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若い夫婦を見て想ったこと

いつものように早朝の電車で通勤していると
近くに若い夫婦が乗ってきた。

ベビーカーを押した旦那さんと
大きな荷物を抱える奥さん。
子供さんの年齢は数か月ぐらいで
ご夫婦は20代半ばぐらいだろうか。

私が通勤で乗る電車はとても朝が早く
あまりこのような夫婦が乗ることはないので
妙に彼らの姿が目に付いた。

平日に電車でどこかに出かける予定だが、
人が多いラッシュの時間をさけるために
早い電車に乗ったのであろう。

そんな風に思いながら私は読んでいた本に
再び目を落とそうとしたのだが、
何だかその夫婦が妙に気になってしまった。

それは、なぜだか彼らが全然楽しそうに
見えなかったからである。

ベビーカーを押している旦那さんは
ドア横のスペースにベビーカーと共に立ち、
奥さんの方はそのすぐ横にある座席に
座っているのだが、
奥さんは持っているカバンに顔を伏せて
すぐに眠ってしまった。

この様子はなんとなく見おぼえがある。

赤ちゃんが夜泣きであまり寝ないので
奥さんはあまり眠れていないパターンである。

そして、旦那さんの方はベビーカーの中で眠る
我が子がいつ泣き出すかハラハラしている様子が
伝わってきた。

睡眠不足になるとどうしても
人は機嫌が悪くなってしまうものである。

何となくピリピリした奥さんと
どうしたらいいのかわからないご主人の
絶妙な感じが彼らからにじみ出ていた。

何だか懐かしい感じだと思いながら
横目でその様子を見ていると、
突然ベビーカーで眠っていた赤ちゃんが
泣き始めた。

まじまじ見ていたわけではないが
ご主人が慌てる様子がなんとなく伝わってきた。

すると、眠っていた奥さんが顔を上げ、
ベビーカーのところで子供をあやし始めた。

程なくして赤ちゃんは落ち着きを取り戻し
奥さんは小声でご主人に何かを言って
再び座席で寝始めた。

ご主人の顔には疲れと共に
「どないしたらええねん」という気持ちが
にじみ出ているような気がした。

私も長男が生まれて乳飲み子だった頃、
このような気持ちを抱えていた頃がある。

長男は夜泣きが酷く、一度泣き出すと
しばらく抱っこして揺らしてやらないと
再び寝ないという時期が長かった。

我が家は母乳とミルクの混合で育児をしていたので
私がミルクを作って飲ませることができて
夜中妻ばかりに負担がかかることは避けられたのだが、
それでも日中はどうしても妻に任せきりに
なってしまう。

夜に眠れたとしても日中ずっと赤ちゃんの相手をして
思うように何もできないことにイライラする妻と
それでもグズる息子に
「どないしたらええねん」と思ったことは
何度となくあった気がする。

あの頃、なぜこんなに子育ては辛いのかと
思っていたのだが、
今となってはなんとなくその答えが
分かる気がする。

大変な子育てを経て親になる覚悟を
身に付けるためである。

親になるということは
自分では何もできない子供を
育てるということ。

それはとても忍耐と覚悟がないと
できないことであるが、
最初に大きな試練を用意することで
親たちはそれを乗り越え、
覚悟を手にするのではないか。

特に男性の場合はおなかを痛めるわけではないし
母乳を自分でやれるわけでもない。

その中で自分がどうしたらいいのか、
自分に何ができるのかを問い続けることで
初めて親の覚悟を手にできるのだろう。

電車の中で見た若い夫婦を見ていると
まさに彼らは今その覚悟を手にしようと
試練に挑んでいる様に見えた。

彼らが今後どうなるのかはわからない。

だが、少しだけ先輩として彼らを心から
応援したい気持ちでいっぱいになった。

若い彼らが無事試練を乗り越え、
素敵な家族となることを願っている。

ちなみに息子を夜中にあやしたエピソードでは
夜中の3時から7時まで抱っこ紐で
揺らし続けたのが最長記録である。

抱っこ紐で寝たと思い、ソファに腰を下ろすと
何かを察知して息子は泣き始めたので
4時間の間ずっと立って揺らし続けなければ
ならなかった。

ベビーカーで昼寝をさせるために
数時間外を散歩しつづけたこともある。

今の自分があの頃のようにできるかと言えば
とても難しいだろう。

まだこの言葉を使うには早いと自覚しているが
あの頃を思い出すとつい口にしてしまう。

「あの頃は若かったな」




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