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私の思う優勝/昇格に欠かせないこと

INDEX
◼サマーブレイクに入ったJリーグ
◼最後まで諦めない強い気持ち
◼絶対にブレないサッカーを貫く
◼厚い選手層によるチームワーク
◼1プレーにこだわる
◼利他の精神を持ち続ける
◼強烈な応援力
◼魅力的なJリーグへ
🔶追伸:マツへ

リーグ戦再開を待つ富山県総合運動公園陸上競技場

◼サマーブレイクに入ったJリーグ

 Jリーグ2024シーズンは折り返しを過ぎ、後半戦に突入しました。現在私のいるJ3リーグは、全38試合中23試合を終え、3週間のサマーブレイクに入りました。例年にない猛暑続きでしたのでチームにとっても観戦されるファン、サポーターの皆さんにとっても一息つける良い中断期間なのではと思います。そしてどのチームも、フレッシュな状態で残り15試合を戦うことができるでしょう。

 私が所屬するカターレ富山は現在J3全20クラブ中10勝9分4敗の第4位で、昇格ラインの2位とは勝点差3とまずまずのポジションにつけています。また直近のゲームは8戦無敗、6試合連続無失点、開幕以降ホーム11試合連続無敗中と、非常に良い状態でサマーブレイクに入りました。好調を反映してチーム内の雰囲気も明るく前向きで非常に良いものとなっています。さてこの好調さを維持しつつ、ブレイク明けからどう昇格まで持っていけるか少し考えてみました。

 私は社長として経験したJ1優勝2回(横浜マリノス)、J1復帰1回(清水エスパルス)、J1残留3回(清水エスパルス)は全て最終戦までもつれました。また今のカターレ富山では、昨シーズン最終戦で昇格圏となる2位と勝点数で並んだものの、得失点差で昇格を逃すという大変苦い経験を味わいました。今シーズンも最終盤はどのクラブも必死ですから、最終戦までもつれる覚悟はしています。こうした経験を通じて、際の戦いをものにしてきた私の所属した過去のチームには概ね6つの共通した特徴がありました。

◼最後まで諦めない強い気持ち

追い上げゴール後、残り10数秒でもボールを
センターサークルに置きに走る選手


 一つ目はありきたりなことですが「最後まで絶対に諦めない強い気持ち」です。かつて2度の優勝をしたF•マリノスで、1人退場を出しながらも最後の最後で引き分けに持ち込んだ試合がありました。試合後のロッカールームで嘔吐する選手が出たほどの壮絶な試合でした。その勝点1は最終戦での優勝に繋がりました。2003年10月26日対セレッソ大阪戦、私の生涯ベストゲームです。また、先日行われたパリオリンピックでの日本男子体操チームの団体戦もその典型でしょう。エースの不調をみんなで補い合い、最後の最後でエースが決めた…諦めなければ全て勝てるというものではありませんが、諦めてしまえばそこで勝負は終わってしまいます。ウイニングメンタリティの柱だと経験上実感しています。

◼絶対にブレないサッカーを貫く

 二つ目は「絶対にブレないサッカーを貫く」ことです。J1に昇格した湘南が年間6勝しかできず降格してしまった年、シーズンを通じて「前へチャレンジするサッカー」を貫きました。最終戦後、当時の監督がサポーターに向かって「胸を張ってJ2に行こう!」と声高に言った翌年のJ2で、そのサッカーを貫き年間100点越えの勝点でJ1復帰を果たしました。この勝点数は今でもJ2記録です。

2024シーズン新体制発表会より


 また、ブレないためにはクラブとしてどういうサッカーをやるのかというビジョンを示すことがとても大事です。それがなければ適切なチーム作りはできません。そして、目先の勝ち負けではなく、チームとして納得のいくサッカーをやり続けることです。ブレないということは、問題に直面した時に必ず立ち戻る場所があるということに繋がります。サッカーに限らず、立ち戻る場所のある組織は簡単には崩れません。それが上質なチームプレーの源となるからです。カターレ富山も、強度、走力、切替の三原則をベースに、自分たちで能動的に仕掛ける攻守一体となったサッカーを極めていけば、必ず結果はついてくると信じています。

◼厚い選手層によるチームワーク

 三つ目は「厚い選手層によるチームワーク」です。シーズン終盤になると怪我やコンディション不良、出場停止とベストメンバーが組めなくなります。その時に代わって出てくる選手の質が落ちないことはとても大事です。そしてレギュラーもサブもなく一つになって戦えるチームが結果を残します。一定の成果を出すためにはある程度出場メンバーを固定することは大事ですが、フルシーズン固定は不可能です。

