『医療者のためのコンサルテーションマニュアル』 report!
こんにちは、HBDのかわむーです!
本日は、平成31年 4月20日(土)に行われた『医療者のためのコンサルテーションマニュアル 』の様子を簡単にレポートさせていただきたいと思います!
今回は、今月から研修医になられた先生も多数ご参加いただき、3年目以上の先生との活発な意見が飛び交う、非常に活気に満ちあふれた会となりました!そして今回が平成最後のHBD! ということで、本日も会場の熱き様子を頑張ってお伝えしていきたいと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いいたします!
1. 講師紹介
本日の講師は、医師で経営コンサルタントの 岩本修一先生 です。
岩本先生は、2008年に広島大学医学部を卒業後、福岡県の病院にて初期研修を修了。2010年から東京都で麻酔科後期研修を経て、2012年から神奈川県川崎市のクリニックで内科医として勤務。2014年から客船で船医として勤務された後、広島大学病院 総合内科・総合診療科へ戻られ、医療職・医療系学生に対するコミュニケーションやプレゼンテーションの教育に携わり、教育プログラムを開発。現在は、東京にあるハイズ株式会社の人材育成戦略部長・医師コンサルタントとして、病院経営やヘルスケアビジネスのコンサルティングをされています。
本日は 、医療者にとっては必須のコミュニケーションスキルである “コンサルテーション” について、実際のワークショップも挟みながらみんなで楽しく学んでいきたいと思います!
岩本 修一先生(医師 / 経営コンサルタント)
2.コンサルテーションとは
まずはじめに、「 “コンサルテーション” ってなんですか?」
こんな質問から始まった本日の会。
会場からは、
「お願いすること!」「相談すること!」「他科に丸投げすること!(笑)」など、様々な意見が飛び出しました。
コンサルテーションとは「他人に相談して、一緒に問題解決を図ること」です。
コンサルテーションの方法には、大きく分けて2つあります。一つ目は、オーラル(口頭、電話)と、もう一つはテキスト(紹介状、フォーム)です。
本日は、「上級医に上手く相談できるようになる」ことを目標に、下記の内容を学んでいきたいと思います!
・「上手い相談」とは何かを理解する
・ コンサルのための思考技術を使ってみる
・ コンサルのためのプレゼン技術を持ち帰る
・「良い紹介状」とは何かを考えてみる
3. 「上手い相談」の3条件
そもそも、「上手い相談」ってなんでしょう?
会場からは、「目的を伝える!」「情報を正確に伝える!」「どれくらい急ぎか伝える!」「相手のことを考える!」「他人の意見なのか自分の意見なのかはっきりする!」などの意見が出ました。
どれも臨床で実際に行う際に、とても必要なことですね。
「上手い相談」の3条件は、
①正確に ②簡潔に ③失礼なく です。
早速、一つずつ見ていきましょう!
① 正確に
まず一つ目の「 正確に」に伝えるためには、“ファクトをつかみ、ロジックを組み立てる” 必要があります。
ファクトとは量・数値などの事実のことであり、ロジックとは何故そうなるのか組み立てること(思考の道筋・論理)です。
ここではファクトとロジックに分け、正確に伝える技術を学んでいきましょう。
① 正確に / ファクト
ファクトをつかむ際に必要なのが、 “ 事実と意見を分けること ” です。事実とは実際にあったことや原則であり、正しいか正しくないかのどちらかです。「〜である」と表現できます。
意見とは自分の考えや判断であり、正しいか正しくないか決められないこともあります。「〜であると考える」と表現できます。
臨床でコンサルテーションをするときも、意見と事実はしっかりと分けて考え、伝える必要があります。
ここで実践練習!
事実と意見を分けるワークショップ「ファクトわけわけワーク」を実施しました!
