【詩】ひとよ
ひとつ
ぽたりと落ちていく
またひとつ
ぽたりと落ちていく
触れるか否か
宵の狭間をいつも漂い
またひとつ
ぽたりと落ちていく
いくつの世を
いくつの言の葉を
ひとつ
またひとつ
冷たい地面に落ちていく
このひとよは残酷ね
このひとよはもう明ける
たったいま
最後の椿が落ちました
花の季節はもう終わり
さようなら
虚ろいゆく景色の中で
このひとよは麻薬でした
さようなら
さようなら
椿は土に還るでしょう
そして跡形も残らない
さようなら
いつかまた
どこかひとよで
花の季節を待ちましょう