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kokoro

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医療現場のリアルを公開。突然の事故や病気による障害、余命宣告をされた患者さんたちの言葉から教えられる人生や命についてを語っています。
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#ノンフィクション

今、お父ちゃん焼いている時間だわ

「今、お父ちゃん焼いている時間だわ」 ある日、リハビリを行うために患者さんのお部屋に行った際に患者さんから開口一番に言われた一言がこれでした。 私が担当していた患者さんの旦那さんは別の病院で入院中でした。夫婦揃って病気で入院をしていたのです。それも別々の病院で。 互いにかなり重症でお互いの病院を行き来することはできない状況が長く続きました。 そんな時、患者さんの旦那さんは亡くなりました。 死目にも会えず、葬式にも出られずの患者さんは今、何を思うのでしょうか。 「今

non-fiction/早く旦那のところへ行きたいと言う患者さん

「もうここらでいいわ。早く旦那のところへ連れてって言ってください。」 「もうリハビリは良いです。」 こう言われた。 聞くと旦那さんは10年以上前に先立たれたようだ。 旦那さんは人柄も良く、常に優しい人で夫婦でたくさんの場所に旅行に行ったことが忘れられないと。 今、患者さんは重い脳の病気になったが、奇跡的にも回復し歩けるようになっている。 でも 「もうここらでいいわ。早く旦那のところへ連れてって言ってください。」 「もうリハビリは良いです。」 と言いあまりリハ

「本当に幸せだったのか」に気づくとき

亡くなる直前の患者さんが言っていたのを思い出した 「最期の最期で幸せな人生だったかどうかがようやくわかった」 「俺はどうやら幸せだったみたいだ」 「今になって色んなことを思い出すよ」 「若気のいたり、妻との出会い、子供たちの誕生と成長」 「こんなにたくさんの思い出があったんだな」 「◯◯くん(私のこと)、俺はもうすぐ逝くんだろ、なんとなく分かるよ」 「俺はどうやら幸せだったみたいだ。今まで逝くのが怖かったけど、 これでやっと逝ける気がするよ。幸せだったことに気づ