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読者感想文⑱「一私小説書きの日常」西村賢太

この本は西村賢太の2011年から2012年5月までの日記である。何食べたとか誰と会ったとか、TVの収録とか、そのようなことが書かれているのでいつもの小説を期待している人にとっては特に面白い本ではないんじゃないかなと思う。ファンだったら嬉しいかもしれないがそこまでファンではない人からしたら、ただのおっさんの日記やないかとツッコんでしまうかもしれない。まぁどこぞの雑誌に昔、仕事を干された恨みからそこの編集長が受賞会見時に挨拶してきても無視して思いきり無礼にあしらって公衆の面前で赤っ恥をかかせてやった。みたいなエピソードは少し西村賢太らしさを感じられもするが、でも概ねは日々の記録のようなものである。多分この本が出る頃の西村賢太は芥川賞を獲った事と会見時の「そろそろ風俗に行こうかと思ってた」という発言のせいか、ちょっとした話題の人になってたみたいで色んなTVやラジオから声がかかりタレントみたいな扱いを受けている。日常もTVやラジオやインタビューに執筆と忙しそうである。有名になったせいなのか、けっこう周囲にもてなされていて、会うたびにタバコと缶コーヒーをくれる女性誌の広報部の人がいたり、編集者との打ち合わせのためタクシーで移動して叙々苑で焼肉をたらふく食べたり、小説の作中で書かれているお酒のメーカーからお酒がケースで届いたり、自身の本の売れ行きも良いみたいで、順風満帆な至れり尽くせりの生活のように見える。若い頃日雇い仕事で生計を立てて3畳間で暮らしていた頃に比べたら随分成り上がったなという印象である。だがあの頃と変わらず買淫は時々しているみたいなので中身は大して変わってないんだろう。


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