夏目漱石に「美しいもの」を問われた
私は夏目漱石が好きだ。作品はもちろんのこと、暇さえあれば墓参りにも行く。もしかしたら彼が化けて参拝者に紛れ込んでいるかもしれないと思って下駄に作務衣を着てよく雑司が谷霊園を闊歩したものだ。やばいな。
夏目漱石を好きになってしまったのは私がイギリスのオックスフォードに留学していた時のことだった。留学生活一週間めで環境の変化に適応しきれず私は早速熱を出した。学校も休んだ。
一日中寝て、ちょっと起きて電子書籍で『倫敦塔』を読んだ。私は単純なので、治ったらロンドン塔に行こうと決め