知念実希人 知念実希人さんの「ムゲンのI」、読みましたか?上下巻の大作で、最初は少し手に取るのをためらってしまうかもしれません。医療ミステリーを得意とする知念さんですが、本作はファンタジー要素も強く、不思議な生き物が描かれた表紙に、「あれ?いつもの知念作品と違う…? 」と少し戸惑う方もいるのではないでしょうか。 主人公は、東京で働く医師、識名愛衣。彼女は、原因不明の昏睡状態に陥る奇病「イレス」の患者たちと向き合っています。愛衣は、患者たちの夢の中に入り込み