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【追悼】理論と実践をつなぐ、野中先生の独創的な視点:いまのたかの組織ラジオ#223

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第223回目「【追悼】野中郁次郎先生」でした。野中郁次郎先生が2025年1月25日に亡くなりました。今回は、いつものテーマとは異なり、追悼特集としてとなりました。野中先生は、組織論、経営学の分野において、まさに巨星と呼ぶべき存在です。管理職研修や組織変革コンサルティングの現場で、野中先生の理論や考え方に多大な影響を受けた方も多かったことでしょう。

理論と実践を結びつけた独自のオリジナリティ

 野中先生は、卓越した理論家でありながら、既存の理論を単に深く掘り下げるだけでなく、自ら新たなモデルや考え方を創り出す、類まれなオリジナリティを持った方です。その独創性は、単に学術的な世界にとどまらず、ビジネスや組織運営の現場において、非常に実践的な価値をもたらしました。

 特に有名なのは、暗黙知を形式知に変えていくプロセスをモデル化した「SECIモデル」でしょう。しかし、今野氏が野中先生の思想に初めて触れたのは、その有名なSECIモデルではなく、上司の役割に関する定義とのこと。たまたま目にしたその定義に、雷に打たれたような衝撃を受け、深く感銘を受けたことを今でも鮮明に覚えているとのことです。その定義は、一見するとシンプルでありながら、組織や人を育てる上で、最も大切な視点が含まれていました。

上司の役割に対する革新的な定義

 野中先生は、ボスの役割を「不完全な部下とより良い仕事のやり方を対話と実践を通じて開発することにあり、欠陥の即時修正を納得させることではない」と定義であったのこと。この定義は、一見すると当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、その言葉の裏には、深い洞察と、組織や人を育てる上での本質的な視点が凝縮されています。

 まず、「不完全な部下」という前提に立つことの重要性を強調しています。多くの組織では、部下は完全であることを求められ、少しでも欠点があると、それを即座に修正しようとする傾向があります。
 しかし、野中先生は、部下が不完全であるのは当然であり、その不完全さを前提に、より良い仕事のやり方を共に考え、開発していくことこそが、上司の最も重要な役割だと説いています。この視点は、部下の主体性を引き出し、成長を促す上で、非常に重要なポイントです。

 そして、「対話と実践を通じて開発する」という言葉も、非常に示唆に富んでいます。上司が一方的に指示や命令をするのではなく、部下との対話を重ね、共に試行錯誤を繰り返しながら、より良い方法を見つけ出していく。このプロセスこそが、組織を活性化させ、創造性を刺激する源泉となります。

 さらに、「欠陥の即時修正を納得させることではない」という言葉には、上司が自分の考えを押し付けるのではなく、部下自身が納得し、自律的に成長することを促す、という強いメッセージが込められています。

 野中先生は、結果の即時修正は、単に非生産的なゲームや、組織内での足の引っ張り合いを助長するだけだと、その危険性についても明確に指摘しています。この上司の役割に対する定義は、私にとって、管理職研修や組織変革コンサルティングを行う上で、常に立ち返るべき原点となっています。

知識創造のプロセスを可視化したSECIモデル

 そして、野中先生のもう一つの大きな功績として、組織における知識創造のプロセスを理論化した「SECIモデル」が挙げられます。野中先生は、知的創造とは、全く新しいものをゼロから生み出すだけでなく、現場に潜む暗黙知を、言葉や図などの形で形式知に変えて共有し、それをまた新たな知恵へと発展させていく、という循環的なプロセスであると考えました。そのプロセスを、「共同化」「表出化」「結合化」「内面化」という4つの段階に分けてモデル化したのが、このSECIモデルです。

 「共同化」とは、経験や勘といった、言葉では表現しにくい知識や技術、つまり暗黙知を、メンバー間で共有する段階です。例えば、職人同士が長年培ってきた技術を、共に作業する中で自然と伝承していくようなイメージです。
 「表出化」とは、その暗黙知を、言葉や図、文章などの形で表現し、形式知化する段階です。これにより、暗黙知が、個人から離れ、組織全体で共有できる知恵となります。
 「結合化」とは、形式知同士を組み合わせ、新たな知恵を生み出す段階です。例えば、異なる分野の専門家が集まり、それぞれの知識を融合させることで、革新的なアイデアが生まれることがあります。
 「内面化」とは、新たに生まれた知恵を、実践を通じて、自分の知識や行動に落とし込んでいく段階です。これにより、形式知が、再び暗黙知となり、次の知識創造の源泉となっていきます。

