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どうやって自分の身体の見え方を知るのか (“動物のジェスチャー”から始まるシンボリックプロセス — ジェンドリンとミード: 5)

『プロセス・モデル』の「VII‐A シンボリックプロセス」の「(c)表象(リプリゼンテーション)」の節で、ジェンドリンは「共感」を論じる文脈において、「自分の身体がどのように見えるかを知ることができるのか」という難問を論じ、G・H・ミードが従来の順序を逆転させたと主張しています。

共感は、あたかも自分が特定の感情を抱いているときに、自分の身体がどのような状態にあるかを自然に何らかのかたちで知っているかのように語られることが多い。そして、他人がそのような状態にあるのを見ると、自分がそのように感じているとき、その人も同じように感じているだろうなと推測する。この考え方は、自分の身体を外から見ることはほとんどないのに、どうして自分の身体がどのように見えるかを知ることができるのかということを説明できない。G・H・ミード以来、他の多くの人たちもこの順序を逆転させてきた。まず他者が私の見た目に反応し、それによって初めて私の身体感情が見えをインプライするようになるのである。 (Gendlin, 1997/2018, p. 119; cf. ジェンドリン, 2023, p. 200)

私が知る限りでは、彼の代表的著作である『精神・自我・社会』 (Mead, 1934) には、このテーマを深く論じた節はありません。しかし、それ以前の著作ではこのテーマについて論じられているようです。

上記の論述は、ミードが発表した論文の中の次の一節に相当するでしょう。

自分のジェスチャーが直接的に意味を持つことはない。そのジェスチャーが他人の注意を喚起するのである。…意味の意識が現れるのは、その反応を通してのみであり、その反応は、自分自身の態度に含まれる意味の前提としての他の自己の意識を伴う。社会環境における他の自己は、内観が分析する自己の意識に論理的に先行する。心理学が個人の意識の条件として有機体の与えられた現実を受け入れるのと同じ意味において、他の自己はそこにあるものとして、与えられたものとして認められなければならない。 (Mead, 1910, p. 179 [SW, 111-2])

さらに、ジェンドリンの論述は、ミードの死後50年を経て出版された 「1914年の社会心理学講義」 (Mead, 1982)の以下の文章に対応すると思われます。

私たちは、自分がどのように見えるか、あるいは自分の身体の一般的な態度については意識しないが、他人のこうした態度には反応する。 (Mead, 1982, p. 103)

他の人とのやりとりにおいて、私たちはわずかな注意の移り変わりに気づいている。私はその相手にどう映っているのだろうか?... 直接的なやりとりにおいては、私たちは通常、相手の存在に気づいている。相手のジェスチャーは私たちへの刺激となる。 (Mead, 1982, p. 104)


参考文献

Gendlin, E. T. (1997/2018). A process model. Northwestern University Press. ユージン・T・ジェンドリン [著]; 村里忠之・末武康弘・得丸智子 [訳] (2023). プロセスモデル : 暗在性の哲学 みすず書房.

Mead, G.H. (1910). What social objects must psychology presuppose? The Journal of Philosophy, Psychology and Scientific Methods, 7(7), 174–80.

Mead, G. H. (1934). Mind, self, and society: from the standpoint of a social behaviorist. (edited by C.W. Morris). University of Chicago Press. ジョージ・ハーバート・ミード [著]; 植木豊 [訳] (2018). 精神・自我・社会. G・H・ミード著作集成:プラグマティズム・社会・歴史 (pp. 199–602). 作品社. ジョージ・ハーバート・ミード [著]; 山本雄二 [訳] (2021). 精神・自我・社会. みすず書房.

Mead, G.H. (1964/1981). Selected writings [Abbreviated as SW] (edited by A.J. Reck). University of Chicago Press.

Mead, G.H. (1982). 1914 class lectures in social psychology. In The individual and the social self: unpublished work of George Herbert Mead (edited by D.L. Miller) (pp. 27–105). University of Chicago Press.

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