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いまさら【ドラマ】「HOTEL -NEXT DOOR」感想文(長い)

HOTELといえば

「姉さん、事件です」
タカシママサノブが、ニカッと笑ってる顔が思い浮かぶドラマのイメージでした。
一話完結の、ある種、時代劇っぽい。
基本、ミステリー+人情ばなしという、日本人みんな大好きなタイプのドラマでしたよね。わたしも割と見てました。
ホテルがまるで一つの街のように、診療室をはじめ、あらゆる施設が揃っている描写も好きでした。ロマンを感じました。

観ていた当時の子どもの頃は言語化しづらかったけど、おもてなしに身をゆだねていられる「壮大なる引き籠り空間」……が良かったのかな。別世界感。チートな異世界転生っぽい?かも。

原作マンガは読んだことがなくて、これを機にごく最初の方だけ(なにせ全三十巻以上あるから)読みましたが、何十年も前のマンガだというのに、基本的に全然古びてない話で驚きました。
ただ、原作の最初の方は、それほど「人情噺」の要素は強くなくて、ホテルをある種「サラリと撮影した」ような群像劇的な話に見えます(「ゴルゴ13」みたいな?)。

ディーン・フジオカさま

ディーンさま。
一世を風靡しましたよね。

カッコいいことはもう、認めざるを得ない……溜息モノですわ。
最近は、日本での露出強めなシーズンもひと段落…していたのでしょうか。
実はディーンさまがブレイクしたドラマも、わたしは全然未履修でした(そもそも、リアルタイムで「テレビ」をつけない生活がもう十年、二十年と続いていて)。
国営放送系等は、ほぼネット話題の知識程度しかない状況で。

なので、ディーンさまが、どんな演技をなさるとかもほとんど知らずに視聴開始!

表情ないよ

上にも書いたとおり「HOTEL」――ホテル・プラトンのお話と言えば、「人情モノ」要素、必須ですよね。

そこに、ドッチャクソハンサムが登場。
しかも役柄としては「ファントム」のふたつ名がある謎な人物。
能面のような顔で現れてきて、なんか最初は物凄い違和感が。

平成末期から顕在化し、令和にも引き続き変わらぬ状況。
日本への外国資本超高級ホテルの進出問題。日本のオーセンティックなブランドホテルの老朽化問題。
これを意識した舞台設定なので、インターナショナルな価値観と能力の持ち主であるディーンさま演じる総支配人三枝の「違和感」は、当然、演出として狙いどおりのものなのでしょうが。
肩の凝らないライトミステリー人情ばなしを、旧ドラマから、なんとなく期待してしまう一視聴者としては、「うーん?」と思う、第一話の最初の15分でした………が。

実は人情派だったディーンさま・再設定も良い・老舗ホテルの魅力

いやあ、さすがWOWOW。プロの作ったドラマでしたね。
絶妙なところで、涙的展開がすすすっと入ってきます。
キモチよーく見させてくれます。
ホントに上手な脚本だ(なんとなく、曖昧なままの伏線もあったように思いますが、いいんです。基本、時代劇ですから)。

ホテルの外観に、マンガ原作に描かれているシンボル的なモニュメントをキチンと足していたり、マンガ原作のエピソードや登場人物を上手に埋め込んで、物語のエンジンとしていたりするところも、「きっちりお仕事してるね」っていう感じ。

ホテルの中で活躍する各種スペシャリストたち(コストカットによる人材育成の寸断やリストラ等でもはや絶滅危惧種のひとびと…プロ中のプロの客室清掃係。施設のすべてを知り尽くした整備部門。神業のランドリー職人等)の仕事ぶりも、チラチラッと(深い描写ではないにせよ)見せてくれるところも良かったですね。
そんなホテルなど、確かに今や、このドラマのロケ地となっている「ニューオータニ東京」しかないんだろうなあ。
とはいえ、あのホテルのブティック街の寂れ方はちょっと悲しいですね。
ただ、やっぱり「トレーダーヴィックス」とか、普通に入れるレストランの味の安心安定ぶりは「老舗」ならではだよなあ……と。
(でも最近高くなり過ぎだわ、庶民にはもう行けない)。

このドラマの脚本のお仕事ぶりは、まさに日本の老舗ホテルの安定感に近いものを感じました。

話が少しそれますが。
旧ドラマ(と原作)の「プラトン」は、たぶん「ヒルトン」がモデルの一つなのですよね……?
それが今回のNEXT DOORでは、「ニューオータニ」という、旧ドラマでキーにしていた「プラトン・マインド(一種の「おもてなし」ミッションステートメント?)」を、上手く日本の帝国とかオータニとか、オークラとか?の老舗ホテルに結び付けて再設定されていて、そこも説得力があってよかったなあ。
(ちなみに、ヒルトンは父が好きだったホテルチェーンのひとつで、個人的には、あの底抜けにドライで明るい巨大ホテルの居心地って、なじみがあって嫌いじゃないんですけども)。

ディーンさま、役柄的に能面でないといけなかったワケなのですが、とっても魅力的に演じてらっしゃいました!

