フリーランスには「メンタルを鍛える」より「しなやかメンタル」を育てた方が良い理由
私は現在、地方都市に住みながらフルリモートで仕事をしています。
気がついたらフリーランス歴も20年になってしまいました。
思い返すと、フリーランスになって良かったこと、たくさんあります。
通勤時間から解放されて、家族との時間が増えた
好きな時間に好きな場所で働けるようになった
仕事の選択肢が広がった
自分のペースで仕事ができるようになった
収入が上がった
etc...
でも、フリーランスならではの悩みや不安も同じくらいたくさんあります。
フリーランスの皆さんならきっとうなづくはず。
「この仕事、納期に間に合うかな...」
「新しい技術についていけるかな...」
「今月の収入、足りるかな...」
「クライアントとのコミュニケーションがうまくいくか心配だな...」
「自分の価値を正当に評価してもらえているかな...」
「体調を崩したらどうしよう...」
特に、メンタル面での不調は、生産性の低下を招くだけでなく、重症化すると「フリーランス失敗した...会社に戻ろうかな...」なんて思ってしまうこともあるかもしれません。
「メンタルを鍛える」は悪手
フリーランスで成功するためにメンタルを鍛えよう、交渉力を鍛えよう、そう思っているとしたら今すぐに考え方を変えた方がいいです。なぜなら、メンタルの強さや交渉力は一朝一夕で身につくものではないからです。
大切なのは、メンタルや交渉力といったスキルを日々の中で地道に鍛えていくこと。そして、時には弱音を吐いたり、助けを求めたりすることも必要です。
私自身、リーマンショックとコロナショックで半年以上仕事がない状態を2度経験しています。逆に、中国とヨーロッパそれぞれ現地の会社に招聘されジョインした経験も2度あります。
我ながらなかなか波の激しい人生だと思っていますが、そんな私でも、ADHD(注意欠如・多動障害)の診断があり、正直メンタルはそれほど強くないです。
最初の頃こそ私も「メンタルを鍛えよう」と思っていたこともありましたが、目まぐるしく変わる世界情勢、家族の病気、自分の体力の衰えなど、世の中はどうにもならないことだらけだ、ということに気づきました。
数年前、家族のサポートのため認知行動療法(CBT)に出会ってからは、CBTの考え方を応用することで、比較的メンタルが安定した状態でフリーランスを続けられています。
今回は、 「フリーランスの隠れた必須スキル、しなやかメンタル」というテーマで、認知行動療法(CBT)の考え方をご紹介しつつ、あなたのフリーランスライフのヒントになればと思います。
認知行動療法(CBT)とは?
認知行動療法(CBT)ってそもそも何?と思われる方もいるかもしれません。CBTについて知っていても、メンタルヘルスに問題を抱えている人向けのものだと思っていませんか?
確かに、CBTはうつ病や不安障害など、様々な精神疾患の治療に用いられています。でも実は、健康な人にとっても役立つ考え方やスキルが詰まっているんです。
私自身、CBTを学ぶまでは、ストレス対処といえば「ポジティブシンキング」ぐらいしか思い浮かびませんでした。
「ストレスを感じたら、嫌なことは考えないようにしよう」
「イライラしたら、深呼吸してリラックスしよう」
もちろん、こうした方法もストレス対処としては有効です。でも、CBTの視点からすると、少し物足りないんです。
なぜなら、私たちのストレス反応の源泉は、外部の出来事ではなく、自分の「受け止め方」にあるから。
「納期に間に合わなかったらクビになる!」
「新しい技術を学べなかったら時代に取り残される!」
こんな考え方をしていると、いくらポジティブシンキングを心がけても、根本的な不安は消えないですよね。
CBTが提案するのは、こうした「認知の歪み」に気づいて、より柔軟でバランスの取れた考え方に修正していくこと。
そのために、CBTではまず「自動思考」を意識することから始めます。
CBTの歴史
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy;CBT)は、1960年代にアメリカの精神医学者アーロン・ベックによって開発された心理療法です。
現在では、うつ病や不安障害、摂食障害など、様々な精神疾患に対する効果が数多くの研究で実証されており、科学的根拠に基づいた心理療法として世界的に認知されています。
アメリカ心理学会のDivision 12(臨床心理学部門)では、経験的に支持された心理療法のリストを公表していますが、そのトップに挙げられているのがCBTなんです。
また、イギリスの国民保健サービス(NHS)でも、うつ病と全般性不安障害への第一選択の治療としてCBTが推奨されています。
このように、CBTはエビデンスに基づいた信頼性の高いアプローチだと言えます。
CBTの考え方は健康な人にこそ必要
でも、別に精神疾患がなくても、CBTの考え方は私たちの日常生活に役立てられるんです。
なぜなら、CBTの基本的な考え方は、私たちの「感情」や「行動」が「認知(考え方)」から大きな影響を受けている、というシンプルな法則性に基づいているから。
例えば、納期が迫っているのに全然進んでいない仕事があるとします。
その時、「このままじゃクライアントに怒られるかも...」「信頼を失ってしまうかも...」などと考えると、不安になってどんどん集中力が低下し、余計に手が付けられなくなってしまいますよね。
でも、「今できることをコツコツやろう」「多少遅れても誠実に対応すれば、きっと理解してもらえるはず」と考えられれば、落ち着いて作業を進められるはず。
