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見えないリスクを避ける私たち
昨日出張先の大阪で地下鉄に乗る機会があった。
しばしば大阪方面への出張はあるが、
地下鉄に乗る機会はそれほど多くない。
ラッシュの時間帯でもないし、
同じ線でも今回行く方面にはあまり乗ったことがないので
なんとなくわくわくしながら駅のホームで
電車を待っていた。
目的地は終点の駅なので特に乗り換えもない。
なのでどこの車両に乗るかも気にしなくていい。
そう思いながらどこに乗ろうかと考えていると
待つ人が他より少ない車両があることに気が付いた。
これなら座れるかもしれない。
そう思い、私は並ぼうとしたのだが、
ふと足元を見て気が付いた。
ここは女性専用車両だったのだ。
こりゃマズい。
そう思いそこから離れ、隣の車両の列に
私は並ぶことにした。
だが、よく見てみると女性専用車両は
始発から午前9時までの運用と
書かれているではないか。
私が乗ったのは昼過ぎなので何も関係ない。
ならばそのまま並んでおけばよかったと
思いながら、
その列に並ぶ人の様子を見ていると
どうにも男性が少ない気がする。
中には私と同じように床に貼られた表示を見て
違う車両に行く人もいた。
そんなことを考えているとほどなくして
ホームに電車が滑り込んできた。
早速電車に乗り込み、ふと隣の車両を見ると
女性専用車両の時間帯ではないのに
不思議なことにその車両は圧倒的に
女性の割合がとても高かったのである。
恐らく私と同じような乗客が他の駅でも
積み重なって
結果として女性の割合ばかりが高くなったのだろう。
だが、冷静に考えてみると
仮に今の時間帯は女性専用車両でないと
分かっていたとしても、
なんとなくその車両に入ることに若干の抵抗を
感じる自分がいる気がした。
別にリスクは大きくないとわかりながらも、
なんとなくそのリスクを避けたくなる心理である。
時間帯によって通行できなくなる道なども
よくわからないから極力通らないように
するのも同じ心理であろう。
このような心理で行動できないことは
実はたくさんあるのではないだろうか。
最近であれば自転車が走行する専用レーンが
道路に設置されていることが多いが、
このレーンがあるだけでなんとなく歩道を
走りにくくなる。
そうすることでなんとなく歩道を走ることが
悪いことのように思えるからである。
だが、ゆっくりとしか走行できない高齢者の
方にとってはむしろ歩道で走る方が
本人にもドライバーにもずっと優しいはずなのだ。
私たちは何か行動しようとするとき、
知らず知らずのうちにこのような無意識の誘導に
影響を受けてしまっている。
これは100%回避することはできないだろうが、
心の片隅で「自分は見えないリスクに影響されている」と
考えておくことで
それらの影響を少しでも少なくすることができるだろう。
昨日の私であれば、時間帯によって女性専用車両となる
車両に乗ることで、他の車両よりも人が少なく快適に
電車時間を過ごすことができたはずなのだ。
今日も知らず知らずのうちに
リスクを感じて行動にブレーキを踏みそうになったら
「本当にそれはリスクなのか?」と自分に
問いかけていこうと思う。
ちなみに鉄道会社や路線によって
女性専用車両が終日運用されていたり
時間帯指定だったりするのが
我々男性にとってわかりにくさにつながっていると
思わなくもない。
間違えて女性専用車両に乗ってしまったときの
あの気まずい感じは2度と味わいたくない。
どうせなら終日運用にしてほしいと思うのは
私だけではないはずである。