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ブラックな部活顧問制度で苦しむ教師
教員はブラックな職業です。どんな点でブラックなのでしょうか。ここではそのブラックボックスを開けてみましょう。
時間外労働の報酬はやりがいのみ
教員の勤務時間は8:15-16:45、または8:30-17:00です。しかし、運動部などの部活動では、教員の勤務時間以降も何時間も練習しています。そこでは、顧問が付き添い、指導していることも多いです。また、生徒が活動している以上、顧問は帰宅することはできません。しかし、定時以降の平日の部活動指導には一切金銭的報酬は出ていません。残業代の出ない超過勤務時間なのです。
なぜなら給特法という法律で、教員には一律4%の残業代しか出さなくて良いことになっているからです。時間外労働が80時間になっても、基本給の4%のみです。そのため、教員には膨大な仕事量を振ったり、長時間の時間外労働が必要な部活動をやらせても、コストが全く掛かりません。行政にはお金の負担がかからないので、『教員を定額で長時間働かせる』ことが最適解になってしまっている状態です。
部活顧問やると手当てとか残業代とか出ると思っている人、やっぱりいるんだよなぁ。何回も言うけどゼロ円です。16:50に勤務終了だけど18:30までガチのボランティアに従事させられて、そこから残業代ゼロで教材研究とか膨大な事務仕事やって22:00退勤みたいな働き方してるから問題になってるんですよ。
— ハナメガネ (@V6zgN9mvifif6Ob) January 21, 2021
学校の部活を教えてくれる方を募集します。無償ボランティアです。部活指導の貴重な体験が報酬です。平日は16時〜19時、休日は9時〜17時になります。大会や遠征の引率の場合は12時間以上の拘束となります。活動中の事故等の責任にはくれぐれもご注意下さい。交通費と用具は自己負担です。#教師のバトン
— 高校英語教師 (@high_school_JTE) February 9, 2022
運動部顧問になると土日も一日中活動で休みがない
学校の昔からの伝統だったり、土日には連盟のリーグ戦が強制的に入れられていたり、保護者からの要望だったり(管理職は一部の保護者からの要望にとても弱い)、管理職が高体連・高野連などの役員だったりなどするために、部活動の練習時間を減らして働き方改革などをすれば非難轟々で学校内での立場が悪くなります。そして、報復人事をされたり、嫌がらせをされたり、校務分掌(学校内の仕事)に関して他の人の倍の負担にされたり、など不利益を被るために、なかなか顧問自ら部活動を変えていくのは難しい現状があります。
なぜ睡眠を、休息の時間を、彼氏と会う時間を捨てて部活に土日を捧げなければ行けないのだろう。感謝も利益も何も無いのに。
— 教師2年目(初担任) (@iamnotoyurneigh) December 8, 2021
原則土日どちらか部活は休養日にするよう、県から通達が出ています。しかし、今日管理職がこんなことを…。
— 高校英語教師 (@high_school_JTE) June 20, 2016
「県は土日どちらか休みにしろと言っていますが、うちの学校は土日両方部活をやっている。この点、非常に部活動に熱心な学校として地域にアピールできますね。」
そこをアピールですか…
労務管理無しで若手に重くのしかかる業務負担
若手には、ベテランが持ちたがらないほどの大変な部活動顧問が管理職によって振られる傾向にあります。若手は、まだ仕事が分かっておらず他の先生に仕事について教えてもらったりする立場にあります。立場が弱く大変な仕事でも断りにくいのです。また、赴任したばかりでその部活動の内情を知らされぬまま、『来年度来る人に持たせるしかもう他に手が無い』と管理職が嘆くようなきつい部活動顧問を若手はもたされることも頻繁にあります。結果、土日にほぼ無給の部活動顧問を強制されることで、若者の教職離れの原因の一つにもなっています。
カフェで隣の席に座って来た女性2人組の方。会話が聞こえてしまい『今年度で教員辞めるわ。退職願も出した。毎日22時帰宅だし、土日も部活でほぼ無いのはキツいん。授業は楽しいんだけどね。』と。もう片方の女性が「そっかー。でも英検とかTOEIC持ってなかった?」に対し『うん、準1と800点位』Oh...
