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競合他社に転職するということ

昨日海外から来客があった。

その人は私が働く会社の商品の
原材料を作るメーカーの営業担当だったE氏である。

E氏はかつて何度か私たちの会社に来社され、
逆に私達が先方の工場を訪問させて頂いたこともある。

また、先方の工場を訪問したときには、
その近隣の観光まで案内してくれて
いまだにとてもいい記憶として残っている。

だが、コロナ禍を経てそのメーカーを退職されたと
後任の方から聞いていた。

この方とは個人的な話も色々したし、
私と同世代ということもあり、
退職のニュースを聞いて私は寂しさを感じていた。

そんな退職の話を聞いてから2年ほどしたある日、
突然見知らぬメールアドレスからメールがあった。

サイバーセキュリティの観点でも
見知らぬメールアドレスからのメールは
最大級の警戒をしながらメールを確認してみると、
どうやらそのメールのドメインは
私達が現状購入していない海外の原材料メーカーからの
ものである。

恐る恐るメールを開き、内容を確認すると
なんとそれはE氏からのメールで、
驚いたことにかつてE氏が働いていた会社の
競合メーカーに転職されたとのことであった。

そして、新しい会社の事業内容と商品を
ぜひ紹介したいということで
昨日の来社に至ったというわけである。

コロナ禍に退職されたこともあり、
実質E氏に会うのは5年ぶりぐらいである。

わずかな緊張を抱えながら来訪を待っていると
車から降りてくる懐かしい顔が見えた。

そこには5年前と全く変わっていないE氏がいた。

お互いに5年分歳を重ねているはずなのだが、
本当に5年間も空いたのか不思議なほど
全く変わっていないE氏。

先方も変わっていない私に驚いた様子で
お互いに握手をした。

E氏は新しい会社仲間3人と一緒に来ており、
面談の前半で彼らの商品についてサンプルをもとに
紹介を受けた。

E氏にとっては前職の競合メーカーなので
前職での話は避けるほうがいいのかと思っていると
E氏から商品の特性が前職とどのような点で異なるのか、
現職の会社の強み、弱みは何なのかの説明を
してくれた。

それだけでも驚いたのだが、
E氏が連れてきていた先方の技術担当の
バックグラウンドを聞いてみると
これまた別の競合メーカーから転職をして
来られた方らしい。

実はこのメーカーから私達の会社は
原材料を購入しており、
彼らの工場にも訪問したことがあったので
この技術担当を最初に見た時、
どこかでお会いしたことがあるような気がしていた。

この方もE氏と同じように前職の商品の特徴と
現職の商品との違いを色々と説明してくれたので
彼らの商品の特徴をとてもよく理解することができた。

今回の面談の時間はおおむね1時間ほどであったが、
具体的な試作評価の話にまで至ることができた。

恐らく全く知らないメーカーの方ならば
1時間でここまでの話には至らなかったであろう。

これはE氏と私が過去に何度となく
話をしてきたからこそである。

日本では同業の競合に転職するケースは
あまり見ることはない。

それは退職時に会社とそのような契約を
結ぶからというのもあるだろうが、
何となく社会的にダメだという暗黙のルールが
存在しているような気がしている。

だが、海外では当たり前のように
競合メーカーへの転職が行われる。

正直、最初E氏から競合メーカーに転職したメールを
受け取った時には、
E氏と久々にやり取りをする嬉しさと共に、
何だかE氏の前職を裏切ってしまうような気持ちが
心の中にあったのは事実である。

だが、今回E氏とその同僚との面談を経て
競合に転職することは何ら悪いことではないと
感じた。

なぜなら、そうすることで顧客としては
その2社の良し悪しを公平に判断できるからである。

紹介する彼ら自身はもちろん現職の商品の良さを
アピールするために来ているので、
そこは外さないようにしながらも、
彼らの前職の商品の特徴やアドバンテージも
しっかりと説明してくれたうえで
現職での商品を紹介をしてくれた。

我が国日本でも以前に比べれば転職への捉え方は
かなり緩和されてきた気がするが、
依然として転職に対する心理的なハードルは
とても高いものがある。

しかし、彼らの様に転職に対して
もう少しフランクに考え、
自分のキャリアをしっかりと活かせる
経験ある業界で働くことは
企業にとってもお互いのことを知り
スキルアップする機会になるだろう。

そして、それだけではなく
今回私が感じたように顧客にとっても
公正な比較ができるというメリットがある。

これからますます人手が足りなくなり、
転職においても売り手市場の状況が続くと
予想される。

その中で多くの人が転職を経験するだろうが、
その際に全く前職と関係のない仕事を選ぶ人は
決して少なくないだろう。

しかし、せっかく築いてきたキャリアを
全く関係のない業界で1から積み上げていくことは
あまりにもったいないことである。

キャリアという言葉を聞くと
何となく資格や経験を思い浮かべる人も多いが、
キャリアの中には知識も人脈も含まれていると
私は思っている。

キャリアを十分に活かすという観点では
競合他社に転職することは
最も理にかなった選択肢ではないだろうか。

私が今している仕事は業界的には
かなりニッチな分野ではあるが、
その中で築いてきたキャリアは間違いなく
大きなものがあると自負している。

今回E氏との久々の面談を経て
自分が得てきたキャリアを改めて棚卸し、
それがどのように活かせるのかを
考えてみようと思った。

やはり人との出会いは色んな刺激を
与えてくれるものである。

ちなみにE氏が帰り際に今3歳になる
息子の話をしており、
彼も車が大好きでミニカーを集めているらしい。
(イタリア在住なのでイタリア車のものなのだろうか)

うちの息子もそうであったが、
小さい男子の子供が車にハマるのは
世界共通のようである。

一体なぜ男子は小さい頃に車にハマるのか。

noteで考察してみるにはとても面白いテーマだと
密かに感じたのはここだけの話である。


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