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メタバースって、「“ユニ”バース」ではなく、「“マルチ”バース」と考えるのが当たり前ですよね?という想い

はじめに

最近タイトルのようなことをずっと考えています。ただ、その話を周りの方に話してみるのですが、残念ながら

「そうなのかもしれませんね(何を言っているの?)」

というリアクションをされることがほとんどで、そもそも伝えたい概念が理解されていない気がしています。

今回は、議論の前に昨今のメタバースの話題を整理した上で、頭に思い浮かんでいる「マルチバース」という概念をなるべくシンプルに記述してみようと思います。

メタバースは単一なのか、複数なのか

メタバースというフレーズは、昨年あたりから非常に盛り上がっておりますが、そもそもその定義からして曖昧だと感じることはないでしょうか?(とはいえ、そもそもバズワードとは定義が曖昧なものなのですが。)

メタバースという言葉が独り歩きして話題になっているが、その仕組み自体は十数年前から存在する。2005年前後に大きな話題を呼んだ「Second life」がその走りとされる。マルチプレイゲーム「Fortnite」や「Minecraft」もメタバースの一種だという考えもある。
Gartnerが2022年2月7日に発表したプレスリリース「メタバースに関する展望」によると、「2026年までに、人々の4分の1は、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになる」という。
レズニック氏は「2026年までに世界の企業や組織の30%がメタバースに対応した製品やサービスを持つようになる」と主張した上で、メタバースを取り巻くこうした状況から「2026年までに、人々の25%は仕事やショッピング、教育、ソーシャル、エンターテインメントに1日1時間以上をメタバースで過ごすようになる」と語る。

「メタバースってただのブームでしょ?」と言っていられない4年後の世界:649th Lap
https://kn.itmedia.co.jp/kn/articles/2202/18/news040.html

ここで書かれている「1時間以上を過ごすメタバース空間」が、まさに議論の焦点なのですが、ここでメタバースとは以下のどちらを指しているのでしょうか?

  1. メタバース=「リアル空間のデジタルツインをなす単一の仮想空間」説

  2. メタバース=複数の、それぞれ独立した「没入感の高いVRサービスを提供するコミュニティ」説

1の説は、要するに現実の写像となる単一のメタバースを構築し、地球全体を丸ごとメタバース化しようと明確に宣言している企業がMeta(旧Facebook)です。Mark Zuckerberg氏は、そもそも最近「メタバース」という言葉をバズらせた張本人です。

Metaの最高経営責任者(CEO)Mark Zuckerberg氏は、単一のメタバースの実現を約束している。それは開発元を問わず、あらゆる仮想世界がシームレスにつながった、3Dの広大な世界だ。しかし現在のテック業界の動向を見る限り、未来はむしろ、独自のメタバース体験を提供する無数のデジタルドメインが乱立する世界となりそうだ。

CNET Japan: メタバースは乱立してカオスと化すかもしれない
https://japan.cnet.com/article/35185620/

Metaがメタバースのプラットフォームを構築しようとしていることは間違いない。同社は今後数年間にメタバースの構築に数十億ドルを投じることを明らかにしており、開発者やクリエイターの獲得に力を入れている。しかし、Metaが描いているメタバースはFacebookだけのメタバースではない。Zuckerberg氏は、相互運用性とオープンな標準は「メタバースに最初から組み込まれているべき必須要素だ」と述べた。このアプローチはメタバース間の垣根を取り払うものとなるだろう。同氏は、今日の代表的な技術プラットフォームでは「選択肢の少なさと手数料の高さ」が「イノベーションを阻害し、インターネット経済全体を収縮させている」と断じた。

CNET Japan: メタバースは乱立してカオスと化すかもしれない(Page 2)https://japan.cnet.com/article/35185620/2/

しかし、この記事で述べられていることとしては

メタバースを一つに収斂させたいと思っているのはメガIT企業の都合

であって、実際には

用途に応じた「小さな」メタバースが多数存在することになるのでは?

