効率と伝統
先日家族で初詣に行ったときのこと。
その神社の参道では名物の餅が売られており、
初詣客が店先にズラリと並んでいた。
私は別にそれほど興味がなかったので
素通りしようとしたところ
妻がこの餅を食べたいと言い出した。
店先にはまだ5~6人が並んでいる。
私が待つのが嫌いなことを知っている妻が
「お餅なんやからすぐ回ってくるって」というので
私達はその列の最後尾に並ぶことになった。
ところがである。
そこから5分経っても10分経っても
一向に列が前に進んでいかないのである。
一体どういうことだと思い様子を見ると、
最前列に並んでいた人が大量に注文をしており、
出来ていた餅の在庫が尽きたらしい。
中の様子をうかがうと店主と思しきおじさんが
せっせと次の餅を作っていた。
正直この時点で私の心は餅から離れかかったのだが、
妻の心には餅がベッタリとくっついているらしい。
子供たちがブーブー言い出すのをなだめながら
私達は列に並び続けた。
そしてようやく私達の一つ前に並ぶ人に
たどり着いたとき、
店先で対応をしていた店主の奥さん(?)が
「白がこれで一回無くなりました」と言った。
この店の餅は白い普通味と緑のよもぎ味の
2種類があり、
どうやら白い方が品切れになってしまったらしい。
もともと餅に執着のない私はよもぎでも
カレー(そんなものない)でもなんでもいいので、
早く買いたかったのだが、
妻と子供たちはよもぎはイヤらしい。
結局、私達は順番が回ってきても
そこからさらに白の餅が出来上がるのを
待たなくてはならなくなった。
子供たちは既に飽きてしまい、
少し離れたところで遊んでいるので
私は店内の様子を眺めながら待つことにした。
狭い店内では餅を作る店主と
それを梱包して売る奥さんの2人が
忙しそうにしている。
だが、見ているとその動きにムダが
とても多いことが気になり始めた。
店主が餅を作る工程も然りであるし、
奥さんが梱包する際にムダな歩行や時間ロスが
かなりある。
1つの動作にしてみれば数秒のものであるが、
彼らは一日この動作を100回以上は軽くすることだろう。
それだけでも結構な時間になる。
しかも、動作や動線を改善することで
間違いなく商品を早く届けられるように
なるはずである。
全く自分には関係がないものの
見れば見るほど何だかアドバイスしたくて
ウズウズしてきたので
私は店内を眺めるのをやめた。
ほどなくして私達が頼んだ餅が出来上がり
私達は店を後にしたのだが、
結局店に並び始めて30分もの時間が経っていた。
30分待った味はどうかと早速食べてみると
正直感想は「まぁ、こんなものか」であった。
飲食店などもそうであるが、
効率を考慮した動線や配置に変えることで
もっともっと生産性が上がる場所は
世の中に山ほど溢れている。
世界で使われる”改善”という言葉の
発祥である我が国日本であるが、
実は日本の中にも改善が必要な場所は
まだまだたくさんあるのだ。
先ほども書いたように私は待つのが嫌いなので
自分一人ならば効率重視のあまりムダのない店に
行きがちである。
なので、店内を見てもあまりモヤモヤしないのだが、
家族で出かけるとモヤモヤする店によく出会う。
効率が全てではないし、それまでのやり方に
こだわりをもつことも大事だと思うが、
その伝統をまもりつつムダを排除していけば
顧客にとっても店にとってもハッピーな
結末が待っていると思う。
このような小さいお店に改善のイロハを
教えることで
我が国のGDPも多少上がるのではないかと
思ってしまう私であった。