 このSECIモデルは、組織が知識を創造し、成長していく上で、非常に具体的な指針を与えてくれるだけでなく、抽象的な知識創造というプロセスを可視化した点でも画期的でした。

組織変革の鍵は、暗黙知の表出化と共有

 特に、組織変革の現場では、このSECIモデルの重要性が分かるとのこと。組織の中には、言葉にできない、なんとなくの違和感や、解決すべき課題が、潜在的に存在しています。それらの課題を、メンバー同士の対話を通じて、言葉にし、形式知化していくプロセスこそが、変革の第一歩となるのです。

 組織のメンバーが、それぞれが抱える暗黙知を、積極的に表出化し、共有することで、組織全体の知恵となり、新たな価値を生み出すことができます。このプロセスは、単なる情報共有ではなく、組織内のコミュニケーションを活性化し、連帯感を高める効果もあると言えるでしょう。組織変革は、トップダウンで一方的に進めるのではなく、メンバーの主体性を引き出し、共に創り上げていく、という視点が非常に重要になります。

イノベーションを駆動する「思いのマネジメント」

 また、野中先生は、単に知識を形式化するだけでなく、その根底にある「思い」の重要性も説いていました。その思想は、『思いのマネジメント』(東洋経済新報社、2010年)という著書にまとめられており、今野氏も大きな影響を受けたとのこと。
 野中先生は、イノベーションの根幹には、「いい仕事をしたい」という強い思いが不可欠であると述べられました。単に事実を共有するだけでなく、互いの思いをぶつけ合い、共感し合うことで、新たな仕事が生まれ、組織が成長していく。この考え方は、組織の活性化において、非常に重要なポイントとなります。特に、SECIモデルの「結合化」の段階では、単に知識を組み合わせるだけでなく、それぞれの「思い」が共鳴することで、より質の高いイノベーションが生まれるといえるでしょう。組織におけるイノベーションは、単なる効率化や合理化だけでは達成できません。メンバー一人ひとりの内なる情熱や、組織全体としての共通の目標が不可欠となります。

無駄を許容する組織の柔軟性

 さらに、野中先生は、組織の活性化には、「意図的な無駄」も必要だと説いているとのこと。リクルートの大沢氏との対談の中で、「意図的な無駄こそが活性化の条件である」と述べているように、効率性だけを追求するのではなく、無駄とも思えるような活動の中から、新たな発見や創造が生まれることもあるのです。組織が常に一定の方向を向いている必要はなく、時には、意図的に寄り道をしたり、今までとは違う視点を取り入れてみたりすることで、思わぬブレイクスルーが生まれることがあります。

 また、自己否定(アンラーニング)と自己確信の重要性も指摘しています。組織が常に成長していくためには、過去の成功体験や、固定観念にとらわれず、常に自己を否定し、新たな価値観を受け入れることが必要です。そのためには、組織のメンバーが、常に変化を恐れず、新しいことに挑戦していく、という姿勢が不可欠です。

戦略的人事の重要性と未来への提言

 そして、野中先生は、戦略的人事の重要性についても強調しています。人材を育成し、組織の成長を支える戦略的な人事こそが、今後の組織にとって、最も重要な課題となるでしょう。変化の激しい現代社会において、組織が生き残っていくためには、常に新しい知識や技術を吸収し、変化に対応できる柔軟性を持った人材を育成することが不可欠です。組織全体で、人材育成を戦略的に捉え、長期的な視点で取り組んでいくことが重要になります。

企業人事の視点から紐解く野中郁次郎先生の思想:人材育成、組織開発、そして持続的成長への羅針盤

 企業人事の責任者として、野中郁次郎先生の思想は、単なる学術的な理論を超え、私たちが日々直面する人事課題に対する深い洞察と、実践的な解決策を提供してくれる、まさに羅針盤のような存在です。先生の理論は、人材育成、組織開発、そして企業の持続的な成長戦略を考える上で、欠かすことのできない重要な視点を与えてくれます。特に、現代の企業が直面する、変化の激しい市場環境、グローバル化の進展、そして多様な働き方の広がりといった課題を解決する上で、野中先生の思想は、私たち人事担当者にとって、まさに灯台のような役割を果たしてくれると確信しています。以下、人事の視点から、野中先生の思想をより深く掘り下げ、具体的な施策と合わせて詳細に考察していきます。