という意見が載せられています。それが2の説に繋がります。

しかし、分断されたメタバースを予想しているのはMcCauley氏だけではない。
Soundscape VRの創業者Eric Alexander氏は、人々は友人たちが集うメタバースと、勤め先が用意したメタバースの両方に通うようになると予想する。仮想世界によって、求められるガバナンスモデルやコンテンツのモデレーション方針、基盤技術、独自要素技術は違う。Soundscape VRは、音楽やコンサートの内容に合わせて鮮やかな3D世界を生成するサービスを提供している。この世界では、現実世界でのミュージシャンの動きと聞こえてくる音の間にずれが生じないようにレイテンシーを極小化することが求められる。Soundscape VRは、これを他の世界と共有したいとは考えていないし、共通の基盤に合わせて自分たちの基準を下げることも考えていない。

CNET Japan: メタバースは乱立してカオスと化すかもしれない(Page 2)
https://japan.cnet.com/article/35185620/2/

では、多数のメタバース=マルチバースが実現した世界というのは、いったいどういう世界なのでしょうか?

そもそも「マルチバース」とは?

マルチバースとは「多元宇宙=複数の宇宙」という意味です。

※ところで、2022/5/4(水)より「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」が公開されましたが、最近の(特にシリーズものの)SF作品で、クロスオーバー作品を取り扱う「舞台」をユニバースと呼ぶようになりましたね。

メタバースの管理者問題から考えるマルチバースの有用性

上で示した2の説「メタバースはマルチバースであって、単一メタバースにならない説」を支持する一つの考え方としては、たとえば「誰がその仮想空間を管理・維持していくのか?」という問題があります。というのは、仮想空間を利用したサービスは、いまや単なる空想ではなく、様々なサービスがすでに多数稼働中だからです。

2010年代から、主にゲームの世界で様々な仮想空間が作られました。「マインクラフト」や「フォートナイト」、日本製だと「あつ森(あつまれ どうぶつの森)」が代表的です。

ゲームの世界で複数の仮想空間が登場(作者まとめ)

メタバースという言葉が独り歩きして話題になっているが、その仕組み自体は十数年前から存在する。2005年前後に大きな話題を呼んだ「Second life」がその走りとされる。マルチプレイゲーム「Fortnite」や「Minecraft」もメタバースの一種だという考えもある。

キーマンズネット:
「メタバースってただのブームでしょ?」と言っていられない4年後の世界:649th Lap
https://kn.itmedia.co.jp/kn/articles/2202/18/news040.html

ところで、たとえば「マインクラフト」と「フォートナイト」と「あつ森」という「ゲーム界3大メタバース」を統一してほしいでしょうか?

それってユーザにとって何か嬉しいでしょうか?

もう少し別の例でいえば、たとえば「Facebook上の『友だち』をTwitterに引き継ぐ」ということを考えてみてもいいかもしれません。

人々がFacebookから離れられないのは、Facebook上でつながっている友人を別のSNSにまるごと移行させることはできず、その友人もまた自分の友人を移行させることはできないからだ。
Metaの真の狙いはメタバースの実質的な所有者となることだ、とエンジニアのJack McCauley氏は言う。

CNET Japan: メタバースは乱立してカオスと化すかもしれない(Page 2)
https://japan.cnet.com/article/35185620/2/

そもそも、これを引き継ぎたい・統一したいと思っている人がどれだけいるのでしょう?というところにポイントがある気がしています。これらのSNSは別IDであるから良いと思っているユーザもたくさんいそうなものですが…。

ほかにも、KDDIは2021年から「バーチャル大阪」を作っております。

「バーチャル大阪」は、2021年12月にプレオープンした都市連動型メタバース。同メタバースでは28日より、2025年開催の大阪・関西万博に先がけて「新市街」エリアが新たに追加される。

ケータイ Watch:KDDI、メタバース「バーチャル大阪」を28日より本格展開
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1391051.html

ここに書かれているように「バーチャル大阪」は、2025年の大阪万博を見越して作られているわけで、だからこそ「実在都市とバーチャル空間が連動した大阪の都市の魅力や経済圏の拡張を目指す」と書いてはおりますが、それは万博後も引き続き管理されて続けていくということを保証しているわけではありません。

メタバース上にデジタルツインが実現するというのは「そもそも管理者は誰?政府?IT企業?」という点からしても難しいのでは?と感じます。
むしろ、既存の様々なオンラインコミュニティのように「簡単に作れて簡単に閉じられる」のがメタバースだと思うのです。

おわりに

Metaが構想するような「世界唯一のメタバース」が誕生するのかどうか、現時点ではまだわかりませんが、これについては、引き続き考えていきたいと思います。

(つづく)


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