『音圧アップのためのDTMミキシング入門講座!』をまとめ&レビュー
DTMerやボカロPが読むべき本をまとめ&レビューしています。
今回は「ミキシング」がテーマのこの本をまとめ&レビューしました!
これらの悩みを解消してくれる本です。ミキシング初心者には、取っつきやすいし、図が多くて非常に分かりやすいです!
それでは、本のまとめ&レビューをしていきます。
注 : 本記事における図は、石田ごうき著「音圧アップのためのDTMミキシング入門講座!」の一部の図を加工して引用したものです。
Intro.ミキシング予備知識編
(1)『音圧が高い』とは以下の2つの条件を満たしているということです。
条件1:『周波数軸を軸に取ったとき、高いレベルを維持している』
条件2:『時間軸を軸に取ったとき、高いレベルを維持している』
条件1/条件2を満たすことを目指して、音を作っていくと良いということです。
(2)周波数軸を軸に取ったとき、いわゆる『ドンシャリ(=低音がドンドン、高音がシャリシャリ)』となるのは、V型ではなくM型である!
『ドンシャリ』にしたいのであれば、M型を目指していきましょう。
(3)音圧を上げるために、この本で習得するミキシングに関する技術は、フェーダー、EQ、コンプの3つです。
それでは、各Partで詳しい手順を見ていきましょう。
Part1 対比式ミックス
(1)フェーダーの基礎で最も大切な考え方が『対比式ミックス』です。これは、聴感上の存在感を1対1で聴き比べて、バランスを取る方法のことです。
具体的には、特定の1トラックを基準にしながら、新しいトラックを追加するやり方です。このとき大切なのは"音量ボリュームではなく、あくまで聴感上の存在感を対比する"ことです。
アバウトな方法だなと思う人もいるかもしれませんが、筆者の石田ごうきさんは、"ふたつの音の聴感の存在感を対比する能力"はプロとビギナーで大差がないと明言しています。信じて練習していきましょう。
(2)フェーダーを整える手順は以下の8ステップです。先述の『対比式ミックス』を意識して、各トラックのフェーダーを調整していきます。
STEP1 ドラム3点の立ち上げ
STEP2 ルームマイクとオーバーヘッドの追加
STEP3 タムの追加
STEP4 皮モノパーカッションの追加
STEP5 振りモノパーカッションの追加
STEP6 ボーカルの追加
STEP7 ベースの追加
STEP8 ウワモノの追加
STEP9 音像の最終チェック
このPartに記載されているとおりにフェーダーを調整するだけで、曲全体の印象がガラリと変わってくるのが実感できると思います。Part1に24ページを割いており、図が多くて、非常に理解しやすいですが、身につけるためには、実際に手を動かしながら読み進めることを強く推奨します。読んだだけでは覚えられないですし、手を動かすことで理解も深まります。
ちょうどミックスしたい良い曲がない人もこの本にはDVDがついているので、付録を使って学ぶことができますのでご安心してください。手順の詳細については割愛しますが、少し例をあげておきます。
(例)『振りモノパーカッション(ハイハット、シェイカー、タンバリン、カバサなど)が複数ある場合、手数の少ないパート>手数の多いパートとなるように調整する』
(3)パンについては音圧アップという観点では重要ではないが、無闇やたらにパンを振ってしまうことはやめなくてはいけない。ギターはボーカルと周波数が近く衝突しやすいので、共存のために左右に振る。特にアコギとハイハットは細かく刻む楽器同士なので、アコギをLに振って、ハイハットは若干R寄りにする。
Part2 EQ徹底活用編
(1)次はEQ(イコライザ)についてです。この本では周波数軸を5つのゾーンに分けて考える『5ゾーン分割』が提唱されています。
5つのゾーンのそれぞれの特徴は以下になります。
・ゾーン1:体で感じる超低音(63Hz未満)と耳に聞こえる低音(63〜100Hzあたり)のバランスを取るのがキーポイント
・ゾーン2:イコライジングの成功/失敗の明暗を分ける領域であるためEQでしっかりさばく必要がある
・ゾーン3:最も音符的なゾーンであり、ボーカルが際立つようにすること、リミッティングがかからない自由な状態することを念頭に処置する
・ゾーン4:楽器の質感をフィーチャーしていくゾーン
・ゾーン5:サウンド全体の明るさを大きく左右
それぞれのゾーンの調整方法について、ゾーン毎・楽器毎に丁寧に解説してあります。Part2も実際に読みながら手を動かしていくことが重要だと思いました。
調整方法は割愛しますが、たとえば、ゾーン4においては『2〜3kHzちょい下あたりをEQで突くとボーカルの母音の響きが豊かになり、女の子のボーカルだとカワイイ感じのニュアンスが出る』など、実用的なテクニックが満載でした。