1. 「不完全な部下」を前提とした育成型マネジメントへの転換:心理的安全性の確保と個々の成長支援

 「上司の役割」の定義、すなわち「不完全な部下とより良い仕事のやり方を対話と実践を通じて開発すること」という考え方は、現代の人材育成において、最も重要な原則の一つといえるのではないでしょうか。
 部下は完全であることを求められがちで、少しでも欠点があると、それをすぐに修正しようとする傾向が強くありました。しかし、このような考え方では、部下は常に減点評価されているような感覚に陥り、成長への意欲を失ってしまうだけでなく、組織全体の活力を著しく低下させてしまいます。

(施策例)

  • 育成型マネジメント研修の体系化
     
    管理職向けには、コーチング、フィードバック、傾聴といった育成型マネジメントスキルを体系的に習得できる研修プログラムを開発し、定期的に実施します。研修内容は、理論だけでなく、ロールプレイングやグループワークを交え、実践的なスキルを習得できるように工夫する必要があります。さらに、研修後には、研修内容を実践できているかを定期的に確認するフォローアップ研修も実施することで、研修効果を最大化します。

  • 1on1ミーティングの導入と定着化
     
    上司と部下が定期的に対話し、キャリア目標、日々の業務における課題、個人的な悩みなどを共有できる1on1ミーティングを制度として導入します。この1on1ミーティングは、単なる業務報告の場ではなく、部下の成長を促進し、上司との信頼関係を築くための貴重な機会であると捉える必要があります。
     1on1ミーティングの目的、進め方、効果的なフィードバック方法について、上司向けに研修やガイドラインを提供し、1on1ミーティングが形骸化しないよう、継続的にサポートしていくことが大切です。

  • 心理的安全性の高い組織文化の醸成
     
    失敗を責めるのではなく、失敗から学び、次に活かすことを奨励する組織文化を醸成します。心理的安全性の高い環境では、部下は安心して新しいことにチャレンジし、失敗を恐れずに積極的に行動することができます。
     組織風土調査やアンケートを実施し、心理的安全性が確保されているか定期的に確認し、改善策を講じる必要があります。また、成功事例だけでなく、失敗事例を共有し、そこから得られた学びを組織全体で共有することで、失敗を成長の糧とする文化を醸成することが大切です。

  • 多様な人材の受け入れと活躍支援
     
    個々の強みや弱みを理解した上で、多様な人材がそれぞれの個性を活かし活躍できるような組織風土を醸成します。
     採用段階から多様性を意識し、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を受け入れると同時に、多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるような環境整備を進めていく必要があります。また、偏見や差別をなくすための研修や啓発活動を実施し、誰もが安心して働ける職場環境を整備することも重要です。

2. SECIモデルを基盤とした組織学習の高度化:知識の創造、共有、そして活用を促進するシステム

 SECIモデルは、組織における知識創造のプロセスを可視化してくれるため、組織学習を促進する上で非常に強力なツールとなります。SECIモデルを参考に、組織全体で知識を創造し、共有し、活用するための具体的な仕組みを構築する必要があるでしょう。

(施策例)

  • ナレッジマネジメントシステムの進化
     
    社内のノウハウや知識を効果的に共有できるナレッジマネジメントシステムを導入し、社員が必要な時に、いつでも、どこからでもアクセスできる環境を構築します。このシステムは、単なる情報共有の場ではなく、社員同士が知識を共有し、議論し、新しいアイデアを生み出すためのコラボレーションツールとしても活用できるように、継続的に改善する必要があります。さらに、AIなどの最新技術を活用し、必要な情報を自動的に推奨してくれるような仕組みも導入することで、社員の知識活用をさらに促進していくことができます。

  • 社内勉強会やワークショップの活性化
     
    部署を横断した勉強会やワークショップを定期的に開催し、社員同士が知識や経験を共有し、互いに学び合う機会を積極的に提供します。これらの勉強会やワークショップは、単なる知識の伝達の場ではなく、参加者同士が自由に意見を交換し、議論を深めることで、新しいアイデアや視点を生み出す場となるように設計する必要があります。また、外部講師を招いたり、他社の事例を学んだりする機会も提供することで、社員の視野を広げ、より創造的な発想を促すことができます。

  • OJT(On-the-Job Training)の質的向上
     
    OJTを単なる業務指導ではなく、暗黙知を形式知化する機会と捉え、先輩社員が後輩社員に対して、業務の背景や目的を丁寧に説明しながら指導するようにします。これにより、単なる作業手順だけでなく、業務の本質を理解させ、後輩社員の成長を促進することができます。また、OJT担当者向けの研修やガイドラインを提供し、OJTの質を均一化していくことも重要です。さらに、OJTで得られた学びや気づきを、組織全体で共有できるような仕組みを構築することで、組織全体の知識レベルを向上させていくことができます。

