夢の中で電車を降り損ねたところ 秋豆絹
これは最近見た夢の話。晩秋の浮かない空だった。
私は東京から宇都宮線の電車に乗って、目的地に着くのを待っていたはずだった。
しかし、いつの間にか乗り過ごしてしまっている。私が座っているボックス席から見える窓の景色は、まだ日が落ちる時間ではないのに不安になるような暗さだ。これ以上乗っていても仕方がないので、とりあえず下車する。
私が見る夢は、会社に遅刻したり、デスゲームに参加していたり、なぜか重苦しいものばかりだ。夢を見ているという意識はないものの、また嫌な気分になるのだろうなと辟易し始めていた。
どうやら栃木県まで来てしまっていたようだ。下車したのは稲城駅という所だった。(現実の稲城駅は東京都にある。非常に夢らしい整合性のなさだ。)
改札を出て駅公舎の周りを見渡すと、見たことのない木が生えていた。その木は葉の面積がとても大きく、丸みを帯びている。
何だか物珍しいな、と思うと同時に、植物が好きな友人のことが頭に浮かんだ。
緊張の糸が思わずほどける。後で見せよう、そう思ってスマホを取り出しパシャパシャと撮っていると、なんと、その友人にばったり出くわした。この駅に珍しい木があると知り、ここまで来たのだと言う。
ひとしきり驚き合うと、せっかくだからということで、そのまま2人でドライブ旅行に興じることとなった。
たまにはいい夢を見ることもあるようだ。
いや、友人達や私を支えてくれている方々の存在が、夢の中の私をも救ってくれたのかもしれない。