目的のない散歩=人生
”Tabete”というフードロスアプリをたまたま見つけた。
最近私はもうなんかクレジットカードを見知らぬアプリに登録するのも抵抗がなくなっているので、そろそろ詐欺に引っかかりそうだなと勝手に警戒している(Tabeteは全然詐欺じゃない)
平日休みということでやることもなかったので、早速ダウンロードしてからフードロス削減の旅へ出かけた。Tabete内では、これを「レスキュー」と呼称されている。
こういうアプリを使用する時、「東京に住んでいる」というのは、かなりアドバンテージになると思う。どんなサービスもだいたい東京から始まる。東京ほど店が密集している地域などないだろうし、駅によっていろいろな顔がある。
地方には選択肢がなかったり、そもそも店の数がなければロスもない。フードロス割引大好き人間の私としては、私のために作られたようなアプリと言っても過言ではない。
東京というのは、需要がたくさんあるぶん、供給もある。その需給バランスが崩れた時、フードロスは起こる。例えばGWで東京から一斉に実家へ帰って人がいなくなったりしたとき、普段とは需給が崩れる。そして私のような人間が喜んで半額シールに群がっていく。
私の実家の近くのデイリーヤマザキはフードロス対策で、夜はパンをまとめ売りしていた。そこにまるで光に誘われる甲虫のように、私含むフードロスファン達が集まっていた。
中には変なババアがフードロスの看板を店員が出すのを今か今かと車の中から変態のようにずっと監視して、看板が出た途端、棚一列をまとめ買いするような暴挙に出ていた。
結局、フードロス=貧困みたいなイメージもあるので、治安が悪くなる感じはある。このTabeteのアプリはお店が出している分をあらかじめ何個買うか予約してからお店へ行くので、他の客とバッティングするようなことはない。
スーパーの割引シールでさえ、店員の後ろをストーカーする客が多い。私はそこまでしないが、値引きされたものを中心に今日の献立を考える。
Tabeteのアプリを見てみると、うちの近所とは言えないが、何駅か先の不二家でフードロスがあがっていたり、数十キロ離れたところまでリストに上がっている。チェーンや個人店まで関係なくあったりする。
これからもどんどんお店は増えていくらしい。それならきっと自分の家の近所でも増えていくかもしれない。少なくとも池袋では何件か確認しているし、パン屋やカフェなんか腐る程あるので、フードロスが出まくるに決まっている。
ただ、このアプリで提供される商品は、フードロスと呼ぶのか、そもそもこの割引前提の価格設定をしていて、多くのお客様に楽しんでいただくためのマーケティングなのかはわからない。とりあえず自分が安いと思ったら買えば良いと思う。
不二家などモンブランが4つで980円という破格だったが、定期的に半額セールはフードロスとか関係なくやってそうな感じはあった。ただ、さすがに一人で4つはきついし、モンブラン買ったらそのまま家にすぐ帰んないと駄目だなということで、考えた結果不二家は行かないことにして、そのかわりに森下駅付近の小ぢんまりしたどら焼き屋でどらやきが5個500円だったので、初レスキューはそれにした。
休みの日は完全なウォーカーになる自分としては森下駅という絶妙に行く用事のない駅に丸一日かけて日帰りで歩くことにした。片道12キロくらいで往復24キロくらいだが、ウォーカーの私にとっては、「あぁ、10時に出たら昼飯食って、19時には帰れるかな。」と、特に微動だにしない距離である。
大体、2時間半で10キロ歩けるのだが、信号もあれば坂や、道を間違えることもあるので、さすがに休みなくぶっ続きで歩くようなことはしないし、それだと楽しみもないので、途中にある定食屋に入ったり、コンビニのイートインのWiFiを使ってマッチングアプリをやりまくったりしている。
ラジオは基本的に垂れ流しているので、何本もRadikoのタイムフリーを消費できる。
こんなどうでもいいような用事でもあれば、外に出るきっかけになるので自分としては嬉しい。
たった1000円とか数百円の割引のためにそんな何時間も歩いたら時間の無駄だろとか、普通の人は思うかもしれないが、私が買っているのはどら焼きと、その店を訪れた経験やTabeteが無ければ買おうとも思わないものを食ってる機会を貰っていると言える。そしてこれだけ歩いたらさすがに結構体力がつく。そして夜ぐっすり寝れる。
旅行にしろ何にしろ、決めた目的にしか興味がない人がいる。不確実性を楽しめなかったり、目的が達成されないと失敗しているような感覚に陥るのは、人生を楽しめているのか疑問ではある。
そんな面白くない感覚のままの人生だから、面白くない仕事を続けられるんだろうと、勝手に下に見ている。人生何が起こるかわからないことを楽しめないと損だろうし、それを自分で引きに行きたい感じもある。
狙ったとおりに狙った的に的中してなにか面白いだろうか。スケジュール通りに事が運んで、それでなんか心に刻まれることはあるんだろうか。
散歩というのは、現代ではかなり無駄な行為というか、電動スクーターがこれだけ流行るのだから、散歩なんかする人はあまりいないかもしれない。
ある意味、これだけ時間を無駄にできるのだから贅沢である。電車なら20分もかからないところをわざわざ1時間かけていったりすることで、途中にある駅遠のレストランに出会える。
もう歩くのが疲れるとかいう概念もほぼなくなっている。基本的に歩くことを前提として移動しているし、歩くことが何も苦じゃない。レストランに限らず、ここにこんな良い公園あったんだとか、カフェでもなんかよくわからない施設でも、歩くことで発見が多い。
歩くのは足腰だけでなく、脳にも良いと言われている。私は日に当たりたいから、散歩するというモチベーションもある。
出勤してオフィスに閉じこもって、ずっとパソコンを見て夜に帰っても、結局は日に当たっていないことがほとんどだと思う。日に当たらないと気持ちが鬱になるし、散歩というのは無心になれる。
仕事ばかりでスポーツもやらない人生になってしまったので、散歩が唯一の運動と言えるかもしれない。
散歩は一人で街中を誰とも話さずに彷徨っている。それがなんだか心地よいこともある。寂しいという感情は常にあるにしても、人の出会いもなければ人混みの中を颯爽と一人で歩いている感じが、なんとなく自分の人生を表現しているような感覚にもなる。
自分が一体、何者なんだろうかと、周りの人の様子を見ながら東京中を練り歩いている。自分のお気に入りの場所を見つけては、自分の人生がこれから豊かになるのか考える。
孤独に歩き続けている感じが、本当に自分の人生であって、周りを見ても何も共感できないというか、楽しそうにしている人もいれば、死にそうな顔の人もいる。
色んな人がいるなぁと確かめながら、どんどん歩いていく。私のような人間がいつか幸せを感じられる日が来るんだろうか。
散歩が目的というよりは、何かを見つけたいから散歩をしているという感じである。自分の人生が一気に急転するような、そんなものはないんだけども、少しでもヒントを見つけたい。
楽しそうに街にいる人達はどんな人生を歩んできたんだろうか。小学校や中学校までそんな人生に違いはなかったはずなのに、なんで大人になるとこんなにも面白くない人生と充実した平和な人生に分かれてしまうんだろうか。
ドラクエのようにパーティーを組んで、いつか散歩できたらいいなぁ
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