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『探偵はパシられる カモシダせぶん』史上最弱の探偵短編集ですけど
自分で選んで買う本というのは、偏ります。
というか、好きな作家が決まると、その作家の本を買い続けるという習性を持っている私としては、好きになった作家の本を中心に買っていくので、新しい作家に巡り会うというのが、ちょっと難しい。
でも、新たな作家とも出会いたいので、人から本を薦められる機会があればできるだけ聞きたいのですが、全く知らない人に本を薦められてもちょっとなぁとなってしまいます。
そこで、先日から御書印を集める事にしたので、御書印をもらうときにその書店員さんに本を薦めてもらいたいなぁと思ったわけです。
そこで、先日『ほんまる』を訪れたとき、お勧め本を教えていただきました。
そして勧められた本が、この「ほんまる」で書店員としても働いていて作家デビューした人の本、サイン入りです。
「パシリ」によって培われた、知識と経験で謎を解け!
発売前から話題騒然!
現役書店員芸人であり、「アメトーーク!」で読書芸人として話題のカモシダせぶん氏、まさかの小説デビュー作。
物語史上最弱主人公爆誕。
中学時代、バスケットシューズを買いに行く途中でカツアゲにあった、あの頃の俺に贈りたい本。
山里亮太さん(南海キャンディーズ・芸人)
令和のパシリと番長は一味違う!
新しいのにどこか懐かしい一冊です。
宮島未奈さん(小説家)
芸人で書店員のカモシダくんがとうとう小説まで書いちゃった!?
これは事件です!!
東村アキコさん(漫画家)
<STORY>
神奈川県立N高校の番長・丸木のパシリである岡部太朗は、「お使い先」で数々の事件に巻き込まれる。丸木のもとに早く戻らなければならない太朗は、最速で事件を解決する!?
N高への転校早々、舐められないようにカツアゲをすることにした原田は、岡部太朗という生徒から金を巻き上げることに成功する。しかし太朗から、逆にカツアゲの不手際を指摘されてしまい……(「ファーストカツアゲ」)
仕事前にあんパンを買うことを日課にしている木梨は、残りひとつしかないあんパンを巡り、太朗と取り合いに。番長のために絶対にあんパンを買うと言い張る太朗に対し、木梨にも譲れない理由があり……(「最後のあんパン」)
――など、爆笑と衝撃の全9編を収録。
高校生探偵が主人公というと、格好いい凜々しい探偵を想像してしまいそうですが、この探偵役は番長のパシりという設定なんですが、もう性格というか言動が卑屈すぎます。
2話目からは慣れてくるんですが、正直1話目で主人公の言動が卑屈すぎて読むのが辛くなってきて、このまま読み進めるかどうか躊躇しました。
まず学校の番長という存在がもはや時代遅れとも言えるでしょうが、それはそれで読んでいくと意味がある存在としてキャラクターが立っています。
それでも読んでいくうちに、慣れてくるもので、だんだんとその言動に慣れてきて、会話のやりとりも楽しくなってくるのは、おそらく作者の芸人でもあるところから来ているのかもしれません。
2話目のあんパン争奪戦の話からパシり探偵というものの面白さが加速していきました。
残り一つのあんパンを買うために会話するだけのはずが、いつしか、犯罪を暴いてしまうという面白さ。
知り合いに二人探偵がいるのですが、一人は詐欺師、一人は浮気調査盗聴専門なので、あまり付き合いたくはありませんが、最初はどちらもまともな人間で付き合っていけると思ったのですが、相手を知るうちに距離をおくようになりました。でも、このパシリ探偵のような人だったら、最初距離をおいていても、時間が経てば、知れば知る程仲良くなってもらいたいと思える人物です。
短編集なので、読みやすく、誰にでも楽しめる作品なので、タイトルにひるむことなく読むことをお薦めします。
このパシり探偵はシリーズとしてどんどん続いてもらいたいのですが、番長の存在なくしてはあり得ない物語なので、高校卒業後番長が何になっていくのかが物語が続いていくかどうかの分かれ目となるのでしょう。
願わくば、番長が町の何でも屋としてよろず相談事解決をやるコトになり、その助手というか、やはりパシリとして事件を解決していくシリーズとなってくれたら、今後も楽しめるのになぁとか考えたりします。