non-fiction/早く旦那のところへ行きたいと言う患者さん
「もうここらでいいわ。早く旦那のところへ連れてって言ってください。」
「もうリハビリは良いです。」
こう言われた。
聞くと旦那さんは10年以上前に先立たれたようだ。
旦那さんは人柄も良く、常に優しい人で夫婦でたくさんの場所に旅行に行ったことが忘れられないと。
今、患者さんは重い脳の病気になったが、奇跡的にも回復し歩けるようになっている。
でも
「もうここらでいいわ。早く旦那のところへ連れてって言ってください。」
「もうリハビリは良いです。」
と言いあまりリハビリに乗り気ではないのだ。
「旦那と天国で一緒にいろんなところを見てまわりたいのよ。もう体が良くなることは望んでいないのよ。」
私は理学療法士としてどうすれば良いのだろうか。
私はこんなことしか言えなかった・・・。
「旦那さんは、本当にそれを望んでいるか聞いて見ましたか?」
「旦那さんもそれを強く望んでいるなら、○○さんをすぐに後追いさせる様にしたでしょうし、今だってこんなに回復することはなかったでしょう」
「まだ、何か旦那さんも○○さんがこの世に残って、やって欲しいと思っていることがあるのかもしれませんね」
「その何かは私にはわかりませんが、例えば旦那さんとの思い出の写真の整理だとか、お墓や畑のこととか、後はお孫さんの成長を見届けるとか・・・」
「旦那さんが生きていたらしたかっただろうなということを変わりにしてあげるために、ここにいるのかもしれません」
「その役目を終えた時に、旦那さんも「ありがとう」って言って呼んでくれるかもしれませんよ」
「旦那さんとの思い出を整理する、旦那さんがしたかっただろうことなど思い出してみませんか?」
患者さんはこの後、また平行棒で歩行訓練をはじめました。
私の声かけは正しかったのでしょうか・・・。
皆さんなら何と答えてあげますか?