(2)中低域で重要なのは、ローカットフィルターです。ベース、ボーカル、コード楽器はローカットフィルターをかけましょう。ローカットフィルターの使い方は以下のとおりです。
①Qカーブを断崖絶壁にする
②任意の周波数まで移動させる
③Qカーブを緩やかにする
最も効果が分かりやすいようにフィルターを極端にかけて(①)、適切な周波数に調整して(②)、自然な状態にする(③)というイメージです。
Part3 コンプ完全攻略編
(1)用語説明
・ スレッショルド : この線を越えたら音をたたくという基準
・ リダクション量 : コンプレッションする量のこと
・ レシオ : コンプレッションする割合
・ アタックタイム : スレッショルドを超える入力があったとき、コンプレッサの動作がONになるまでのタイムラグ
・ リリースタイム : スレッショルドを下回ってからコンプレッサの動作がOFFになるまでのタイムラグ
(2)リダクション量の基準
『−3dBの原則』は、コンプレッサを使うときは−3dB以上のリダクションをかからないようにする。−3dB以上かけたいときは、2段掛けにする。
(3)レシオの設定
レシオをキツくすると楽器の直接音や発音部をフューチャーしたサウンドになり、レシオをユルくすると残響感や空気感がフューチャーされたサウンドになります。レシオの設定の目安は以下とおりです。
・ 2:1 ふんわりと掛ける
・ 4:1 しっかりと掛ける
・ 6:1 がっつりと掛ける
・ 8:1 これ以上はコンプの機種選びも重要になる
ただし、コンプの設定はレシオだけで決まるものではないので、レシオを調整したら同時にスレッショルドを調整する必要があることに注意です。
(4)アタックタイム/リリースタイムの設定
(5)コンプを使用するときのレシオ/アタックタイムの目安
Part4 ボーカル専用処理編
(1)整数倍音の整列
すべての楽器には倍音があります。ボーカルにおいて音程A4を例に見てみると以下のようになります。
このうち、第2倍音/第5倍音をつくと華やかな響きになります。第2倍音および第5倍音だけをつくのではなく、隣の第3倍音/第4倍音も一緒にゆるやかにつくのがコツ。
(2)非整数倍音の増量
ボーカルの3~4kHzあたりを強調すると子音がくっきりします。また、8kHz以上の息っぽさの増量はサウンド全体の明るさをもたらします。
Part5 グルーブコントロール編
(1)グルーブ
グルーブを構成する要素(リズムパターン、音色、抑揚など)のうち、音色と抑揚についても考察しています。
・音色 : 音のアタック/ボディ成分の発想を活用したコンプ&EQテクニック
・一定周期での抑揚 : ボリュームオートメーションによる演出
(2)アタック/ボディ成分の発想を活用したコンプ&EQテクニック
アタック成分の比率が高いとタイトな音で、ボディ成分の比率が高いとファットな音になります。一般的に、タイトな音のほうがノリやすいです。ただし、『ボデイ成分が高い=音圧が高い』であるため、迫力がなくならない限界ぎりぎりまで、タイトにしていくテクニックが必要になります。
そこで、以下の図のようにアタック成分を立てて、ボディ成分を膨らませるには、コンプとEQを使っていきます。順番は①→④の順番で4項目を組み合わせて音の『タイト⇔ファット』をコントロールする。
(3)ボリュームオートメーションによる演出
ボリュームオートメーションを仕上げる前に重要なのは"フェーダー",”EQ”,”コンプ”,”タイトorファットのコントロール”ができなくてはならないということです。そのうえで以下のボリュームオートメーションをしていきます。
①曲の展開による楽器構成の変化に合わせて、バランスを取り直す
②演奏表情のデフォルメ(クレシェンドによるフィルに特に有効)
③カクテルパーティ効果による錯覚を使って、特定のパートを実際よりも大きく聴かせる
詳しい内容については、ここでは割愛させていただきます。
いかがでしたか?
私が本書を読んだきっかけは、頑張って作った曲が、モコモコとこもっていたことでした…。そして、色々と調べていくうちに、ミックスの重要性を痛感しました。
そして、この本に出会えたことで、結果的にミックスに苦手意識がなくなりました。特に、昔から音楽はセンスや才能と思ってたけのですが(事実その要素は強い)、ミックスについてはテクニカルな側面が強くて「センスのない自分でも学べばどんどんうまくなるのでは!?」と思わせてくれる本でした。まだ完璧ではないので、これから何度でも読み返したい1冊です。
ミックスに興味がある人だけでなく、DTMerにとって必見の内容です。ぜひ、皆さんも読んでみてください!
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