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病気になること

できたら、苦しい思いはしたくない。

……というのが前提ですが、それでも私は、病気になることは幸せのカギだと思います。

本当に小さい頃は、体調を崩すことがよくありましたが、小学校も高学年になってくると、そうそう風邪を引くことはなくなりました。渡は、健康そのものな子どもでした。

だから、健康であることがどんなに貴重なことなのか、幸せなことなのか、だんだん分からなくなっていました。体調を崩しやすい人を見ても、「何であんなに弱いのかな」と思うほどに。

なんて冷たい人間なのだろうと自分でも思うのですが、それくらい、病気や怪我で苦しむ人の気持ちが分かりませんでした。自分が健康だから、そうでない状態を完全に理解することができなかったのです。


そんな私の世界がひっくり返ったのは、怪我や病気を経験してからでした。自分と同じ思いをしたことがないにもかかわらず、優しく手を差し伸べてくれた友人たちのようになろうと思いました。健康がいかに大事なものなのかを学び、それを誰かに伝えようと思いました。

純粋に、当たり前の日々を、大切に生きようと思うようになりました。

だって、歩けることが、行きたいところに行けることが、食べたいものを食べられるのが、当たり前ではないと気がついたから。

それは、ずっと健康だったら、ずっと苦しい思いをせずに済んでいたら、気がつくことのできない事実でした。そして、その事実を知らずに生きることは、沢山の幸せを見逃すことに他ならないのです。

幸せとは、苦しみと表裏一体であることを学べたのも、病気のおかげでした。幸せとは、幸せなことの中にしかないのではありません。苦しみの中に存在する幸せも確かにあり、幸せなのに苦しいということも、珍しいことではないと知ることができました。

その小さな事実を知っていることこそが、私たちを幸せに導いてくれるように思います。そのことに気づくきっかけをくれた「病気」たちは、確かに幸せのカギだと、私は思うのです。

もし怪我や病気を経験していなかったら、「幸せ」と聞いて「健康であること」が真っ先に浮かぶということはなかったかもしれません。


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この作品は、アドベントエッセイです。クリスマスまでの24日間をワクワク過ごしてほしい、という思いから、「24年の人生で見つけた、24の幸せ」をテーマに毎日1本ずつエッセイを書いています。

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元町ひばり
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