暑中お見舞い、牛乳瓶 秋豆絹
7月初旬。秋葉原駅のホームはこれ以上ないほどの彩度を放ちながらも、ぬるま湯のプールに浸かっているような、行き場のない嫌な熱気を帯びていた。ここに立っているだけで体力を吸い尽くされそうなくらいの暑さだ。
電車を待つ間、へばった頭と体で、ぼんやりと向こう側のホームを見つめていると、牛乳瓶を持った男性が階段を降りてホームに入ってきた。温まりすぎた空気と湿気は、もれなく日差しに当てられて光の粒となり、その大量の粒が風景の輪郭を曖昧にしている。
そのまま男性は頭上の時刻表を気だるそうに見つめると、キンキンに冷えた牛乳をグッと流し込んだ。その身体は一瞬、引き締まったように思えた。
これはいい夏を見た。
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