ルヴァンカップでヴィッセル神戸に勝利


 そうした点で、シーズン当初にリーグ戦とは別にルヴァンカップや天皇杯を通じて、メンバー全員が公式戦の経験を積めたことはありがたい限りです。やはりレベルを一定に保つためには、全員に真剣勝負の場が与えられることは必須ですから。カターレ富山の場合、リーグ戦から先発を殆ど入れ替えてルヴァンカップに臨み、昨シーズンJ1チャンピオンのヴィッセル神戸や、J2首位を走っていた清水エスパルスを下し、大きな自信と全員でやれる手応えを掴むことができました。今シーズンの昇格を大いに期待させる証左となりました。今のカターレ富山にBチームは存在しません。

誰が出てもAチーム


◼1プレーにこだわる

 四つ目は「1プレーにこだわる」意識を強めることです。これまで社長として公式戦を500試合以上経験してきましたが、負けた試合の振り返りを聞いていると、チームとしての技術、戦術的なこともありますが、それ以前に個人として自らの技術や判断ミスによる失点、個人個人の前への意識が乏しく攻撃機会が少なくなり得点が生まれない、攻撃機会は作っているがフィニッシュの精度が悪い、といった「個」の能力に関する指摘がとても多い。「サッカーはミスのスポーツ」とよく言われますが、初めからミスをしても良いという意識ではミスは減りません。日頃の練習からどこまでも細部にこだわり突き詰めていく、1プレーたりとも疎かにしないという意識を持ち続けたチームがやはり結果を出してきたと思います。

◼利他の精神を持ち続ける

試合後のロッカーはメンバーもメンバー外もなくなる


 五つ目は「利他の精神を持ち続ける」ということです。試合に出ている選手は出ていない選手を想い、出ていない選手は出ている選手を目一杯サポートする。自分の置かれた状況は横に置いておいて他者を思いやる…有期雇用でいつ契約非更新になるのかわからないプロの世界では、簡単なようで簡単なことではありません。現に自分の不遇からそれが態度や言動に表れ、そうした選手が増えていったことでチームがバラバラになっていった光景を何度か見てきました。常に矢印を自分に向けることは簡単なことではありませんが、利他の塊となったチームは早々には崩れません。

 つい最近の試合で、PKを獲った選手がシーズン当初から主力と期待されながらも得点に恵まれなかった選手にPKを譲ったシーンがありました。見事PKを決めた選手は涙し、みんなに祝福されていました。私は良いチームになったとしみじみ嬉しかった。こうしたお互いを思い合うチームは、それがシーズンを通じて続けば間違いなく強くなるでしょう。

PKを決めた選手を祝福する選手たち


◼強烈な応援力

サポーターの増加はクラブ最大の補強


 最後はなんと言っても「強烈な応援力」です。彼らに前を向かせる、あと一歩前に出させる、身体を投げ出させるのはスタジアムでの応援です。昨シーズンの最終戦、勝利が昇格の絶対条件だった試合で、最後の最後でPKをものにして勝ち越すことができました。PKを獲った選手は相手のキックを顔面に受け骨折をしました。普通なら絶対に飛び込まないシチュエーションです。ただこのプレーの少し前に、ゴール裏を中心にスタンド全体から一層大きな声援が湧き起こりました。そのゴール裏に向かってその選手は飛び込んだのでしょう。あの得点はその日スタジアムに来てくれた皆さんに獲らせてもらったと今でも思っています。応援力とはそういうものだと。決してプレーをするわけではありませんが、なければここぞという場面での得点もあと一歩前に出る気持ちも生まれてこないでしょう。昇格や優勝するチームには必ずそうした強烈な応援力がシーズンを通じてあったと思います。

サポーターは私たちの誇り


◼魅力的なJリーグへ

 以上の6つの共通点があり、私と同じ釜の飯を食ったチームは結果を出してきました。こうして書いてきてみて気づいたのですが、これらは全て結果を出すためには「当たり前」のことばかりでした。逆に見方を変えれば、こうした当たり前のことをシーズンを通じてやり続けることの難しさがあり、だからこそこれらにチャレンジしていく意味があるのだと思います。ただ勿論あくまでも私の経験に基づいた私見ではありますので、鵜呑みにする必要はありませんが、カターレ富山に限らず全てのチームがこうした要件を満たすことができれば、きっととても魅力的なリーグになるのではないかと私は思っています。

 残りのシーズン、精一杯の戦いを心がけて行きます。

リーグ再開で皆さんのお越しをお待ちしています。
『県総で待ってる❗️』


🔶追伸:マツへ
この原稿がアップされる日は故松田直樹氏が亡くなる一日前。もうあの日から13年が過ぎ、私は彼の倍生きたことになります。日産から横浜マリノスに赴任して以降の6年間で、サッカー素人の私を育ててくれた人たちの中でも大事な一人。今この原稿を読み返してみると、まだ彼がこの世にいてくれた13年前の今日、彼が私を使ってペンを走らせたのではということばかり。

マツ、お前との縁は永遠だ。

2024年8月3日

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