
AIに正しく「教わる」
はじめに ~ AIに負けて進化する
AIとの敗北は人類を進化させるそうです。
この記事は、囲碁が題材になっていますが、よく似たボードゲームである将棋でも同時期に「対AIで敗北」した歴史があります。
しかし、私はすでにAIとは戦うものではなく、そこからいかに価値を得るかということに意識が移り変わっています。
AIを上手に活用して勝っていく人の方がよっぽど「強い」
という考えを大事にしています。今回は、この題材から「AIに教わる」をテーマに書いていきます。
囲碁も将棋も、もはやAIには勝てない
AI vs 囲碁、AI vs 将棋のそれぞれで「人間のトップとAIが戦っても、もはやAIには勝てない」と認識されたのは、それぞれ2016年、2017年の対戦でしょう。これらについてはすでに数多くの記事がありますので、ここではWikipediaのご紹介に留めます。
囲碁ファンも将棋ファンも、この頃からすでに
AIと人間が競争しても勝てない = 競争するものではない
という認識ができてきたと考えられます。
将棋は「教わる」のも「教える」のも難しいゲーム
私は、最近私の子どもに将棋を教え始めましたが、その中で分かってきたことがあります。それは
多くの子どもにとって、将棋は難しいゲーム
ということです。
はじめはルールが難しいのかと思っていたのですが、考えを深めてみると、どうもそうではないということに気づきました。私の父が、私に将棋を教えようとしていた時にも感じたことなのですが、
将棋は、教わるのもすごく難しいし、実は教えるのもすごく難しい
のです。
昔を思い出すと、父も私のレベルを上げようと、いろいろ工夫をしてくれたように思います。しかし、その試みはほどんどの場合上手くいかなかったような気がします。
たとえば、将棋はハンデをつける方法として「駒落ち」というものがあります。では、駒落ち戦をやれば、初心者は上級者と同じくらい楽しめるのでしょうか? 答えはノーです。たいていの場合、上級者が勝ちます。というより、実際にはたいてい初心者の方が自滅して負けます。
少し細かい話をすると、初心者が一番躓くのは勝負が中盤に差し掛かったところです。将棋の場合、序盤は書籍などで勉強した局面の通りに進行することが多いですが、中盤になるとそこから外れてしまうことがほとんどです。そうなると、ほとんどの初心者は途端に何をしていいかわからなくなってしまうのです。実際、ルール上はどうとでも指せるのですが、ほとんどの手は上級者から見て的外れな手だったり、タダで駒を取られるような手です。要するに、
将棋は手が広すぎる
のです。手を広すぎるので、初心者はどうしたらよいのかわからず手が止まってしまいます。上級者はなまじ手が見えてしまうので、「次はこう指すべき」「なぜこうしないんだ」と口を出してしまうことが多いのですが、そういうのが一番いけません。結局、それが続くと「もう将棋はやらない!」となってしまうことは避けられないでしょう。
コーチングとテーティング
大人になってから、コーチングとティーチングという考え方があることを知りました。

「コーチング」は、英語の「コーチ(coach)」が由来です。「コーチ」とは馬車を指し、馬車で目的地まで運ぶという意味があります。
(中略)
「ティーチング」は、英語の「教える(teach)」が由来です。イメージとしては、学校で教師が生徒に、黒板の前で授業をしているのを思い浮かべてください。まさにあれが、ティーチングです。
https://alote.inmybook.jp/in-house-training/coaching-teaching/
たまに「コーチングはレベルの高い人に使い、ティーチングはレベルの低い人に使う手法」だと書いている人がいますが、それは誤解のもとです。気づきと知識と言い換えてもいいかもしれませんが、いずれにしても人間には両方が必要なのです。
AIはコーチングもテーティングもできる
そして、ここで重要となるのは、
AIはどちらもできる
ということです。知識量でいえば、AIが人間を越えることはもはや常識ですし、またAIが人間に気づきを与えるような仕組み・環境はすでにかなり整いつつあります。
これは、囲碁や将棋のプロ自身がすでに気付いているところです。たとえば囲碁棋士はAWSを使っていますし
藤井聡太さんはディープラーニング系AIを活用して研究を行っていることが知られています。
これは、答えを教えてもらうというティーチングに使えるのはもちろんですが、それだけでなく、その答えをもとに考えを深めコーチングの効果も期待できます。
おわりに ~ AIは競争相手から協創相手へ
AIに教わるというと、知的に劣化した印象があるかもしれません。しかし、最近はChatGPTのような「問いかけに応えるAI」が出てきたことで、余計に
AIは競争相手から競争相手へ
なってきたと言えるのではないでしょうか。逆に言うと、今後は
AIを協創に使える人が、競争に勝っていけるようになる
と言えるかもしれません。

(おわり)
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