ランドセル選びの思い出
そろそろ、新学期ですね。
この季節になると、早くランドセルを背負って学校に行ってみたくてたまらなかった、幼い頃のことを思い出します。
そして、ランドセルが家に届いた日や、ランドセルを選んだ日のことも……。
実をいうと、ランドセルを選んだ日のことは、この季節でなくても、折に触れて思い出すことがあります。
忘れようにも忘れることができないのです。
というのも、ランドセルの色に関して両親と衝突し、最初のうちは自分のランドセルの色が好きではなかったからです。
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私が欲しかったのは、ピンク色のランドセルでした。
それも、桜色みたいに優しいピンク色のランドセルです。
その頃の私は、熱狂的なピンク信者でした。
靴もピンク、靴下もピンク、スカートもピンク、Tシャツもピンクという、今の私が見たら笑ってしまうようなセンスでしたが、当時の私は真剣にピンク色を愛し、全身にピンク色をまとっていました。
そんな私がピンク色のランドセルを欲しがったのは、当然のことでした。しかし、両親は断固反対、という感じでした。
「ピンクなんて、そのうち飽きちゃうと思うけどなぁ」
「やめておいた方が、いいと思うよ」
そんなの、誰にも分からないでしょ!
私が欲しいのはピンクのランドセルなのに!
こんなの違う!
……とは思ったものの、泣く泣く、ピンクというには濃すぎる、赤とピンクを混ぜたような色のランドセルを買ってもらいました。
そのランドセルが家に届いた時、嬉しかったものの、「やっぱりピンク色がよかったな……」と苦い気持ちになったのを、今でも覚えています。
けれど、買ってしまったものは買ってしまったものですし、今さら変えることはできません。それに、私の気持ちが変わらないのと同じように、両親の気持ちだって変わりっこないと、子どもながらに諦めの境地に立っていました。
ところが、です。
小学校の入学式で仲良くなった子は、よりにもよって、私の理想の、ピンク色のランドセルをもっていたのです!
そう、パステルピンクのランドセル!
それはもう、羨ましくてたまりません。
親というのは、こどもの言うことを聞いてくれないと思い込んでいた私からしたら、カルチャーショックに近い衝撃でもありました。
あの子のお父さん、お母さんは、ダメって言わなかったんだ!
私の両親は、あんなに反対したのに!
その子への羨ましさと同時に、両親への怒りもわいて、しばらくは自分のランドセルを見て、嫌な気持ちになったものです。
でも。
いざ、6年後。
小学6年生になった私の持ち物に、ピンク色は影も形もなくなっていました。
水色のペンケース、
水色のシャープペン。
メガネが水色なら、腕時計も水色という、
完全寒色主義者になっていたのです!
あの時の両親の予言は、当たったわけです。
結局、小学校を卒業する頃には、両親がピンクのランドセルを選ぼうとした私を止めてくれたことを、感謝するようになっていました。
中学生、高校生と、時が経つにつれて、その思いは強くなっていきました。
そして、両親と言い争ったことも含めて「この色も、いいかもね」なんて思うほどになった私は、母に頼んでランドセルをミニチュア化&ペンケース化してもらいました。
寒色好きの私が、なかなかいい色だと思うのは、たぶん、両親への感謝の気持ちからです。
もしも今、自分にとって納得のいかない色のランドセルが手元にあって、他の子のランドセルが羨ましくてたまらない子がいたら、「いつか、その色は、素敵な思い出の色になるんだよ」と伝えてあげたいです。
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