個人的には、総支配人として9.99割ツンと0・01割のデレで演られている本編よりも、回想シーンの大学生時代。
彼女に別れを切り出され、「君の気持ちは尊重したいが、あまりにも突然で一方的な決定だよ」と涙ぐむ、甘―い青年時代の泣き顔が、一番グッときましたよ。
この御方は、泣いたり笑ったりするのが、メチャメチャ、チャーミングだわ。なんか「スーパー涼し気な金城武さん」みたいな感じというのか。

配役の妙

そして脇を固める役者さんも渋かった。
話の中心人物として、中華系の実業家とかが出てくるのですが、その周という実業家役は、加藤雅也さん。
いや、さすが。お名前は轟いてますけどさ。
こんなに美中年でいらしたんだ(驚)!!
高画質のアップが、ただただ麗しすぎる美中年。
スゴイ睫毛。左右対称の完璧なるお顔。
ちょっと日本語を「なまらせてる」のも上手だった!
レースの立ち襟に、共布の長いボウタイをひるがえし、シルバーヘアーのオールバック(もう、BLマンガの登場人物でしかないわ)。

その部下の若者「劉」、たぶん中華圏(マンダリンかな?)で活躍されてる日本人俳優さんかな。英語、マンダリンのセリフ回しもそれっぽい感じで良かったよ!

ナンダヨこの王道BL展開

もうもはや、普通の日本のドラマにおける必須要素になっているの???
ブロマンス(というかBL)要素。
腐系列にない人でも、普通に分かる匂わせだよね? え、違う。わたしが腐要素があるだけ?

話のメイン軸がさ、もう普通にBLよ。(以下、壮大なるネタバレです)

まず、ディーンさまのパッパ。
この人がプラトン初代総支配人の東堂克生(故人)。
今では、プライドだけが残って実質が忘れられてしまった「プラトンマインド」の「プラトンは我が家。お客様も従業員もみな家族」を提唱・体現した伝説のGM。
そう、「ホテルが我が家」になっちゃった人だから、妻と家庭は蔑ろ……(昭和だ)。
離婚。ひとり息子のちびディーンさまは妻の方へ。
パッパは息子を気にかけていて、プラトンへ招待してくれる……。

カッコいいパッパ(役者は村上弘明さまだよ! オイ!)。
ちびっこディーンさまは、もう彼にメロメロに。
プラトンでのおもてなしとあわせて、ホテルマンのパッパは彼の心に残り続け、支えとなって――
ホテルという仕事に魅せられ、それを目指すようになっていく。

まあ、成長の過程で、大恋愛の彼女とかもできるんだけどさ。
基本ディーンさまの人生の原動力は「Love Hotels!」ファザコンマインドなのよね。
つまり(極論ですが)「男(とシゴト)が好きなんでしょ?」としか思えないのよ、わたしには。

そんな父の愛したホテルが、今、プラトンマインドを忘れ、危機を迎えている。
亡き父との数少ない思い出を胸に、父の大切にしていたホテル守ろうとするディーンさま……っていう話なワケ。

で!
落ち目プラトンを買い叩こうとしてるのが、加藤雅也さま演じる「周」。
彼の部下「劉」が訊ねる。
「なぜ、プラトンなのですか? 日本には、ほかにも同じ条件のホテルはあちこちにある。その方が簡単に手に入るのに?」と。

三十年前、若かりし頃の加藤雅也さまは、香港でムチャをやっていた。
違法行為はしていなかったが、黒社会に目をつけられて香港から逃亡。
プラトンにロングステイをし、身を潜めていた。
しかし、そこも突き止められる。
やってくる香港マフィア。ボコられる加藤雅也さま。
そこへ!

