見出し画像

恐怖遺伝子は不利なのか

あなたはカートに乗ったことはあるだろうか。

カートと言ってもスーパーでカゴを乗せるものでも
ゴルフでラウンドするために乗る乗り物でもない。

マリオカートでマリオ達が乗っているような
あのカートである。

私はかつてマレーシアにいた頃、1度だけ乗ったことがある。

車で少し行った場所に現地の人が経営するカートがあり、
ローカルスタッフに連れて行ってもらったのだが、
そのスピード感、操縦感にとても興奮した記憶がある。

そんなカートに先日の出張先で行くことになった。

今回訪問したのは東欧の国ポーランド。

どうやら会社の近くにあるらしく、
仕事終わりに時々スタッフ同士で行くらしいのだが、
せっかく海外からグループメンバーが集まったので
カートで競争してみようということになったのだ。

当初現地のスタッフからは「Go cart」と聞いていたので
私の頭の中には遊園地にあるライトな感じのものを
想像していた。

ところが、実際に現地についてみると
そこはいわゆるガチなコースであった。

ヘアピンカーブのようなコーナーが入り乱れ、
なぜか丘のように上下する場所まである。

カートもまさにマリオが乗っているような
本格的な感じのもので、
ヘルメットをかぶった時にはさながらレーサーに
なったような気分になった。

最初にカートでの注意事項の説明を受け、
それから8分間の練習走行、
そしてタイム測定しながらの走行を経て、
最後に全員一斉スタートで競うレースをする流れ。

練習走行が始まり、さっそくスタートのアクセルを踏み込むと
体の後ろにあるエンジンから何とも言えない
鼓動のようなバイブレーションが伝わってきて
一気に気持ちが高まった。

しかし、最初にコーナーに差し掛かったとき、
私は一瞬かなり焦ってしまった。

なぜならコーナーでどのぐらいの速度を出していいのか
わからないからである。

そこで私はブレーキを調整しながら曲がれるだろうという
速度を様子を見ながらコーナーに侵入した。

パワーステアリングなどついていないので
とても重いハンドルを切りながら
曲がっていくカート。

何とか思ったようにコーナリングできたので
再びアクセルを踏み込んだとき、
私は目を剥いてしまった。

なぜなら、私の後からスタートした
アメリカ人、イギリス人、南アフリカ人が
私をあざ笑うかのように颯爽とコーナーリングして
私を抜いて行ったからである。

カートも普通の車と同じように
ブレーキランプが後ろについているのだが
彼らはブレーキを踏んだ様子もなく
私はその光景にあっけにとられてしまった。

だが、彼らがそれぐらい思い切り踏み込むなら
私にもできるだろうと、
そこから極力ブレーキを踏まないように
運転してみることにした。

ところが、コーナーに差し掛かると
どうしてもオーバースピードな気がしてしまい
スピードを調整してしまうのである。

練習走行が終わり、その結果を見てみると
私と一緒に行っていた日本人と、
いかにも温和な感じのイギリス人(偶然出張に来ていたので面識はない)
の3人が下位を独占していた。

ちなみに私と一緒に行っていた日本人は
昔ジムカーナというカーレースに出ており、
スポンサーも付いたほどのドライバーだったらしい。

だが、カートとなると勝手が違うのと
初めて乗るコースと車のため練習走行では
かなり慎重に走ったということことだった。

他の彼らもカートなど久しぶりだと
言っていたはずなのだが、
この違いは一体何なのだろうか。

その時私の頭の中に出てきたワードが
”恐怖遺伝子”というものである。

何の本だったかは忘れてしまったが、
私達が本能的に恐怖を感じるのは
恐怖遺伝子というものの影響だと読んだことがある。

そして、日本人はその恐怖遺伝子をかなり高い割合で
持っているとその本には書かれていた。

それゆえに日本人は比較的保守的な
考え方に偏りがちなのだが、
恐怖があるからこそ品質などを慎重に管理できて
かつてのようなものづくり大国になれたという
側面もあるのであろう。

