ダブルダイヤモンド? それって「4RKYT」でしょ!
はじめに
最近はリスキリングということで、いろいろな研修を受けることが多いのですが、先日ある研修で「ダブルダイヤモンド」という言葉を聞きました。
ダブルダイヤモンドとは、課題案と解決案の洗い出しと絞り込みを行うためのフレームワークで、2005年から提唱されているようです。発散→収束→発散→収束の絵がまるでダイヤモンドのように見えるということからでしょうか。
ただ、製造業で15年以上働いている身からすると、これを聞いた瞬間
それって、昔からある4RKYTのことじゃない?
と感じました。アイデア出しのフレームワークとしてはとても似ていると思ったのですが、この二つの類似点を述べている記事が全然見当たらなかったので、今回は4RKTYについて、またその類似性について解説していこうと思います。
4RKYTとは
それぞれ分解すると以下の意味になります。以下の引用文中にあるように、「KY」とは「危険予知 (Kiken Yochi)」をローマ字表示したものの頭文字になります。
4R:4ラウンド
KY:危険予知
T :トレーニング(訓練)
Wikipediaにもあるように、2005年より30年以上も前から提唱されており、製造業だけでなく、建築現場などでも広く知られている手法です。
4RKYTこそ完成された「発散→収束→発散→収束フレームワーク」
4RKYTの行い方については、すでに多くの文献が存在するので、ここでは概要を紹介するのにとどめます。
4RKYTは、たとえば「事故が起きた現場」あるいは「ヒヤリハットが起きた/起きそうな現場」に対して行うという安全に対して行うものではありますが、1Rで問題点の抽出を行い、2Rではそこから多数決などを行いこのチームで解決する課題を設定します。
また、2Rで決定した課題に対して、3Rでは参加者各人が対策案を多数樹立し、4Rで「すぐできそうなもの」「効果が大きそうなもの」をこれまた多数決で選び出すというプロセスを経て、チーム行動目標を設定します。そして最後は「ゼロ災で行こうヨシ!」の唱和で終わります。
※ちなみに、この「ヨシ!」という掛け声は、もしかしたら現場猫というインターネットミームで知られているかもしれませんが、製造現場では結構真面目に唱和します。ただ、このポスターはまだ現場で見たことはありません…
4RKYTがフレームワークとして優れているところ
4RKYTが「発散と収束をまとめるためのフレームワーク」としてとても優秀である点を、具体的にいくつかご紹介します。
「~なので~して~になる」という肯定型
1Rや3Rはアイデア出し(ここでは「洗い出し」と表現)のフェーズなので、質より量というのはもちろんなのですが、それよりも実は「~なので~して~になる」という型で出す、という決め事の方が実は重要なのです。これは
現状をありのまま表現するために否定形を用いない
ということを型から縛っている良い例です。1Rに慣れていない人だと
設備が固定されていないので、倒れる
保護メガネをかけていないので、目にかかる
など否定形を用いがちなのですが、これでは「答えを知っている人が答え通りになってないことを指摘しているだけ」です。つまり
話している人の思惑が含まれていて、事実をありのまま表現していない
ことになるのです。現状を表現するには、あくまで予断なく、ありのままを表現しなければいけません。
ポイント毎にメンバー間の認識合わせを行う
実は4RKTYでは、最後だけでなく中間の2Rでも「ヨシ!」の声出しを行います。
アイデア収束のフェーズでは、全員で認識合わせを行う
ということの重要さが、型としてきっちりと決められている点が素晴らしいです。
自分事として案を出してもらうために否定はしない
アイデア出しで「ほかの人のアイデアを否定してはいけない」とはよく言われますが、4RKYTでは「方針決定後は自身が即実行できる案を出す」ことを想定しているので、とにかく自分ができること、自分が行いたいことを書くフレームワークになっています。つまり、
その人の案を否定することは、その人の行動方針を否定することに繋がる
わけです。そのため、4RKYTでも他の人のアイデアは否定してはいけないのです。
終わりに ~ 4RKYTの手法で考えてみましょう!
今回は4RKYT(4ラウンド危険予知トレーニング)について、およびダブルダイヤモンドとの類似性について解説しました。調査の結果、
4RKYTは、ダブルダイヤモンドと類似性はあるものの、より古くからあり、またより完成されたフレームワーク
であることがご理解いただけたと思います。
「ダブルダイヤモンドによるアイデアの整理」というと、いかにもカタカナでおしゃれ・見栄えのする資料も多いのかもしれませんが、こと製造業の人「拡散→収束→拡散→収束」についてアイデア出しの提案をしたいのであれば、歴史的に日本の製造業が昔からやってきた言葉を使って、
今回のアイデア出しは4RKYTの手法で考えてみましょう!
と言った方が腹落ちすると思われます。ぜひご活用ください。
(おわり)