『aラストティア』~荒野の楽園編~第三章 07怪しい占い師
第三章グオーレ王国 07怪しい占い師
ある程度の情報が集まったところで優理は席を立とうとした。すると
「おや、そこの兄ちゃんまだお酒が残っているじゃないか。もったいないなぁ。わしにそれ分けてくれないかい?」
シワシワの顔に長く白い髭が顎下10センチちかくまで伸びていて、猫背で丸まった背中に長いローブを纏っているおじいちゃんが目の前の席に座り話しかけてきた。
なんだこのじいさん、見るからに怪しいし図々しい。
特にお酒が飲みたいわけでもなかったので「良いですよ」と言って足早に立ち去ろうと席を立った時、じいさんはこんなことを言ってきた。
「珍しい子だね。あまり見ない子だ。迷ってるね。そうか記憶が無いのか。盗まれたものは見つかってない。今日はゆっくり寝られそうに無いね。赤い、顔が赤いね。お酒じゃ無いよ。女だ。知りたい?知りたいよね?占ってあげようか?」
な、なんだこのじいさん・・・・・・占い?占い師ってことか? 盗まれたってのはリングのことで赤い女ってのはカレンのことか? だとしたら合ってはいるが、なんか怪しすぎる。
優理が警戒してじいさんを見ていると急に笑い出した。
「あっはっはっは! そんなに見つめないでくれよ恥ずかしいじゃないかい。別に怪しい者じゃあ無い。ただの占い好きなじじいじゃよ」
急に馬鹿でかい声で笑うので周りの視線が一気に優理達に集まった。
「ちょっとじいさん声がでかいよ、みんなこっち見てる!」
「おっと失礼こいた。別に怪しい者じゃあない。ちょっとばかし君がある人に似ていてね。懐かしく感じて声をかけたんじゃよ。」
「懐かしい人に似てるからって、急にあんなこと言われたら警戒しますよ普通」
優理はゆっくりと席に座り直す。
「すまんすまん。まぁ老いぼれのきまぐれってやつだ。どうだろうか、占いやっていかんか? お代はこのお酒ということにして」
よっぽど思い入れのある懐かしい人なのだろう、しみじみとした口調で話すじいさんを見て僕は思った。仕方ない少し付き合ってあげるか。
「分かりました、占いお願いします」
優理がそう返事をすると嬉しそうな笑顔で「ありがとう」というじいさん。
「で、どうやって占うんですか?」
「それはもちろん水晶を使って占うぞ」
おもむろにローブの内側に手を入れ、野球ボールくらいの水晶を取り出し机に置く。
「わしの名前はラム、ラムじいと呼んでくれ。君は?」
「僕は優理です」
「優理か・・・・・・。言い名前じゃ」
気のせいか、少し目が潤んでいたような気がした。
「よし、じゃあ優理の未来を占うぞ」
ラムじいはそう言うと何やら呪文みたいなのを唱えながら水晶の上で手を行ったり来たりさせる。
初めて占いをやってもらったけどイメージ通りにやるみたいだな。ただ目の前で自分のことを占われているって思うと背筋がビリビリする。
真剣な眼差しで水晶を除いていると、段々とモヤが出てきて何かしらが映し出されているように見える。さらに続けていると今度ははっきりと黄色い髪が見えてきた。
「カァーーーーッ!!」
じいさんが急に叫ぶと水晶は元に戻ってしまった。
またしても視線が集まる。
「ラムじいさん静かにっ!」
口元に指を立てながら注意する。
「すまん、つい張り切ってしまった・・・・・・。結果が出たぞ」
「け、結果は・・・・・・」
人生初の占いってこともあって緊張でつばをゴクっと飲み込む。
「結果は・・・・・・・・・・・・。ラッキーアイテムは黄色の髪をした人じゃっ!」
「・・・・・・・・・・・・は?」
「だから、近い未来のラッキーアイテムは黄色の髪をした人ってことじゃ」
「ことじゃ・・・・・・じゃないですよ! え、未来の占いってもしかして、明日のラッキーアイテム占いってことですか!?」
「そうじゃよ?」
そうじゃよって・・・・・、・あんなにしっかりとした水晶玉使って占いしてたんだから、もっとこう人生的な出会いとか別れ的なの占いだと思っていたのに。ラッキーアイテム占いって、朝のニュース番組の最後(ラスト)2分じゃないんだから!
と盛大に突っ込みたくなったが頑張って抑える優理であった。
ラッキーアイテム占いも終わり、お酒も尽きたので二人は酒場を出ることにした。
別れ際に「黄色い女の子に気をつけるんじゃよー」とラムじいに念押しされた。ん?黄色い女の子?さっきは髪だったような・・・・・・。そう思いながらも僕はカレンの待つ宿に戻る。
まさかこの占い通りにいくなんて、このときの僕は微塵たりとも思ってなかった。