今、お父ちゃん焼いている時間だわ
「今、お父ちゃん焼いている時間だわ」
ある日、リハビリを行うために患者さんのお部屋に行った際に患者さんから開口一番に言われた一言がこれでした。
私が担当していた患者さんの旦那さんは別の病院で入院中でした。夫婦揃って病気で入院をしていたのです。それも別々の病院で。
互いにかなり重症でお互いの病院を行き来することはできない状況が長く続きました。
そんな時、患者さんの旦那さんは亡くなりました。
死目にも会えず、葬式にも出られずの患者さんは今、何を思うのでしょうか。
「今、お父ちゃん焼いている時間だわ」
の一言にどんな思いが込められているのか・・・。
私はベッドの側に座り話を聞くことしかできませんでした。
患者さんの部屋には旦那さんとのツーショットの写真が。
2人の笑顔。懐かしい思い出。
通夜や葬式は子供たちだけで執り行われたようでした。
参列したかっただろうな・・・。
もし自分だったら・・・今の妻の死際に側におれず、通夜にも葬式にも出られず別れてしまうようなことになったらと思うと辛い・・・
自分ごとに置き換えて想像するしか患者さんの思いを感じる方法はありませんでした。
今回のような経験が初めてはありません。実は何回かあります。
病院に入院される患者さんの多くは高齢者です。ということは配偶者も高齢者です。お互いが入院していることもよくあることです。
皆さんは、どんな最期を迎えたいですか。
皆さんは、愛する家族の最期を見届けることができるでしょうか。
今、生きている時間を大切にしましょう。
そして自分の家族を大切にしましょう。
別れはいつどんな形でやってくるか分かりません。
愛する家族や友人と悔いのない人生を、いつまでも。