  • 部門を越えた交流機会の積極的な創出
     
    社内イベント、プロジェクトチーム、委員会活動などを通じて、部門間の交流を促進し、異なる知識や経験を持つ社員同士が協働する機会を創出します。異なる部門の社員が交流することで、お互いの専門知識や視点を共有し、新しいアイデアやソリューションを生み出すことができます。人事としては、部門間の交流を促進するためのイベントやプロジェクトを企画・運営し、社員が部門を越えて協力し合えるような組織風土を醸成する必要があります。

3. 「思い」を核としたエンゲージメント向上戦略:社員の情熱を引き出す組織文化の醸成

 イノベーションの根幹には「いい仕事をしたい」という強い思い、つまり社員の情熱が不可欠とのこと。この「思い」を重視し、社員が情熱を持って仕事に取り組めるような組織文化を醸成する必要があります。そのためには、社員のエンゲージメントを高めるための戦略を多角的に展開していくことが重要になります。

(施策例)

  • 理念・ビジョンの浸透と共感醸成
     
    企業の理念やビジョンを社員に深く浸透させ、社員が組織の一員として誇りを持って働けるようにします。そのためには、トップメッセージを定期的に発信するだけでなく、社員が理念やビジョンを自分事として捉えられるような参加型のワークショップやイベントを企画・運営することも有効です。また、理念やビジョンを体現した社員を表彰する制度を設けることで、組織全体の共感をさらに高めることができます。

  • エンゲージメント調査とフィードバック
     
    定期的に社員エンゲージメント調査を実施し、社員が仕事に対する満足度、モチベーション、組織への愛着度などを把握し、組織の課題を明確にします。調査結果を分析し、具体的な改善策を講じ、その結果を社員にフィードバックすることで、組織への信頼感を高めていく必要があります。また、調査結果は、組織全体だけでなく、部門ごとに分析し、それぞれの課題に対応した対策を講じることで、より効果的なエンゲージメント向上戦略を展開していくことができます。

  • 社員の声の積極的な吸い上げと反映
     
    社員が自由に意見を表明できるような、様々なチャネルを設け、組織の意思決定に社員の意見を積極的に反映させる仕組みを構築します。具体的には、社内アンケート、意見箱、タウンホールミーティング、ワークショップなど、さまざまな方法を活用し、社員の声を吸い上げる必要があります。吸い上げた意見に対しては、真摯に対応し、改善策を講じ、その結果を社員にフィードバックすることで、組織への信頼と貢献意識を高めることが大切です。

  • 成長を応援する制度と機会の充実
     
    キャリアアップ支援制度、自己啓発支援制度、資格取得支援制度などを整備し、社員の成長をサポートします。社員が自己成長を実感できる環境を整備することで、仕事へのモチベーションを高め、組織への貢献意欲を高めることができます。また、研修制度だけでなく、メンター制度やコーチング制度も導入することで、個々の社員の成長をさらに効果的にサポートしていくことができます。

  • 対話型コミュニケーションの推進と相互理解の促進
     
    社内イベント、懇親会、ランチミーティングなどを実施し、社員間のコミュニケーションを活性化させ、互いの思いや価値観を共有する機会を設けます。これらの機会を通じて、社員同士の信頼関係を深め、チームワークを強化していくことができます。また、コミュニケーションスキル研修を実施し、社員が効果的なコミュニケーションを実践できるようサポートすることも重要です。

4. 「意図的な無駄」を許容する組織風土の醸成:創造性を刺激し、イノベーションを生み出すための戦略

 組織の活性化には、「意図的な無駄」も必要だと説きました。人事としては、効率性だけを追求するのではなく、時には「無駄」とも思えるような活動を許容し、そこから新たな発見や創造が生まれるような組織風土を醸成していく必要があります。そのためには、以下のような施策を積極的に推進することも必要かもしれません。

(施策例)

  • 研究開発への大胆な投資とチャレンジ文化の醸成
     
    新規事業、技術開発、新製品開発などを積極的に推進し、失敗を恐れずにチャレンジできる環境を整備します。研究開発費を削減するのではなく、むしろ積極的に投資し、社員が自由に発想し、実験できるような環境を提供することが大切です。また、失敗事例から学び、次に活かすことを奨励することで、組織全体の成長を促進することができます。

