フリーランスの「収入の不安定さ」と上手に付き合う【CBT理論】
コロナ禍でリモートワークが普及し、在宅でフリーランスとして働く人が増えています。自由な働き方ができる反面、収入の不安定さはフリーランスにとって大きな悩みの種です。
私も20年のフリーランス生活で、収入の不安定さは嫌というほど実感しています。私なりにたどり着いた、フリーランスの不安定な収入と付き合う方法について紹介します。
フリーランス=収入が不安定
フリーランスは会社員と違い、安定した毎月の給与がありません。これはフリーランスが自由を手に入れるために犠牲にした、代表的なものの一つですね。
収入は仕事の量と質に左右されるため、常に不安定です。この不安定さがメンタル面に与える影響は小さくありません。
私自身、約20年のフリーランス生活で財務危機に陥ったことは何度もあります。リーマンショックやコロナショックで仕事が途絶えたり、運転資金(貯金)がショート寸前という経験もしています。
その時は意外と乗り越えられるものですが、「あんな思いは二度と嫌だ」という感情が逆にプレッシャーをもたらすことがあると実感しています。
そう思っているのは私だけではないようで、事実、経済産業省の調査(2020)によると、フリーランスの約6割が「収入が不安定」と感じています。
また、日本フリーランス協会による「フリーランス白書2024」でも、現在の収入に「満足していない」と回答した人が全体の42.2%に上っていることが示されています。
収入の不安定さは多くのフリーランスに共通する悩みと言っても言い過ぎではないようです。
収入プレッシャーが長引くとメンタルに悪影響が
収入が不安定だと、将来への不安から常にストレスを感じてしまいます。このストレスが長期化すると、メンタルヘルスに悪影響を及ぼします。
気をつけておきたいのは、適度なストレスはペースよく仕事を進めたり、成長の原動力になったりするので、ストレス=悪者という考え方は良くありません。
モチベーションの低下、自信の喪失、燃え尽き症候群など、深刻な問題を引き起こしかねません。長くフリーランスを続けたいなら過度なストレスや慢性的なストレスは避けるべきでしょう。
収入プレッシャーに関連する自動思考
収入プレッシャーに悩むフリーランスの多くは、気が付かないうちにネガティブな自動思考に支配されてしまっています。
例えば、「十分な収入が得られない」「安定した仕事がない」「自分の能力に見合った報酬を得られない」などです。
私自身、フリーランス経験が浅い頃には、この自動思考ゆえに仕事を断らずに詰め込んでしまう→睡眠不足→ミス誘発→メンタルが追い込まれる、という悪循環を幾度も経験しています。
また、仕事を詰め込んでしまうと、目の前の仕事をこなすことであくせくしてしまい、将来への投資がおろそかになります。これでは、目の前の小さな獲物ばかりを追いかける猫のようなものです。
目先の利益に囚われ、長期的な視点を見失ってしまうのです。今はよくても、数年後にまた同じように収入プレッシャーに襲われることになります。
長期的なキャリアビジョンがないと、いつまでたっても低単価の仕事を長時間こなす生活を続けることになります。若いうちはいいですが、年齢による体力の衰えや、長期的な疲労の蓄積がじわじわとメンタルを蝕みます。
収入プレッシャーに関連する自動思考を突き止める
ということで、収入プレッシャーに対抗するにはまずは自動思考への対処法をきちんと知っておくことが大切です。
まず、そもそも自動思考に気づくことが簡単でないことを知っておきましょう。自動思考は無意識に浮かぶ考えなので、その存在に気づくことすら難しいのです。
自動思考に気づけるようになると、自分の行動がいかにこの無意識レベルの考えに支配されているかを知って驚くはずです。まずは自動思考を気付ける(捕まえられる)ようになりましょう。
自動思考に気づくためには、自分の思考を客観的に観察する習慣を身につけることが大切です。思考が浮かんだ時に、「これは自動思考かもしれない」と一度立ち止まって考えてみると良いでしょう。
自動思考に気づくことは、メンタルヘルスを改善するための第一歩です。自動思考に気づき、それに適切に対処することで、私たちは収入プレッシャーに負けない強いメンタルを手に入れることができるのです。
自動思考の捕まえ方について詳しく:
収入プレッシャーに関連する自動思考に対処する
