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本(オススメ)

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記事一覧

『性と芸術』 会田誠

作家の会田誠が藝大在学中から美術家になった経緯についてと、主に『犬』の解説。芸術とは何かを「良いです」「アカンです」とラベリングすることではない、という趣旨の話も。 『河口湖曼陀羅』(1987) typical(=典型的な) "私" を除外することとアンディ・ウォーホルの話。 あの作品は、「ボクはキャンベルのスープ缶が大好き」とも「大嫌い」とも言っていない。 『犬』以降の作品は〈ティピカル〉を目指して作ったという。 「最大公約数」「集合知」といった、「個性」の反対側に

『モオツァルト』 小林秀雄

5 6 11 4 第8章の悪魔に喰われたスタンダアルの話も好きなのですが切り取りが難しく、全体の流れで読まないと良さが消えてしまう気がしたので省略しました。

『美男へのレッスン』 橋本治

雑誌「GQ」1993年3月号〜1994年8月号に掲載されたもの。 歌舞伎、映画俳優(トニー・カーティス、アラン・ドロン)整形、マイケル・ジャクソン、など盛りだくさんのトピックが扱われている。 社会(男社会) 「本来の自分」とは・男女差の話は長くなるので省略するが、この「自分」というものを過去ではなく未来に設定する考え方はすごく新しい感じがした。 男

『トルーマン・カポーティ』 ジョージ・プリンプトン

小説家カポーティ本人の手紙や、友人たちの証言、インタビューを元に構成された本。1944〜1984年ごろの話がメインです。 ヤドーでの執筆トラスク夫妻は邸宅に作家、画家、作曲家を招待し、創作活動に集中できるよう支援していた。 朝8時にはランチボックスを届け、みんなそれぞれ各自の仕事場に籠る。日中は誰にも邪魔されず、騒いで良いのは16時〜22時まで。夜はディナーが提供され、メンバー同士の交流も活発だった。 カポーティが滞在していたのは1946年ごろ。 人びとアイザック・デ

「共感する女脳、システム化する男脳」

共感することが得意なタイプの脳(EQ>SQ) システム化(パターンを見つける)が得意なタイプの脳(EQ<SQ)  後者の極端なケースがアスペルガー症候群、自閉症と呼ばれる状態になるが、それにまつわる実験や検証について書いてある書籍。巻末には参考文献と一緒に、EQ、SQ、AQのテストが付録されており、自分の脳のタイプを調べることができる。  この記事ではASD(アスペルガーの人)の特徴を引用するが、これは彼らを攻撃する意図ではなく、同じ悩みを持つ人に共有されることを目的とし

日本教の社会学

小室直樹と山本七平の対談本から。 宗教、軍国主義の話は、また改めて記事にする予定です 第1部 日本社会の戦前、戦後・足利から戦国時代ごろにあった「一揆契状」という契約書が、日本の民主主義の原型ではないかという話。 https://ja.wikipedia.org/wiki/傘連判状 ・あらゆる出来事を「天変地異」として受け止めるため、それに合わせて自分たちのやり方を変えるだけで、相手を何とかしようなどという発想が生まれない。 商人なければ自由なし 日本人にとって「自由

「動物感覚」 テンプル・グランディン

 著者のテンプル・グランディンは動物学者。牧場や食肉工場の動物に、人道的な扱いをするためのシステムを作ることに力を注いでいる。自身の自閉症の特性が、動物の心を理解するのに役に立っているという(あとがきでは、アスペルガー症候群と注釈されていた) 彼女の書く文章は端的で、翻訳書によくある「ちょっと気の利いた言い回し」のような表現がほとんどなく、事実を淡々と述べるスタイルの文章です。 第2章 動物はこんなふうに世界を知覚する動物は物事をあまり一般化しない 「飼い主の男性」に慣

【映画】スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド

登場する映画はWikipediaに詳細が載っています。 本編がyoutubeにアップされていたけど、日本語字幕はなし(自分はDVDで見てます) 以下、内容をメモしたもの 第1部"Dead of Night"「夢の中の恐怖」(日本語版見つからず) 腹話術が人形を殺したあと気絶?して、目が覚めたら、人形の声でしか喋れなくなっていたというエピソード。 第2部この箇所で糸井重里氏の小説(家族解散)を思い出した。 >つい数日前の、最後にセックスした日も、自分が役者になったような

「真昼の悪魔―うつの解剖学」 アンドリュー・ソロモン

うつ病を3回発症したことのある著者(=ソロモン)による、自身の体験と、うつについての知識が集められた本。 彼はセラピーと投薬による治療により安定したが、1回目の発症以降、症状が現れていない時期にさまざまな代替療法も体験している。 とくに印象に残った部分 ・自殺の口実としてエイズ(HIV陽性)になろうとした ・母親が末期癌のため自死を選び、それを看取った 第一章 うつ病著者がうつ病になったのは、人生が順調に動き出した時期であったという。 1回目の発症では紆余曲折のあと薬

「身体はトラウマを記録する」 ベッセル・ヴァン・デア・コーク

「トラウマ」に由来する症状と「内面の虚しさ」を区別しているところが、本書の大きな特徴です。 精神科医である著者が30年間で行ってきた研究と多くの実例。全580ページのうち後半(第5部)はすべて治療についての記述になっている。 巻末に収録された索引/原注が分厚い(80ページ) 第1部 トラウマの再発見第3部 子供たちの心解離———知っていながら知らずにいる トラウマの治療において、治療者が患者のトラウマの詳細を知ることは重要ではなく、患者自身が自分の感じているものを感じ、

「親になった後悔」についての本

「母親になって後悔してる」を読んでみました。以前、少子化について調べていたときに見つけて、気になっていた本です。 この本を読みながら、別の小説をひとつ思い出したので一緒に紹介します(映画「レボリューショナリー・ロード」の原作/ネタバレあり) 「母親になって後悔してる」 オルナ・ドーナト まず「母親になって〜」のほうから。 本書は23人の女性のインタビューを集めたもので、テーマごとに発言を抜粋してあります。 それぞれのストーリーを追いかける構成ではないため、彼女たちのパ

世間知らずの高枕

「世は〆切」「旅は友を失う」「少ないほどいいもの情報量」など、一度聞くと忘れられないフレーズも多い。短く簡潔なコラムで文庫に100篇ほど収録されていますがKindle化しているものは1冊のみ。 「日常茶飯事」は1962年の最初の作で「世間知らずの高枕」は1988-1992年の連載。山本夏彦は戦前生まれということもあり、内容に偏りがあるので苦手な人は苦手かも。 世間知らずの高枕 日常茶飯事 大隈は維新の生き残りの一人で、演説の末尾を、一説ごとに、あるんである、とむすんで

ウォーク・ドント・ラン

村上龍と村上春樹の対談本(1981年に出版) 龍氏は「コインロッカー・ベイビーズ」、春樹氏は「1973年のピンボール」発表した頃で、言葉遣いなどもラフで読みやすい。 こちらもどうぞ

感情化する社会

私たちは誰かに感情を提供しているだけではなく、感情を「提供される側」として、コンテンツ(や人)をジャッジする習慣を持つようになった。 「元気をもらえた」「涙が止まらない」「感動」「吐き気がする」といったフレーズは、いつごろから増えてきたのだろう? 「いいね」が義務になるとき第1章 感情天皇制論  1983年、社会学者のホックシールドが人間の内面が資本主義に組み込まれている現象を「感情労働」として指摘した。 例に挙げられていたのは客室乗務員(CA)であったが、いまやほとん