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その食事が、集中力を奪っていた
■ 「かくれ栄養失調」が脳のパフォーマンスを落とす
現代の食事で大きな課題となっているのが、無自覚的に陥っている新しいタイプの栄養失調です。これは戦後などの食べるものがなかった時代の栄養失調とは異なります。
食べ物は溢れているのですが、体を作るたんぱく質や体を整えるビタミンなどが極端に少ない食事になってしまう。それによって不調に陥る状況を、新型栄養失調またはかくれ栄養失調と言うのです。
例えば、子供が塾に行く前に、お気に入りの炭酸ジュースを飲んでいたらやめさせますか。また、勉強の合間の息抜きとしてカップラーメン、菓子パン、ドーナツ、ポテトチップスなどを食べていたら、あなたは止めるでしょうか。どの家庭でも当たり前の風景です。あなた自身も心当たりがあることでしょう。
これらの食事は、「腹」を満たしてくれます。しかし「栄養」は満たしていません。
体や脳を動かす上で必要な栄養素のたんぱく・ビタミン・ミネラル・食物繊維などは入っていないため、体力は低下し疲れやすく、脳疲労が溜まり集中力も低下します。
こうした食事を、海外ではジャンクフードJunk Food(ガラクタな食べ物)やエンプティフードEmpty Food(栄養が空っぽな食べ物)とも表現します。驚くべきことですが、ハウス食品の調査によると、「現代の8割の子供は、かくれ栄養失調」との報告がでています。
ジャンクフードのような食事は、ゼロにする必要はありません。気分転換としての大切な役割があります。しかし、回数が増えると、あなたやあなたの家族が、気が付かないうちに栄養不足になっている可能性があります。
最近、落ち着きがなくなってきた、すぐに疲れる、子供の学力の低下が気になるなど兆候が見えたら、食事を見直してください。
健康格差は、能力格差、集中力格差となって現れます。
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■ おいしく〝超加工〟された食品ほど高リスク
なぜ8割の子供が、新型栄養失調になってしまうのか。その答えの一つに、食品会社が追い求める「至福点」があります。これは、人が一番おいしい(至福)と感じる味を探るための指標です。
この「至福点」を調整する3要素は、①高糖質、②高脂質、③高塩分。体には悪いですよね。ところが、これらは原価が低いのに顧客満足度が高いため、非常に使い勝手がよいのです。
ファストフード店でフライドポテト無料のキャンペーンをよく見かけるのはまさにこの原則が当てはまっているからです。ポテトという高糖質を油で揚げ高脂質にし、塩分をふりかけることで顧客満足度が飛躍的にあがります。映画館で食べるポップコーンも同じ原理です。キャラメルと塩味のハーフサイズが最も売上が高いのは、まさに人の味覚を交互に刺激し続けるからなのです。
特に気を付けてほしいのが、コンビニの棚に並ぶカップラーメンです。これらは超加工食品と言われ、WHOは、血糖値の上昇、体内での酸化や炎症反応を引き起こすと警鐘を鳴らしています。
最近は、こうしたインスタント食品に「たんぱくプラス」「食物繊維リッチ」「乳酸菌入り」「1日分の栄養素」「ゼロカロリー」「完全栄養食」などのラベルが貼られるようにもなっていますが、これは、超加工食品を購入する際の、罪の意識を低下させるための戦略です。
そこだけ見ると、健康によさそうに見えます。まさに、罪の意識をかき消すギルティフリーの商品です。しかし、脳にダメージを与え、集中力を低下させる高糖質・高脂質・高塩分が消えているわけではありません。くれぐれも「You are what you eat」。「あなたは食べたものでできている」、集中力を司る脳も食べたものでできているということを忘れないでください。
■ サプリメントさえあれば、食べなくてもOK?
では、サプリメントはどうでしょうか。私は企業内でビジネスパーソンを対象として食事術の講師をすると必ず聞かれる質問があります。
「朝は何も食べないのですが、マルチビタミンを飲んでいます。これで栄養は摂れていますよね?」
この考え方は、間違っています。
サプリメントは補助食品。自転車にたとえたら補助輪の位置づけです。補助輪だけで前に進めるわけがありません。
私はある外資系企業でサプリメントの商品開発の責任者を13年間務めました。その中でも、「機能性表示食品」と呼ばれるサプリメントは、複数のエビデンスがあり、消費者庁に届け出を済ませた商品です。大抵のものは3~4か月で健康効果を実感できる原料を配合しています。
ところが、機能性表示食品のサプリメントでも、効果実感を得られる人と得られない人がいます。当初はこの理由がしばらくわかりませんでした。しかし、利用者にアンケート調査をしていくと、効果が出る人は、そもそも、食生活が整っている。効果がない人は、食生活が乱れている傾向が見られたのです。
私は福岡に住んでいるのですが、豚骨ラーメンを食べた後に、ダイエットサプリを口に放り込んで「なぜ痩せないのか」とぼやく人を見かけます。食事を見直すことをせずしてサプリメントで解決するのは無理があるのです。
サプリメントは今後、ますます、身近になるでしょうし、科学的根拠が高く、安心安全な商品が発売されると思います。しかし、「食事が9割、サプリが1割」と、覚えてください。この逆はありません。
健康マネジメントスクール
水野雅雅