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ヘビとフラミンゴ

先日とあるテーマパークを訪問した。

そこはいわゆる動物園に分類される
テーマパークなのだが、
以前は鳥がメインに展示されていたらしく
園のセンター部分には大きな池と
そこに色んな種類の鳥がいる巨大な部屋がある。

そこには以前から行きたいと思っており、
年末年始の休暇に行くことにした。

その日はそのテーマパークに行くことが
メインの予定だったのだが、
ブックオフに行ったりIKEAに行ったりして
メインイベントがかなりギリギリに
追いやられてしまった。

テーマパークの特性上、日が暮れてしまうと
営業はできなくなってしまうので
私たちは割と遅い時間に入って
駆け足でテーマパークを回ることになった。

そうしてメインの鳥の池に差し掛かった。

大きいものから小さいもの、
そして色鮮やかなものまで色んな鳥が
そこには飛び交っており、とても美しい。

私達が1か所に立ち止まって鑑賞していると
綺麗なピンク色をしたフラミンゴが2羽
池の中のすぐ近くにたたずんでいた。

動物園などでもフラミンゴは何度も
見たことはあるが、
こうして近くで見てみると
なかなか味のある顔をしているものである。

そう思いながら眺めていると、
おもむろに2羽のフラミンゴが
私たちのいる通路の方に上がってきて
私たちの方にずんずんと歩いてきた。

その光景を何気なく観ていた私であるが、
子供たちはこの様子に急にパニックになり始めた。

「パパ、鳥がここに上がってきて大丈夫なん?」
と子供たちはフラミンゴから逃げまどいながら
私に尋ねてくる。

私はあえてニコニコしながら
「さぁ、どうやろな。ヤバいんちゃうか。」と
子供たちに答えると、
子供たちはさらに慌てて逃げてしまった。

ここは鳥が放し飼いにされている巨大なケージで
その中に人が入れるように通路を作っているだけなので
フラミンゴが人の通路に入ることは
何らおかしなことではない。

冷静に考えてみると当たり前のことなのだが、
フラミンゴが飛んで通路に来たわけではなく、
池の中から歩いて上がってきたので
子供たちはイレギュラーなことが起こったのだと
勘違いしたらしい。

逃げまどう子供たちにこのことを教えてやると
「あ、ホンマや」などと苦笑いを浮かべながら
少し恥ずかしそうにしていた。

人はふとした時に冷静さを無くして
思わぬ判断ミスをしてしまいがちな生き物である。

他の動物よりも過去の経験や
映像などを通じて色んな人の経験をシェアし、
知識量が多くなるがゆえに
一度思い込んでしまうと一気にパニックに
なってしまうものである。

子供たちが今回パニックになったことで
一度冷静に考えてみることの大切さを
少しでも感じてくれていたら嬉しい。

少なくとも彼らの記憶には
今回のテーマパークの記憶はしっかりと
残ったと帰りの車で確信した私であった。

ちなみに、このエピソードに出会ったとき、
私の頭の中にかつてマレーシアで
ヘビのテーマパークに行ったときの
記憶がよみがえってきた。

そのテーマパークは私が住んでいた田舎町の
外れの場所にあり、
お世辞にも綺麗な場所ではなかったが
日本から少し長めの出張で来ている人が
休日に退屈するので、
時々連れてきていた場所である。

その日も研究開発の人が滞在していたので
日曜日に共に行くことになった。

私はそこに行くのは3度目だったので
正直もう見慣れた景色であるが、
初めての人にとっては海外で行く動物園的な
テーマパークなので嬉しそうであった。

入場料を払い、テーマパークの中で
色んなヘビを見ていると、
私は妙な違和感を覚えた。

いつもここは
来場者とほとんどすれ違ったことがない
閑散としたテーマパークである。

何なら飼育員の姿もこれまで2回の訪問では
見たことがなかったのに
なぜかその日はアチコチで飼育員と思しき人が
ウロウロしていたのである。

今日は何かやってるのだろうか。

すこし気になりつつも、
そのまま順路を進み後半に差し掛かった時、
私たちのすぐ近くに飼育員の集まりが
何人かいることに気が付いた。

気になったので私は彼らに今日は何があるのか
聞いてみることにした。

すると、彼らから衝撃の言葉が返ってきたのだ。

「ヘビが逃げたので探している」

え、それって入場者を避難させる案件じゃないの?

ヘビって毒蛇じゃないの?

一瞬でパニックに陥る私。

そのことを同行している人たちに伝えると
皆の顔が引きつりだし、
皆で駆け足で出口に向かうことになった。

その後無事ヘビが捕まったのかはわからないが、
後にローカルスタッフにこのことを話すと、
テーマパークがある辺りはもともと
色んな毒蛇が住んでいる場所らしい。

なので、彼らにすれば飼育しているヘビが逃げようが
そうでなかろうが、
いずれにしても毒蛇が近くにいる環境ということで
あまり慌てていなかったらしい。

だが、来場者は別だろうと思わなくもないが
それは海外なのでどうしようもない。

今振り返ってみれば私にとってあの経験があったから
今回のフラミンゴの件では至って冷静に
対応できたのだろう。

まさに辰年終盤の日にヘビからの学びが
活きたエピソードであったわけである。

次回家族と海外に行くのならば
私が4年近くを過ごしたマレーシアに
行きたいと思っているが、
件のヘビのテーマパークには行くまいと
決めているのは言うまでもない。



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