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効率と選択

昨日昼食を食べていた時のこと。

いつも通りのオニギリをデスクで
頬張ろうかと思ったのだが、
原材料関係のトラブルがあったらしく
オフィス内がバタバタしているので
あまり落ち着かない。

仕方なく食堂で食べることにした。

私は食堂で食べるのがあまり好きではない。

なんだか皆で一緒に食べている感じがするとともに
私が何を食べているのか見られるからである。

ちょうど総務の方が食べるタイミングと一緒だったので
少し話をしながら食べることにした。

私は入社以来ずっと弁当を持参しているが
会社では今年新しい業者から仕出し弁当を購入している。

ちょうど一緒になった総務の担当者が
この弁当の調達手配などをしているので
その話を聞いてみた。

この弁当は価格が400円。
メインのおかずを含めて他3品ほどが
盛りつけられており、
それと白ご飯とみそ汁という内容である。

当然のようにおかずは毎日変わり
月に一度はカレーの日がある。

過去に何度か食事の内容を見たことがあるが
とても400円でできるようなクオリティでは
なかった。

しかもこの業者さんは私達の会社から
車で1時間半の程の立地。

私たちの会社で喫食する人はせいぜい30~40食で
どうやって採算が取れるのか
話を聞けば聞くほど疑問が広がってきた。

その疑問を総務の担当者に投げかけると、
どうやら私たちの会社だけでなく
近隣にある複数の会社と契約しており、
大量に運搬しているらしい。

しかも、この会社は弁当だけでなく
スーパーなどに収めるお惣菜も
製造販売しているというのだ。

つまり、私が想像したよりも
ずっと大量に調理をしており、
それによりコストを抑えることでき
ビジネスとして成り立っているのである。

私も製造業で長年働いてきて嫌というほど
大量に作ることの効率の良さを
痛感させられてきた。

市場において大量に生産する海外の競合品に
コストで負けてしまうことなど
これまで何度も経験してきたし、
その逆に大ロットで作ることで国内製造であっても
競争力を持って市場で戦えることも
ビジネスの中で実感してきた。

まさにこの弁当を作っている会社は
大量に作ることで市場競争力を生み出し
勝ち残っているのだ。

実際、このようなビジネスモデルは非常に
効率の観点でも優れている。

安く作れるということは
同じ量を作った時にかかる人の数は
少なくなるということなので、
計算すると一人当たりの生産性は
間違いなく高くなるからである。

我が国の生産性が他国に比べて低いということが
長らく言われ続けているが、
間違いなくその一つの理由は日本における
中小企業の割合の高さであろう。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が
後悔している情報に基づくと、
日本の全企業数の99.7%が中小企業だという。

中小企業と言っても市場においては
大きなシェアを占めていたり、
中には半独占のような形で大量に製造して
市場で勝ち残っている企業も
中にはあるだろう。

しかし、一般的に見て中小企業の規模で作る
商品は大企業(特に海外)のそれに比べると
一つを作る際にかかるコストも工数も
高いものになってしまう。

これは一見するととても非効率なように
見えてしまう。

とても極端な話であるが、
会社で食べることができる仕出し弁当を
この地域の企業全てが食べたするならば、
そのコストはさらに下がるだろうし
効率はさらに上がるであろう。

私は毎日おにぎりを持参しているが、
食べているものの質と費用、いわゆるコスパで
比較をするならば
間違いなくこの弁当を食べるほうがコスパは
良いはずなのである。

しかし、私は何だかそれが嫌なのだ。

効率やコスパを求めることは大切だと
認識はしているものの、
選択肢がなくなることで人間らしさを
無くしてしまう気がするからである。

ある意味、ものごとを選択できるということは
効率とトレードオフなのだ。

そう考えてみると99.7%が中小企業で
生産性が低い我が国日本というのは
実は選択肢が多い国という見方も
できるのではないだろうか。

逆に言うならば、市場がそれだけ選択肢を
求めているからこそ、
非効率なやり方である小規模事業が
ここまで多くの割合を占めているともいえる。

実はこの環境は私たちにとって
とてもありがたいものなのだ。

これから何十年先を考えていく中で
我が国がこのスタイルをどうしていくのかは
正直わからない。

だが、少なくとも今この時代を生きるうえでは
私達は自ら選択することができる。

久々に食堂で食事をしてみるという選択から
私は大事なことを教えられた気がした。

今日も色んな選択肢が私の目の前に
やって来ると思うが、
それを選択できることに感謝しつつ
その選択を楽しんでいこうと思う。

ちなみに久々に食堂で食べていると
何人かの人に
「え?そんな量で足りるの?」と聞かれたが、
長らくこの食事を続けている私からすれば
逆に「え?そんなに食べるの?」と聞きたくなる。

私に上記の質問を投げかけてきた人は
皆、お腹がぽっちゃりしている人だったが、
彼らこそコスパよりも別の選択をすべきではないかと
密かに思ったのはここだけの話である。


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