颯爽と周を助けに現れ、マフィアをボコり返す東堂マネージャー(村上弘明(敬称略))。

「立ち去りなさいっ! あなた方は私どものゲストではないっ!」
(だからさ、展開が普通にBLかハーレクインでしょうよ。これは)

周(加藤雅也さま)と東堂(ディーンパッパ)は、ふたり、バーで飲み明かす。

「……よく笑う男だった。太陽のように。底抜けに明るい笑顔で」(By 加藤雅也さま)
そして、東堂GM。
「プラトンのバーでは、普通やらないことだが」と前置きし。

「ボトルを入れよう。ふたりの記念に」と。
スコッチのラベルに二人のイニシャルを書き込むのだった。

そして周は、自分がその後ホテル業界に乗り出し、世界的なホテルチェーンを始めた理由は、東堂の事が影響しているのだと語る。
さらには、「彼と話がしたくて日本語も学んだ」とか、サラリと。
(だから、そこには愛しかねぇだろうがよ……)

「……だが、私は感傷だけでは動かない」(By 加藤雅也(敬称略))
「利益があるか、利益がないか。それだけだ(キリリ)」
(いや、そこには普通に愛情しかないやんけ……(By わたし))

「実は伝説のGM藤堂の息子であること」を、ディーンさまは隠している。
周がプラトンにこだわる理由も、劉(秘書)以外に知らない。

最後、買収前。
ディーンさまのおかげで生まれ変わったプラトンに招待される周。

「プラトンマインド」で接待される周。
「夜は部屋に酒を用意しておいてくれ」と、ディーンさまに注文していた周。
ディナーの後、部屋に戻ると、テーブルの上に、古いスコッチの壜が。
ラベルにはイニシャル。

三枝総支配人(ディーンさま)の名刺が置かれている。
「三十年物です。どうぞご堪能ください」のメッセージと共に「スマイルマーク」が書き添えられていた。

周はいつも携えている古いペーパーバックを取り出して開く。
しおりがわりに挟まっているのは、大切な古い名刺。

「東京プラトン総支配人 東堂克生」そこには「スマイルマーク」の書き込みが。
ディーンさまの名刺とそれを並べる周。
ディーンさまの名前は「三枝克明

泣き笑いをする周。そして、
「こんな古いモノが、よくあったな……」と、スコッチを呷るのであった。

翌朝、チェックアウト。
周はディーンさまに告げる。
「すべてを理解するのには一泊で充分だった。このホテルはわたしのホテルが目指すものとは全く異なるサービスを提供する。だが居心地はよかった。昔のすばらしさを取り戻したな。あなたの父親の大切にしていたものを」

「あら、分かっちゃいました?」みたいな能面顔で応じるディーンさま。
ディーンさまにふたつの名刺を見せる周。

「離れて暮らしている息子がいると言っていた。手紙にこれを描くと喜ぶとも。平和と勝利のシンボルなのだと」
そう言って、スマイルマークを差し示すのであった。

「このホテルの従業員は、皆よく笑うな。君の父親と同じように。だが、ふたたびプラトンの輝きを取り戻させた君の行動は矛盾している」

かすかに「?」な表情をするディーンさま。

「ワザとなのかもしれないが。君はまったく笑わない。プラトンマインドに反しているだろう? 笑え、もっと笑え、父親のように」

そして去っていく加藤雅也さま。

まあなんだかんだで、現プラトンは売却され、プラトンブランドと従業員は周の持っている別のホテルを「プラトン」とすることで引き継がれる……というディーンさまが目指していた形で買収が着地。

「君のために少し残しておいた。飲みなさい」と、周が置いていったスコッチの壜を開けて飲むディーンさま……。

父さん、これで貴方の息子になれましたか……とひとり、総支配人室で窓を見ながらむせび泣く。
ふと振り返ると、そこには亡き父の幻影が太陽のように笑いかけて……。

新しいプラトンを率いるディーンさまが、お客様を迎えて、最後に「ごくかすかに」笑う……というシーンでドラマは終了。

はい!
はいはいはいっ!!!

今は亡き「太陽のように笑う男」を愛する男がふたり。
しかもひとりは、その男の息子。
なんですかね、これ、石原理さまの作品とかでありませんでしたっけか?
谷崎トルクさまの小説とかでありませんでしたっけ。
なんかほかにも、ホテルGMの有名な商業マンガ、ありましたよねぇ……。

村上弘明、加藤雅也(だからさ、もう「そういう配役」なんでしょ????OK?)、ディーン・フジオカの三角関係とかさ。反則でしょう。
(ディーンさまのファザコンっぷりがハマりすぎちゃって、妻も子もいらっしゃるのは知ってますが、もう今後、ディーンさまにはそういう視線しか向けられなくなりそうよ)

加藤雅也さまが率いるスーパー高級世界チェーンホテルの完璧な一室で、または日本のプラトンで。
このふたりの男が逢瀬を重ねる日がくるまで、あと何日だぁ???
としか思えないワケなんですが?

そんなこんなで、老舗的なドラマ制作勢による、肩の凝らない楽しいBLドラマ。お勧めです。面白かった。


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