— ハモ先生|偏差値38の高校 (@harmony_teacher) March 5, 2022
早速、本校の新採用教員が1人辞めてしまいました。
— はげおく (@hageokuhageokuh) May 14, 2022
「部活があるのは知ってましたけど、土日が全部試合で4月の土日とGWが全て埋まるのは知らなかったです。年間休日が皆無に等しいのはやってられません」と。
部活で若手がどんどん来なくなる…#学校における部活動の存続に抗議します#教師のバトン
数日前から教師になりました。
— Hana🌻(休みます) (@SoftlyLonely) April 6, 2022
勤務表と部活動の予定表を見てびっくり。
4月5月6月の休みが0日でした。
土日の部活指導はほぼタダ働きです。
平日は残業代が月1万円しかでないけど、夜遅くまで働かされます。
もう転職したいと思ってしまう私は根性なしですか?
教師一年目をやってたんですが、今年度で退職することにしました。理由は「恐らくいつか自分がつぶれる」「意味不明な校則を生徒に守らせたくない」「部活の顧問をやりたくない」「残業代が出ない」です。やりがいだけでは続けていけないですね。
— 教員の卵 (@kyoushi0000) December 22, 2020
ブラックの極めつけは部活動顧問
教員がブラックである原因の第一位は部活動です。部活動顧問になれば、様々な場面で自腹を切らせられて、さらには土日の休みが一切なくなることもあります。生徒や保護者から馬鹿にされることもしょっちゅうです。
顧問は校務分掌の一部なのに経費は自腹
部活を指導をするために必要な用具、生徒の大会引率に必要なウェアやシューズ、そして、協会や連盟登録費用など、部活動に関わる経費は原則教員の自腹です。協会や連盟登録費用などは、生徒が大会に出場するために監督や指導者章が必要なため、必須です。しかし、予算措置は全くありません。そのため、毎年顧問の先生は、自腹を切って日本連盟や県連盟などに登録料を支払っています。また、チームスポーツの場合は、顧問は審判も任されることがあります。この審判をするのに必要な用具やウェアや、審判登録費用も自腹です。部活動顧問を希望しないのに割り当てられて、『生徒のため』と生徒を人質に取られて渋々登録費などを払わされている顧問は多いと思います。
管理職『部活動は職務です。ですが、部活動顧問に必要な諸経費は自腹でお願いしています。他の先生も自腹を切っていますよ。ご理解ご協力をお願いします。』
— 高校英語教師 (@high_school_JTE) May 4, 2022
事務室に経費請求するために領収書回したら、管理職が飛んできて、こう私に言いました。#教師のバトン #部活 #顧問 #自腹 #赤字 https://t.co/23nTOOUlKu
テニス部顧問なのにテニスをやったことのない先生
『なんでテニス部顧問なんかをやっているの?』『顧問は先生がやりたくてやってるんじゃないの?』『仕事なのに、素人ってどういうこと?』『ふざけてるの?』『やる気がないの?』
小見出しを読んで、おそらくこのような感想をもつ方が多いのではないでしょうか。しかし、学校の顧問は適材適所で任されているわけではないのです。ある学校に先生が30人いたとして、部活は大体10〜15位の種類があります。その全ての種類の部活の経験者を配置できるようには人事は動いていません。指導に長けている教員を配置できたのならそれはたまたま幸運だったのです。実際には、『卓球経験者なので同じようなスポーツのテニス部顧問に』『野球経験者なので、体力はあるからバレー部顧問』『若くて長時間労働できそうだから、毎日長時間練習のあるバスケットボール部顧問』などのような配置になってしまっています。特に、若手や初任、非正規雇用の講師の先生には、ハードな部活顧問が充てがわれる事が多いです。なぜなら、発言力のあるベテランにそれらの顧問が敬遠されて、立場の弱い若手が押し付けられる構図になっているからです。
素人が指導をせざるを得ない状況を合理化するために、上がよく使う手は『生徒と一緒に学ぶ姿勢を』です。ですが生徒にとっては、競技経験のない素人顧問が一緒にやってたりトンチンカンなことで口出ししても邪魔なだけ、という場合が殆どでしょう。このような場合、生徒も教員も不幸です。
『素人でも、生徒にとっては顧問である事に変わりない。生徒と一緒に朝練をしたり、グラウンド整備したり、ノックを打ったり、奉仕活動をしたり、と汗を流すことが大切だ。君は若いんだから、やりなきゃ!何のために教師になった?生徒のためだろう?』