自動思考を捕まえられるようになったら、証拠を検討してその自動思考に対処していきます。
ここで注意したいのは、この「自動思考の置き換え」は単なるポジティブシンキングとは全く異なるということです。
ポジティブシンキングは単純で分かりやすいのですが、現実逃避に繋がったり、失敗からの立ち直りが難しいという致命的な弱点を抱えています。
一方、自動思考の置き換えは、ネガティブな考えを受け入れつつ、現実的で根拠がある考え方に置き換えていく、長期的な問題解決を目的とした手法です。
例えば、過去の成功事例を振り返り、「自分にもできる」というポジティブな思考に切り替えることができます。
また、収入の低迷を一時的な状況だと捉えることも重要です。「この状況はいつまでも続くわけではない」と柔軟に考えられるようになることが、プレッシャーの軽減につながります。
さらに、フリーランスになった理由を忘れないようにしましょう。私の場合はお金のためではなく、時間や場所からの自由、家族と時間を過ごすためです。お金だけが仕事の価値ではないことを自分に言い聞かせることが重要ですね。
これは、マラソンランナーがゴールを目指して走り続ける姿に似ています。途中で壁にぶつかることもありますが、なぜ走っているのかという理由を忘れずに、粘り強く前進し続けるのです。
収入プレッシャーを乗り越えるためのアクション
自動思考への対処と並行して、収入プレッシャーを乗り越えるための具体的な行動も必要です。
まずは、複数の収入源を確保することです。一つの仕事に依存しすぎると、その仕事がなくなった時のダメージが大きくなります。リスク分散のためにも、複数の収入源を持つことが賢明です。
これは、投資信託などで分散投資をするのと同じ発想です。投資の分野では「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があります。
それと同じように、メインのクライアントの他に、サブ1、サブ2というように幾つかの収入源を持っておくなら、収入プレッシャーに上手に対処できるようになります。
注意:収入源の分散を意識しすぎて「卵をカゴからあふれるほどに」盛ってしまわないよう注意しましょう。何ごとも、適量が大切です。
また、緊急時資金を準備しておくことも大切です。収入が途絶えても数ヶ月は生活できるだけの資金があれば、心理的な安心感が得られます。その期間をスキルアップや自己投資に使うこともできますね。
注意:スキルアップ沼・最新情報沼にはまってしまわないように。時間は有限なので、全ての情報を追い掛けるのは物理的に無理があります。やみくもにスキルアップしても、仕事に繋がらなければ無駄遣いになってしまうことも。
収入プレッシャー管理を日常に取り入れる
収入プレッシャーとうまく付き合っていくには、その管理を日常的に行うことが不可欠です。定期的な収支の見直しと財務目標の設定を習慣化しましょう。
私の場合、固定費は極力減らし、定期的に見直すことを習慣化しています。その代わり、変動費はけっこう許容範囲を広くしています。メリハリが大事ですね。
また、付き合いを増やしすぎないこと、「消費」を「投資」だと勘違いしないこともポイントです。その支出が「投資」だと思っているのであれば、費用対効果を定期的にチェックすることが重要です。
ダイエットと同じで、体重計に毎日乗ることが習慣づけの第一歩になります。収支を定期的に見直し、財務状況を把握することで、無駄な支出に気づき、改善のための行動を取ることができるのです。
また、収入チェックの過程でネガティブな自動思考に気づいたら、証拠を検討したり別の解釈を考えたりして、バランスの取れた考え方ができるようになりましょう。
まとめ
収入の不安定さとそれに伴うプレッシャーはフリーランスにつきものですが、しなやかなメンタルと適切な収入管理があれば乗り越えることができます。
それには、収入プレッシャーに関連する自動思考を認識し、それに適切に対処することが重要です。そして、自動思考への対処と前向きな行動を組み合わせることで、収入プレッシャーをコントロールできるようになります。
この習慣を継続的に実践するなら、フリーランスとしてのレジリエンス(ストレス耐性)を高めていくことができるはずです。竹が強風に耐えて生き抜くように、柔軟に状況に適応しながら、自由なフリーランス生活を楽しみたいものです。
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