ポイントは、同じ状況でも、どんな風に受け止めるかで、その後の感情や行動が大きく変わってくるということ。
でも実は、私たちは無意識のうちに「非合理的な考え(=自動思考)」にとらわれやすい傾向があるんです。
「絶対納期に間に合わせないと!」
「このままじゃ信頼を失ってしまう!」
「完璧にできないなんてダメなやつだ!」
こんな極端で融通の利かない考え方に支配されると、気持ちは不安や焦りでいっぱいになり、冷静で適切な行動が取れなくなってしまうんですね。
CBTでは、こうした「認知の癖」に気づいて、より柔軟でバランスの取れた考え方に修正していくことで、感情面や行動面の改善を目指します。
もちろん、すぐに考え方を変えるのは簡単ではありません。
でも、古くからの諺にもあるように「千里の道も一歩から」。一つ一つの小さな気づきの積み重ねが、やがて大きな変化を生み出すんです。
CBTを活用したセルフケア
CBTの考え方を日常生活に活かすためのファーストステップは、「自動思考」を意識することから始まります。
自動思考とは、ある出来事に対して瞬間的に浮かんでくる考えのことで、「また失敗しちゃった...」「きっと上手くいかないに決まってる...」といったネガティブで極端な内容であることが少なくありません。
こうした自動思考をあえて言語化し、自覚的に吟味していくことが、CBTの第一歩なんです。
そのためによく使われるのが、「自動思考記録」という方法です。
自動思考記録では、日々の出来事について、次の3つの観点からメモを取っていきます。
Activating Event(出来事):どんな状況だったか
Belief(信念):その時どんなことを考えたか
Consequence(結果):その結果、どんな感情が生じたか、どんな行動を取ったか
例えばこんな感じです。
A(出来事):納期が1週間後に迫っているのに、まだ作業が進んでいない
B(信念):「このペースじゃ絶対に間に合わない」「遅れて信頼を失ってしまう」
C(結果):焦りと不安で集中できず、ますます作業が手につかなくなった
こうしてみると、「絶対」「〜してしまう」といった極端な表現や、最悪の事態を想定するような悲観的な考え方が見えてきます。
自動思考の記録は、特に最初のうちは面倒に感じるかもしれません。
でも、習慣づけていくと、段々と自分の思考パターンの「クセ」が見えてくるんです。
「完璧主義に陥りやすいな」
「失敗を恐れる気持ちが強いな」
「相手の反応ばかり気にしてしまうな」
自分の思考の傾向が分かってくると、「もう少し柔軟に考えられないかな?」というように、クセを修正するためのヒントも見えてきます。
例えば、先ほどの例でいえば、
「まだ1週間あるんだから、できる範囲で優先順位をつけて進めよう」
「ちょっとぐらい遅れても、誠意を持って対応すれば、理解してもらえるはず」
こんな風に考え方を切り替えられたら、きっと気持ちも軽くなって、前向きに作業に取り組めるはずです。
特にフリーランスの場合、すぐに相談できる上司や同僚がいないので、ついネガティブで極端な考えにとらわれてしまいがち。
だからこそ、自分の思考のクセに気づいて、意識的にバランスの取れた見方を探っていく習慣が何より大切だと思うんです。
もちろん、すぐに思考パターンを変えられるわけではありません。
長年の癖を修正するには、相応の時間と意識的な努力が必要です。
それでも、CBTのエッセンスを自分なりに実践していけば、ゆるやかにではあっても、きっと確実に変化は訪れるはず。
大切なのは、1日1日を大切に積み重ねていく「継続する」ことだと私は考えています。
まとめ:「強い」メンタルより、「しなやかな」メンタルを身に着けよう
さて、ここまで認知行動療法(CBT)の考え方をご紹介してきました。
改めて振り返ってみると、CBTのエッセンスは以下の2点に集約できるかもしれません。
感情や行動は、物事の受け止め方(認知)に大きく影響される
ネガティブで極端な考え方(自動思考)の「クセ」に気づき、より柔軟でバランスの取れた見方を意識的に探る
メンタルが弱い自分なんてフリーランスには向いていない、なんて思っていませんか?
でも、大丈夫。誰だってメンタルの波はあるものです。むしろ、メンタルの強さよりも大切なのは、自分のメンタルと上手に付き合っていくスキルなのかもしれません。
認知行動療法(CBT)は、「考え方のクセ」に気づいて、より合理的でバランスの取れた思考を身につけるための powerful(強力)な手法です。
その第一歩は、「自動思考記録」などで、自分の思考パターンに意識を向けることから始められます。
私自身、ADHDを抱えていて、正直、メンタルは人より弱い方だと思います。
それでも、CBTのスキルを活用することで、20年間フリーランスを続けることができています。
もちろん、完璧にマスターしているわけではありません。今でも、ネガティブな考えにとらわれてしまうことは少なくありません。
でも、自分の「クセ」を知っているおかげで、ネガティブ思考に振り回されることは少なくなったように思います。
そう、メンタルの強さよりも、自分のメンタルと上手に付き合っていく「スキル」を磨いていくことが大切なんです。
今回ご紹介したCBTのエッセンスを生かして、ぜひあなたなりのメンタルセルフケア術を見つけてみてください。
最初のうちは難しく感じるかもしれません。それでも、一歩一歩、実践を積み重ねていけば、きっと、今よりずっとラクに、前向きに仕事に向き合えるようになるはずです。
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