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8. 訛っているのはどっち?
英語の訛りについて、実は、よく質問されます。
「ニュージーランドの英語は訛っているんですか?」とか。
また、私自身も含めて、多くの日本人の方々が、自分の話す「日本語訛りの英語」にコンプレックスを持っていたりします。
「私の英語は、日本語英語だから…」と。
さて、この訛りについて、ず~っと考えていたら、「言葉に訛りのない人って誰を指すのだろう?」という疑問に辿り着いてしまいました。
実は、言葉に訛りのない人なんて一人もいなくて、誰もが、何らかの訛りを持っているのではないだろうかと。
私は、広島で生まれて、高校を卒業するまでは広島県内で育ちました。
周りが全て「広島の人」という状況では、なかなか、「…じゃけぇ~」という訛りが自分自身にあることに気づきませんでした。
ある日、スポーツニュースで、当時の広島の達川選手がインタビューに答えているのを聞いて、「ひっ、広島弁て、すっ、すごく訛っとるんじゃなぁ~」と驚いたことを覚えています。
(ちなみに、私はカープの大ファンでした。海外に出てから、野球の試合を観る事も出来なくなってしまいましたが…。大阪に住んでいた頃に、甲子園球場で、タイガースファンの人たちに囲まれて、一人、カープのメガフォンを持って応援していたのは私です。)
そうなんです。同じ訛りを持つ人の中で生活していると、その訛りに気づかなかったりするんです。
この気づいたり、気づかなかったりする「訛り」、周囲の環境などの影響を受けて、他の訛りに移行したりもするようです。
例えば、子供の頃、東京から転校生がやってくると、クラス中が「東京弁(関東弁)」になるという現象が起きたことがありました。
その他:
大阪で働いていた頃、東京から転勤してきた人は、何年経っても大阪弁(関西弁)にならなかったり。
逆に、大阪から東京に転勤した人は、大阪弁を使い続ける人と、東京弁になってしまう人とに分かれたり。
ご両親が九州の出身という大阪に住む友達は、私と話しているうちに、多少の広島弁訛りになったり。
どうやら、人は、訛りを、自分の中で無意識のうちにランク付けしているような気がします。
そうしておいて、人それぞれ、自分の意識の中で、同じランクの訛りには影響を受けたり、受けなかったり、自分の訛りより下のランクに位置付けている訛りには絶対移行しなかったり、自分の訛りより上のランクに位置付けている訛りには移行し易く、また、移行出来ない時には劣等感を感じるのではないかと分析してみました。
(ちなみに私は、大阪で8年ほど暮らした後、バッタモン大阪人として認めてもらえるだけの大阪弁は話せるようになりました。が、広島弁も捨ててはいません。広島の人と話せば、広島弁になります。
でも、一時期、広島に帰省していても「大阪弁」を話していた頃があります。)
では、英語の場合はどうでしょう。
英語は、大きく分けると、「アメリカ英語」と「イギリス英語」の二つに分けることが出来ると思います。
私が聞いた範囲では、「イギリス人はアメリカ英語を嫌い、アメリカ人はイギリス英語を気にしない又は、中にはイギリス英語に憧れる人もいる」というのが一般論のようです。
無意識のうちに、イギリス英語を、アメリカ英語より上とランク付けしている人が多いということなのかも知れません。
日本語と同じように、海外のスターがテレビでインタビューに答えているのを聞いたりすると、自分の出身地の訛りをそのまま持っている人や、イギリス英語からアメリカ英語へ、アメリカ英語からイギリス英語へ移行させてしまった人など、人それぞれのようです。
地元のテレビ局のトークショーに出た時や、大きな賞の受賞式などで、その人本来の持つ訛りが出てしまったりすることがあるのを聞くと、とても興味深く感じます。
今ならこんなにはっきり違いの分かる「アメリカ英語」と「イギリス英語」も、海外で生活を始めた頃は、私にはその違いが分からず、全て同じ英語に聞こえていました。
その頃の私の中には、「日本語英語」と「英語圏の人が話す英語」の二つしか、英語に対する訛りのレベルが無かったような気がします。
その後、アメリカ英語、イギリス英語、中国語英語、韓国語英語、ニュージーランド訛りの英語、オーストラリア訛りの英語、アイルランド訛りの英語…と訛りのレベルは増えていきました。
不思議なもので、母国語としない言葉の場合、自分の持つ訛りは、一番下のレベルに位置付けてしまいがちなようです。
逆に、日本語を母国語とする場合、「広島弁」も、「大阪弁」も、日本語を母国語としない人の持つ「訛り」に比べると、そのレベルを上だと考えてしまうようです。
