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笠原メイ雑文集

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繋いだ手が風で離れて、
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2018年1月の記事一覧

短編詩2016⑤

「ブランコ」

寂しがり屋の少年は

ブランコを漕ぐと宇宙に行けた

あれが火星で、あれが水星で

ブランコを強く漕ぐと

地球がぐっと離れてゆく

でも寂しくて、少年は

ブランコを降りれなかった

月に一歩をつけられないまま

5時のチャイムが宇宙に響く

「電話」

夜が明けるまで君と話した

受話器を握りしめて

新聞屋さんのバイクが来ても

牛乳屋さんの車が来ても

語り尽くすことがな

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短編詩2017④

「答え」

優しさの種類は50個くらいあって

愛の形は100個くらいあって

僕らはそれを日々

選択しながら生きているような気がする

だからこれが優しさ

これが愛という

答えは重要じゃない

「ダンス」

狂った星空のダンスフロアで君と踊るんだ

花の中でうずくまる少女の思想

壊れた瞳には君しか映らない

「天秤」

愛の重さにビビってしまったり

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短編詩2016③

「夢」

もし夢が叶うなら、世界の端から端まで、誕生日の人を祝って旅をしたい、プレゼントを渡して、優しくハグをして、ケーキに年の数だけロウソクを立て、毎日、大切な時間を

過ごしたい。光のある暮らし。

「夢2」

少女の見る夢の結末はいつも同じだ、パフェのように崩れる観覧車の中で、少年の手を握るとパッと目が覚める。観覧車の中は電話が鳴りっぱなし。観覧車の中はリンゴの香り。名前も声も知らな

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短編詩2016②

「終わり」

ソフトクリームが溶けて、指をつたわる、ペロリと舐める。犬のような笑顔。夏を置き去りにして、自転車を漕いでいる。夕暮れ空は絵の具のようだ。夜は蜂蜜のようだ。手元にはクイーンとキングのカードが一枚ずつ残った。夜が明ける前に、感情の線を切らなければならない。

「口癖」

彼女は美しい言葉をたくさん知っているのに、ぶっ殺す、が口癖だった。しかし彼女の唇を震わせるだけで、そんな言葉も時

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短編詩2016①

魔法も奇跡もない国で、少年は少女を幸せにしたかった。一緒に暮らしたかった。だけど少年の頭は狂っていた、少女は少年を嫌な顔で見た。吐瀉物を見るような目で見た。馬鹿にしていた。少年は狂っていたからその事にも気づかなかった。少年は少女を幸せにしたかった。

赤いタンバリンの音が永遠を演奏している横で、無理するなよって笑いながら男は女に強い酒を勧める。生きている事が似合わない奴もいる。ジャニスやジミヘン

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