— 高校英語教師 (@high_school_JTE) April 2, 2022
と管理職は校内で会うたびに言っていました。
文科省の調査によると、経験者が顧問をしているケースは5割ほどだそうです。学校側も、最適な人材がいなくて困っているのです。ですが、そんな事情は保護者には関係がありません。素人顧問は、学校への不信感を与える結果にもなってしまっています。
苦情を受けます。
— 高校英語教師 (@high_school_JTE) January 19, 2022
『あえて言わせてもらうが、部活動の熱の入れ方に部活ごとに差が見られるようで非常に遺憾です。どの部活もきちんと力を入れて欲しい。それと部活に適した顧問の先生を配置してくれないので我々保護者は困っている。顧問が素人とは学校はふざけているのか?』#教師のバトン
未経験部活はつらい
私の経験談です。部活動顧問になると、本来休みだったはずの日が、部活を見ているだけで終わりました。未経験素人が顧問を任された場合の悲惨さは身を持って体験しています。一日中自分の未経験で興味のないスポーツを見ているだけで何もできずに終わるからです。屋外なら日照りにやられてかなり体力を消耗しました。素人なので、生徒に指導しようにも引き出しが殆どありません。しかし、安全配慮義務があるために、生徒が活動している時間は顧問が付いていなければなりませんでした。ただ見ているだけで時間が過ぎていきました。
そして、一日部活につきっきりで疲れ切っても、次の日からはまた仕事でした。授業の準備はろくにできていませんでした。それが数ヶ月続いたのでした。少なくとも私には非常に苦痛でした。
休日に最低賃金以下で素人でお荷物で指導できずに屋外で見てるだけ。疲れが溜まり時間だけが過ぎ、生産性皆無。自分に価値がないと思わされる。休めない、拒否もできない、人権すら否定される。教師も人間なので、この仕事はお前にしかできないって思われたいんですよね。#教師のバトン #部活 #顧問
— 高校英語教師 (@high_school_JTE) November 12, 2021
保護者から心無い言葉を浴びせられることも
保護者の中には、素人なりに時間とお金と身を削って頑張っている顧問に対して、厳しい言葉をかける方もいます。
部活の引率は賃金が正当に支払われないボランティアなのに、教員の自家用車で生徒を会場まで連れて行き長距離運転して無償サービスで移動を担っているのに、保護者から『なんで勝てないんだ』とか『学校に着くのが予定よりも遅い。こちらの負担も考えろ』だとか言われるとつらいですね。#教師のバトン
— 高校英語教師 (@high_school_JTE) December 19, 2021
部活動の目標=勝つこと、が当たり前だと思っている保護者や、部活動に技術向上や部活動での成績による進学などを期待している保護者にとっては、素人顧問は『大外れ』でしょう。
悲しいかな、部活はブラックです
『学校の先生=部活動顧問』これが今の学校の現状です。そして、若手にはハードな部活動顧問がもれなく付いてきます。部活動顧問が教員の大きな負担になっていることは間違いありません。賃金の面や労働時間の面で、かなりのブラックな仕組みになっています。別の言い方をすると、教員という労働力を搾取する構造になってしまっています。
授業を頑張ろうと思っても、平日も休日も部活でへとへとになり、授業は二の次三の次になります。教材研究は満足にできない、何もできない部活顧問で殆どの時間をもっていかれる、休みはない、というような状況も珍しくはありません。こんな状態は『分かりやすい授業をしたい』『専門科目を教えたくて教師になった』という方にとってはストレス以外の何物でもありません。
受け持っている教育実習生は、採用試験を受けない。
— ゆずせん (@antibukatsu) May 24, 2022
なぜなら、、、、
「土日に部活があるから」
私のスタンスを伝えたら、正直に言ってくれたよ。
惜しいけど、賢い判断だと思うぞ!#教師のバトン はつながりません。
このままの状態では、教職不人気に拍車をかけ、教員が若者に敬遠される職業として定着し、学校の人材が大幅に足りなくなってしまいます。具体的には4月になっても学校に授業を担当する教員が十分いなくて、学校が機能しなくなるのです。教育崩壊です。そうなる前に、この仕組を変えていかなければならないのです。