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カメラではなく、自分の目で景色を味わう時

学生になってカメラを持ち運び始めるのと時を同じくして、私はスマホを持ち始めるようになりました。

最初は、スマホで写真を撮ることはあまりしませんでした。カメラと比べると画質は全くよくありませんし、何かあるたびに鞄からスマホを取り出すほど、スマホに依存していなかったのです。

けれど、スマホが自分の相棒のようになり、周りの人も、スマホを常に手元に置いておくようになり……。スマホは生活の中心にある存在へと変わっていきました。そして、スマホで写真を撮ることも、格段に増えていきました。

その日に食べたランチ、ちょっとした記念写真、お店の写真。「この瞬間を忘れたくない」と心が動くたび、スマホのカメラを起動させるようになったのです。

もちろん、それは悪いことではありません。実際、今から2年前に同期たちと食べた夕食を、写真なしにはっきりと思い出せるかと言ったら、それは怪しいものです。写真があることで思い出せる景色があり、写真によって残る思い出もあるのです。

けれど、「その瞬間を、きちんとその目で味わうこと」は、もっと大事なことなのです。カメラを向けるたび、スマホを向けるたび、目の前の光景を、自分の目で味わうことはできなくなってしまいます。そのことに気がついてからは、私は、「あえてカメラを持たない」で出かけたり、「写真を撮らない」と決めて家を出たりするようになったのです。

カメラを持たないことや、レンズを向けないことに、不安を覚えることもありました。目の前の景色を、自分が忘れてしまうのではないかという恐れと隣合わせになるような気がしたのです。

でも、誰かと食べたご飯を、一緒に見上げた星空を、美しい美術館の中の散策を、自分の目と心で記憶すること。それもまた、幸せなことなのだと、私は思います。

いつか忘れてしまうかも」という恐れを心のどこかに持ちながらも、その瞬間を深く味わおうとすること。そうすることで、たとえ画像としては記録に残らなくても、自分の記憶には鮮やかに残るような気がするのです。


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この作品は、アドベントエッセイです。クリスマスまでの24日間をワクワク過ごしてほしい、という思いから、「24年の人生で見つけた、24の幸せ」をテーマに毎日1本ずつエッセイを書いています。

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元町ひばり
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