これが、英語圏の人と話をする時に、自然に自分の英語に対して「劣等感」を感じたり、相手が「優越感」を持っているように見える原因ではないかと思います。
さて、皆さんからよく聞かれる「ニュージーランドの英語は訛っているんですか?」という問いに対する答えですが、ニュージーランドは移民の国で、親、又は祖父母の世代がこの国に移民して来たという人達が多いようです。
なので、自分自身はニュージーランドで生まれ育ったという人も、両親が海外から移民して来た、又は、どちらかの親が海外から移り住んで来たという場合、たとえそれが英語圏の国からであったとしても、話す言葉に微妙な訛りを持っています。
また、ニュージーランドの各地にも、その地方の訛りや方言があったりします。
日本で、親の出身地の言葉の訛りを子供が受け継いでいたり、各地方特有の訛りや方言が存在するのと同じです。
でも、訛りって、あって悪いものではないし、自分のキャラクターを表現する為に、欠かせないもののように思います。
ラスベガスで出会った大阪弁のアメリカ人ガイドさんは人気者でした。大阪で日本語を勉強していたという外国人の人は、海外で出会う日本人に大阪弁で話し掛けると、最初は驚かれるものの、すぐに打ち解けることが出来たそうです。
「日本語訛りの英語」を話す事や、「訛りのある英語」を学んだり、身に付けたりすることは、必ずしもマイナスには作用しないようです。逆に、使い方によっては、プラスに作用することもあるようです。
「コ・ニ・チ・ワ、オゲン・キ・デェス・カァ~?」と、日本語を母国語としない人達が日本語でお互いに挨拶をしていても、その訛りには気づかないことが多いようです。
私の英語にフィジー訛りがあったことも、フィジーで暮らしている間には気づかず、ニュージーランドに戻ってきてから、ニュージーランド人の子供に指摘されて初めて気づきました。
言葉の訛りって、相手の訛りに気づくことは出来ても、実は、自分自身の訛りには、自分自身で気づくことが出来ないものなのかも知れないと思います。
母国語ではない言葉を話しているのだから、きっと訛っているんだろうと感じるものの、どこが、どう訛っているのか、自分自身では分からない。
だから、必要以上に気にしたり、劣等感を持ったりするのかも知れません。
海外で、他の日本人が話している英語を聞いて、初めて、「日本語訛りの英語」というものに気づいた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「日本語英語」を指摘する英語圏の人たちも、実は、「自分自身の訛り」には、気づいていなかったりするのかも知れませんね。
そう、同じ訛りを持つ人の中にいると、その訛りには気づかなかったりするものの、どの言語にも、置かれた環境や、話す人のバックグラウンドによって、何らかの訛りは生じるようです。
考えれば考えるほど、訛り、そして方言は奥が深いことに気づいてしまい、まとまりが無くなってしまいましたが、どの言語を使う場合でも、それが、母国語かそうでないかに関わらず、誰もがその人特有の「訛り」を持っているのは確かなのではないかと思います。
その「訛り」を気にしている為に、その言語を使うことを躊躇する必要は全く無さそうです。
今回の技は:
「自分の訛りが気になる時は、相手も訛っていることに気づきましょう!」
※この記事は、2003年に発行していた「下手英メールマガジン」で紹介していた「下手な英語を使うための技」に加筆修正を加えて、現在無料再掲載中のものです。令和版は、近日有料公開予定!
下手英メールマガジン発行から20年後、「2023年の後書き」:
あ~、こんなこと書いていたんだぁ~と、当時の自分を懐かしく振り返りながら今号のメールマガジンを読み返してみましたが、内容は、今でもそのまま当てはまることだなぁと、思わず、20年前の自分に感心してしまいました。(笑)
当時より、今の方が、YouTube動画やストリーミング放送で、気軽に、より多くのイギリスやアメリカのニュースやドラマやトーク番組等を見ることが出来るようになった為、より多くの訛りに触れるという機会が増えました。
が、ある訛りを、時々耳にするくらいでは、その訛りと他の訛りとの違いが、今でもさっぱり分かりません。アメリカのボストン訛りが話題になっているのを、トーク番組等で何度か耳にしたのですが、いまだに、ボストン訛りを聞き分けることが出来ません。
それでも、イギリス英語とアメリカ英語のどちらに属するかと言われれば、ボストン訛りはアメリカ英語に属すると分かる程度の聞き分けは出来ます。
本当に、訛りって、不思議ですね。
皆さんが、少しでも、今号の復刻版メールマガジンを読んで、ご自身の英語の訛りを気にせず、自信を持って英語を使えるようになったと感じて下されば嬉しいです。