今回の練習走行の結果はまさに恐怖遺伝子の
有無を見事に表している気がした。

初めて乗るカート、初めて走るコースなら
曲がり切れない可能性を考えて
誰もが慎重になるものと思っていたが、
その感覚すらも恐怖遺伝子がない人からすれば
異なるようなのである。

そんなことを考えていると
次に正式にタイムを測りながらの走行が始まった。

私の頭の中では恐怖遺伝子に打ち勝って
いかに大胆にコーナーには入れるかが
次のテーマである。

なので、この走行ではブレーキは使わず
アクセルオフのみで減速して
コーナーに侵入してみることにした。

すると、先ほどまでの感覚とは明らかに違う
スピード感でコーナーを切れることが
体感で分かった。

「これはなかなかイケているかもしれない」

そう思っていると、
後ろからまたしても欧米組に抜き去られてしまった。

私的に恐怖のネジを外したつもりだったが
彼らはそれ以上にネジがそもそも備わっていないらしい。

せっかく抜かれたので、
後ろから彼らについていき、
彼らの走行をマネしながら走ってみることにした。

すると、彼らの走りには驚くほどムダがないことが
とてもよく見えてくるのである。

無駄な減速のないコーナリング。
そして、ぶつかることも恐れない大胆なライン取り。

なるほど。こうして走るといいのか。

そんな風に考えてしばらく走っていると
ほどなくして走行が終了した。

タイムを見ると練習走行よりもかなりタイムも
縮まっており、
私はまだ下位であったが、一緒に来ていた日本人は
中盤ぐらいに食い込む結果になっていた。

結局この後、全員一斉スタートのレースでも
同じような結果に終わったのだが、
この経験から私は一つのことを学んだ気がした。

恐怖遺伝子を持っていることは
今回のような新しいものにチャレンジしたとき
最初は不利に働く場合が多い。

だが、それゆえに最初に多くのことを
学ぶことができるのではないだろうか。

なかなか出ない結果、なぜうまくいかないのかを
考えながら試行錯誤を繰り返し、
そうする中で大事なことを見つけることができる。

そうして大事なことを見つけた後には
少しずつ結果も付いてくるようになるし、
それを何度でも再現することができる。

これがいきなり大胆に踏み込んでいったとしたなら
最初から結果を出すことはできるが
結果として、それ以上に成長をすることが
難しくなってしまうのではないか。

私達が持っている特徴は長い目で見た時に
明らかに有利に働くと考えると、
最初は結果が出なくても試行錯誤しながら
継続することが大事なのだと実感した。

偶然ではあるが、今日の更新が私にとって
毎日更新をスタートして730日目である。

まる2年もの日々を毎日更新し続けていることになるが、
2年前は何を書いたらいいかわからず
何やら教訓めいたことを恐る恐る書いていた。

だが、こうして2年間も毎日試行錯誤しながら
書き続けることで、3000文字ぐらいの記事も
全く苦にすることなくかけるようになったし、
結果としてKindleも何冊も書くことができるようになった。

だが、まだ全然自分の文章には納得がいっていない。

自分が進む道にはまだまだ先があるが
そこに行きつくには試行錯誤しながら
走行を繰り返すしかないのであろう。

連続更新の話とカートで得た教訓の話は
もともと別の記事で書こうと思っていたが
書きながら頭の中で結論が同じであることに
気がついてドッキングすることになってしまった。

そういう偶然が重なっていくことで
これからの自分の力になっていくのかもしれない。

2年間もの日数、毎日更新し続けられたのは
まさに日々私の記事を読んでくれる方がいるおかげである。

心から感謝の気持ちを伝えたい。

いつもお付き合い下さり本当にありがとうございます。

これからも試行錯誤しながら記事を書いていくので
引き続きお付き合いいただけると嬉しい。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?