パンのある暮らし
果物やクリームがたっぷりのスイーツのようなパンとか、斬新な組み合わせで味が想像できないようなパンとか、かわいくて写真を撮らずにはいられないパンとか。最近 SNS や雑誌で話題になるのはそういうパン。
そんなパンを作りたいと思うこともないわけではなく、自分が焼くパンにモヤモヤすることもある。
うちのパンはこれらのパンとは真逆だから。
見た目は茶色く地味。粉や酵母の風味や旨味をじわじわと感じるカンパーニュ。カルダモンの香りが鼻を突き抜ける甘さ控えめのカルダモンロール。全粒粉の香ばしい香りと発酵バターの爽やかで芳醇な香りのスコーン。季節の食材を使うパンも、生地を楽しんで欲しくて具は控えめなものが多く、野菜や果物もあまり手を加えず入れる。
先日お客さんから、Hummeさんのパンって素材そのものというか、途中まで作ったからあとは各々が好きなかたちで楽しんでね、みたいなパンが多いですよね。と言われた。
これを聞いてどうだろう。私はものすごく嬉しかった。
今まで上手く言葉にできなかったが、伝わる人には伝わっている。まさにそうなのだ。パンひとつで食事を済ませるのではなく、あくまでもパンのある暮らしを提供したい。
パンがあるから少し早起きして合わせる料理を作ろうとか、パンがあるから旬の果物を買って休日はジャムを作ろうとか。パンをひとつのきっかけとして暮らしに少し影響を与え、食べるまでの時間も楽しめる、気分が少し嬉しくなるような、そんなパンを作りたい。
すぐそこで採れた新鮮な野菜や果物が手に入りやすい場所であるからこそ、その調理はお客さんにお任せして、私はそれに合うパンを、最高の裏方としてパンを焼く。
新鮮な食材は手の込んだ料理でも、焼いただけの野菜でも、生のままの果物でも、なんでも美味しい。だからこそ、このパンにはこれか合うかもしれないと想像を膨らませるような、そういうパン。
惣菜パンではなく、素材パン。
これも以前お客さんが書いてくれていたこと。
私の焼きたいパンはそんなパン。
instagram もやっています。