  • 社内ハッカソンやアイデアソンなどの創造的活動の奨励
     
    テーマを設け、社員が自由にアイデアを出し合い、チームで開発を行うハッカソンやアイデアソンなどを定期的に実施し、創造性を刺激します。これらの活動は、普段の業務とは異なる環境で、社員が自由に発想し、互いに協力し合うことで、イノベーションを生み出す絶好の機会となります。人事としては、これらの活動を企画・運営するだけでなく、社員がこれらの活動に参加しやすいような制度設計や環境整備も行う必要があります。

  • 部門を越えたプロジェクトの推進と多様な視点の融合
     
    部署を越えたメンバーで構成されるプロジェクトを推進し、従来の枠にとらわれない新しいアイデアを生み出す機会を積極的に作ります。異なる専門性を持つ社員が集まることで、互いの知識や視点を共有し、より質の高いアイデアを生み出すことができます。人事としては、これらのプロジェクトの組成を支援するとともに、プロジェクトチームが円滑に活動できるようサポートしていく必要があります。

  • 多様な価値観を尊重する組織文化の醸成と心理的安全性の確保
     
    多様な価値観を尊重し、異なる視点から意見を交わすことを奨励します。そのためには、偏見や差別をなくすための研修や啓発活動を実施し、誰もが安心して意見を表明できるような心理的安全性の高い組織風土を醸成することが重要です。また、社員が安心してチャレンジし、失敗から学べるような環境を整備することも大切です。

5. 戦略的人事の重要性と未来志向の人材育成:組織の持続的成長を支える人事戦略

 戦略的人事の重要性は、現代の企業にとってますます重要になっています。企業の経営戦略を踏まえ、長期的な視点で人材育成、組織開発、採用戦略を策定していく必要があります。そのためには、以下のような施策を戦略的に推進する必要があります。

(施策例)

  • データに基づいた人事戦略の実践と可視化
     
    人事データを分析し、組織の課題、社員のニーズ、成長のボトルネックなどを把握した上で、データに基づいた人事戦略を策定します。人事データを可視化することで、組織の課題を客観的に把握し、より効果的な人事施策を展開することができます。また、人事戦略の効果測定を定期的に行い、必要に応じて戦略を見直していくことも大切です。

  • タレントマネジメントシステムの導入と活用
     
    社員のスキル、経験、キャリア目標などを可視化できるタレントマネジメントシステムを導入し、最適な人材配置、育成計画、キャリアパスの設計に活用します。タレントマネジメントシステムを活用することで、個々の社員の成長を効果的にサポートするとともに、組織全体の最適化を図ることができます。また、AIなどの最新技術を活用し、より高度な人材管理と育成を実現していくことが、今後の人事の重要な課題となります。

  • 採用戦略の革新と多様性の重視
     
    企業の将来を見据え、多様なスキル、経験、価値観を持つ人材を採用できるよう、採用戦略を定期的に見直します。これまでの採用手法にとらわれず、インターンシップ、リファラル採用、ダイレクトソーシングなど、多様な採用チャネルを活用し、より質の高い人材を確保していく必要があります。また、グローバルな視点での採用活動を強化し、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に受け入れていくことが重要です。

  • グローバル人材育成の強化とグローバルリーダーの育成
     
    グローバル展開を視野に入れた人材育成を強化し、グローバルリーダーを育成します。異文化理解研修、語学研修、海外派遣研修などを実施し、グローバルな視点を持つ人材を育成するとともに、グローバルなビジネス環境で活躍できるリーダーを育成する必要があります。また、海外の大学や企業との連携を強化し、社員がグローバルな経験を積む機会を提供することも重要です。

まとめ:野中先生の思想を指針に、未来を切り拓く人事戦略の推進

 野中先生の思想は、企業人事にとって、人材育成、組織開発、そして企業の持続的な成長戦略を考える上で、非常に貴重な指針を与えてくれます。先生の教えを胸に、上記のような施策を積極的に推進し、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる、活力に満ちた、そしてイノベーションを生み出し続ける組織づくりを目指していきたいと思います。野中先生が残してくださった偉大な遺産を、未来へと繋げていくことが、私たち人事担当者に課せられた使命でなないでしょうか。

SECIモデルの知識創造プロセスを象徴的に表現しています。中央に配置された発光する螺旋が、知識が絶えず進化し続ける様子を示しています。四方には、共同化(対話や経験共有)、表出化(アイデアの文書化)、連結化(データの整理・統合)、内面化(学びと実践) のシーンが配置され、それぞれが調和しながら知識を循環させていることが視覚的に伝わります。


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