無給で働かせてください! 山中りんたそ
世間では教員の長時間労働が問題視され、教員のなり手が少なくなってしまっているというニュースを目にする機会が増えている。
実際に中学校に勤務している私も長時間労働の実感はあり、勤務管理表の時間外勤務累計時間が赤くならない(時間外勤務が80時間を超えると警戒を示すため赤くなる。ただ赤くなる。)よう気をつけながら、労働に従事している。
時間外の長時間労働というだけでも問題であると思うが、さらに問題なのが教員に時間外手当、つまり残業代がでないということである。
残業代は出てはいるのだが、固定残業代として基本給に4%上乗せされている(2024年8月現在)。残業代の割合については絶賛議論中なので、ぜひ動向を注視していただきたい。
そして中学校教員の場合、時間外勤務が多くなってしまう原因の1つとして”放課後や休日の部活動指導”がある。
放課後は最長〜18:00。土日はどちらか、大会がある場合は連日の勤務になってしまう。好きで行っている方もいるが、一方で中学校の文化として、やらざるを得ない現状もある。私の場合、6:30〜12:30が休日のデフォルトである。
と、ここまでが長いイントロであり、ここからが今回の主張である。
私は、休日の部活動を指導するたびに、悲しみを覚えることがある。内省してみると、どうやら「給料」が関係しているように思われる。
休日の部活動手当てとして、固定残業代とは別に1日2700円の給料が支給されている。
時給ではなく「日給」のお話しである。
私はこれについて、産業革命以降、労働条件について雇用者と戦ってきた先人たちの努力を蔑ろにしているとしか思えないのである。
そもそも労働とは、労働者の人生の貴重な「時間」を金銭と「交換」する活動である。
この考え方を適用している私は、休日の部活動指導について、教育委員会から
「おまえの休日の価値など、1時間450円程度で十分だ。」
と言われているような、人間としての尊厳を認められていないような感覚になるから、悲しくなるのである。
これについて、さらに考えを進めてみる。すると、休日の部活動指導に対する等価として金銭を受け取らない方が、人間としての尊厳を保てるのではないかという考えに至った。
もちろん、少しでもお金をもらえたら嬉しいし、今の2700円が無くなったらそれはそれで嫌なのだが、精神衛生上どちらの方がよろしいかと考えたら、間違いなくボランティアとして部活動に関わる方がよろしい。
さらに、脳科学者の池谷祐二さんの論をお借りすれば、労働意欲の向上にはボランティアの方が適切であるようである。私たちは、一般的に行動の前に思考があるように認識しているが、どうやら脳は思考の前に行動がくることがあるらしい。例として有名なのが「吊り橋効果」である。あまりにも長くなってしまうので、吊り橋効果の詳細については割愛するが、この理論を部活動のボランティアに適応すると、
「報酬がないのにやっているということは、楽しいからやっているに違いない。」
と、脳が錯覚するはずである。
金銭を受け取ると、労働の動機がなけなしの「お金」になってしまう。部活動のボランティア化が精神衛生上よろしい。もちろん、休日に労働しないことが精神衛生上一番ではあるが。
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