文章は読んでもらって直す。文章力を磨いてくれるのは「他人の目」
『痛い失敗体験から学んだ 愛される書籍の成功の秘訣(仮)』、今回は、自分の文書力を磨いていくれたことを振り返ります。
子どものころから書くことが好きだった私。ですが、最初から商業出版に耐えうる原稿が書けたわけではありません。いえ、むしろ「こんなに日本語ができないの、わたし!!!」という衝撃から始まりました。
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編集脳アカデミーの藤岡信代です。
電子書籍出版サポートとコンテンツビジネスのコンサルティングを行っています。
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その衝撃は、プロの校正者(以下、校正さん)に原稿チェックを受けたことで起こりました。校正さんに原稿を見てもらうと、どんなことが起こったのか? まずは赤裸々な体験からお話しますね。
デスク・編集長チェックの次にあるのは……
具体的な体験談に入る前に、雑誌の原稿が、どういう工程で掲載にいたるのか、簡単にご紹介します。
雑誌の企画は、プランに沿って取材・撮影したあと、ライターが原稿に仕上げていきます。私がいた出版社では、編集記者といって、編集者は必ず原稿を書く経験をすることになっていたので、新人編集者は、自分の担当企画の原稿を書きます。
書き上げた原稿は、デスク(その企画のチェック係)が内容をチェック。さらに、編集長が原稿をチェックします。
この段階で、企画主旨に合っていない、表現が不十分、などがあると、デスクや編集長から差し戻され、書き直しになります。
私のいた出版社では、原稿をプリントしてチェックを受けるので、デスクや編集長が疑問を感じたところに付箋をつける習わしになっていて、付箋の数が多くなると、用紙の端にビラビラビラ~っと付箋が貼り付いて、
「ピアノが弾ける(付箋が鍵盤のようになるので)」
と言われていました。
でも、この指摘は、私はそんなにショックではなかったんです。
なぜなら、内容に対する質問や構成の不備などは、自分でも気づかなかったことが多かったし、指摘をもらうことで身についていったので、「勉強になるな~」と思っていたから。
それよりも衝撃だったのが、編集長チェックのあと、校正さんの校閲でした。
校正さんは、原稿の内容が事実かどうかをチェックする校閲と、日本語の表現が正しいか、印刷に間違いがないかをチェックする校正の、2つの役割があります(校正だけを行う場合もあります)。
私のいた出版社には、社内に校正者があり、校閲と校正の両方をしてくれました。
まさか、「てにをは」から直されるとは?!
編集長チェックが終わり、ホッとしたのも束の間、校正さんから「ちょっとお時間いいですか?」と呼びかけがあります。
校閲と校正の結果を、一つ一つ確認する作業があるのです。
原稿のプリントには、すでにたくさんの赤字が入っています。
そこに、さらに付箋が貼られていて、鉛筆書きでなにやらメモが。この赤字と、付箋&鉛筆メモの確認を、一つ一つ、突き合わせていくんです。
いま思い出しても、うなだれちゃうくらい、日本語を直されました。
多かった直しを書き出してみると、
・「てにをは」の直し。
特に、「に」「へ」の使い方はよく指摘されました。あと、「も」の多用にもチェックがよく入りました。
・主語に対して、述語が正しい形になっていない。
特に、受け身や使役の述語がからんでくると、間違いが多くなります。
・接続詞の使い方。
文章を書き慣れていないと、「しかし」でなんでもつないでしまったりします。接続詞は意外に種類が多く、正しい使い方が決まっています。
・語順。
日本語は、主語と述語の間に、目的語と、それにともなう形容詞や副詞などを入れていく構造なので、語順によって「わかりやすい」かどうかが決まります。
文章で説明してもちんぷんかんぷんですが(笑)、これらを一つ一つ確認されていくと、
「あなた、日本語がちゃんとわかっていますか?」
と言われているようで、本当に情けなくなったものでした。
いちばんの問題点は、飛躍があること
日本語の文法を直されるのは、ショックではありましたが、「次は、絶対に間違えないぞ」と意識して、身につけることができました。なので、ちょっと厳しめのドリルをやっているようなものでした。
もっと衝撃だったのは、自分の文章に、飛躍や省略があることを指摘されたことです。
文章の飛躍や省略というのは、自分にはわかっていること、理解できていることを、文章化しないで、次の文章へとつないでしまうことです。
「ここ、つながりがよくわからないのですが……」
「ここ、文章が飛んでいます」
「ここには、こういう文章が入りますか?」
何度、こんな質問を受けたことでしょう……。
自分にはわかっていることは、何度、見直しても気づかないことが多いのです。でも、他人の目から見たら、明らかに説明が足りていない。思い込みで文章が展開している。
そう指摘されて初めて、私は、自分の思考の癖(説明を省略しやすいところ)と、文章の癖(これも省略しやすいところ)を自覚することができました。
人にはそれぞれ、得意な思考パターン、ラクな思考パターンがあります。
文章もしかり。書きやすい表現のパターンがあるんです。
一人で内観するときや、日記を書くときには、まったく問題なのですが、このnoteの記事のように、誰かに向けて公表するときには、その「誰かの目」でわかりやすく書くことが必要です。
誰が読んでも、わかりやすいように。
私は、自分の文章力を磨いてくれたのは、プロの校正者さんたちだと思っています。
客観的に見て、誤りや不足を指摘してくれる。
より良い表現に導いてくれる。
本当にありがたい。貴重な経験をさせていただきました。
書く力をつけるのは、日々、発信することで培われていきますが、より伝わる文章にするための力は、「他人の目」が磨いてくれます。
「他人の目」を意識して書くこと。
そして「他人の目」をお借りして、忌憚ない指摘をもらうこと。
そんなことも大事かなと思っています。
●著書
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