ゴシップ記事を題材に、意見なのか事実なのか、線を引いてグループで確認し合いました。
また、事実は「主観」と「客観」に分け、理解することも重要となります。
主観的事実とは、問診内容、身体所見、検査所見などで、人の解釈が入るもののことです。「鵜呑みにしない」ことが基本スタンスとなります。
客観的事実とは、バイタルサインや検査値、画像のことで、基本的に人の解釈が入る余地はありません。
また、「ビックワード」にも注意しましょう。ビックワードとは、さまざまな解釈ができる言葉のことで、何かそれらしいことを言っているようで実は中身はほとんどない言葉です。ビックワードが必要な時もありますが、そればかりを使わないように気をつけましょう。
(ビジネスでは、生産性、シナジー、Win-Win、付加価値、、などがよく使われます。医療では、不明熱、炎症反応高値、経過良好、問題なし、、 などが当てはまるでしょう。)
① 正確に / ロジック
次に、正確に伝えるためにはロジックを組み立てる必要があります。
ロジックを組み立てる際には、2つの「なぜ」を明確にすることが大切です。
1つ目は、「なぜ、コンサルテーションするのか? 」について。
2つ目は、「なぜ、そのように判断したのか?」についてです。
はじめに、「なぜ、コンサルテーションするのか? 」について考える際に重要なのは、コンサルの目的を「緊急性」と「医学的目的」に分けて考えることです。(ここ、重要です)
緊急性とは、「今すぐ」なのか「今日中」なのか「2〜3日以内」なのか等という "時" に関すること。
医学的目的は、診断確定や治療適応・手術適応、主治医決定または一緒に診てほしい、などという目的のことを言います。それぞれを明確化しておくことはとても大切です。
次に、「なぜ、そのように判断したのか?」について考える際に重要となるのは、「判断の根拠はそろっているか」と振り返ることです。
「 結論は? → その理由は? → それぞれの根拠は?」といった形で、組み立てて考えると良いでしょう。
② 簡潔に
「上手い相談」の2つ目の条件、「簡潔に」。
コンサルテーションにおいて、簡潔に伝えるためには『結論を先に伝えて、イメージを想起させる』ことが大切です。
まずは、「結論ファースト!」ということで、結論を最初に言うことで相手に伝わりやすくなります。これを意識するだけで、自然と結論が簡潔になります。
結論が最後になると、その前の内容が理解しにくくなったり、⻑い話のときは最後まで集中できないといった事が起きてしまいます。医療者はしばしば『SOAP』の弊害で結論が最後になってしまうことがあるので、伝える際には注意が必要です。
次に、「イメージング」では、相手に “ 10秒で患者像を想起させる” ことを意識しましょう。
イメージングとは、相手の頭の中に画を浮かばせる技術のことで、患者情報を伝える場面では、下記を1〜2文、時間でいうと10〜15秒で簡潔に伝えるとよいと言われています。
• 名前、年齢、性別
• 関連のある基礎疾患
• 発症
• 関連のある治療経過
③ 失礼なく
「上手い相談」の3つ目の条件、「失礼なく」。
失礼なくコンサルテーションするには、「敬意でサンドイッチする」と良いでしょう。
人が失礼に感じるのは「態度」と「言葉遣い」です。 逆にいうと「敬意と感謝」を示せば、失礼を感じさせません。
<敬意のサンドイッチ> 参考例
「◯◯先生、今お時間大丈夫でしょうか?」
(相談内容)
「お忙しい中、ありがとうございました」
また、「相手別コンサルテーション」や「シーン別コンサルテーション」についても伝授していただきました! 診療科や職種、場面によって、目的や伝えること、聞くこと、伝え方などを工夫することで、より良いコンサルテーションができるでしょう。
さて!ここまで学んだところで、いよいよ実践演習です!
ロールプレイ『コンサルテーション症例』を実施しました!
参加者が2人1組となり、研修医(コンサルテーションする側)と他科医師(受ける側)にそれぞれ分かれました。
なんとも絶妙な設定の症例に、参加者の方も頭を悩ませながら、時に汗をかきながら、、会場は非常に盛り上がりました!
以下、ロールプレイ終了後の参加者からの声です。
<コンサルする側>
・緊張して伝えられなかった。
・相手になにをして欲しいのか分からなくなった。
・緊急性を伝えられなかった。
・途中で何科に電話しているかわからなくなった。
・ビックワードを使いたくなってしまう。使い分けが必要。
・ビックワードから入って、ファクトをいうと伝わりやすそう。(例:「血圧めっちゃ低くって、sBP60なんです!」等 )
<受ける側>
・なにをして欲しいのか(目的)がわからなかった。
・診断の根拠は伝わった。
・SOAPの羅列だけではわからない。
・正確すぎると伝わらない。
・分からないことを「わからない」と言ってもらえると、答えやすい。
・先に結論を言われるとわかりやすい。
→ 結論ファースト!(例:結論から申し上げると、、、。)
終了後のディスカッションでは、感想を元に非常に多くの意見が飛び交いました!明日から使えるコンサルテーション術!
非常に有意義な時間となりました。
4. 紹介状
紹介状を書く際も、オーラルと同様「正確に、簡潔に、失礼なく」が基本となります。
以下、紹介状を書く際におさえておくと良いポイントです。
① 正確に
・ファクト:発症、治療歴、数字
・ロジック:紹介目的、判断の根拠
② 簡潔に
・結論ファースト → 結論ラストでいいが明確に!
・イメージング → 少し意識する程度
③ 失礼なく
・敬意のサンドイッチすれば、途中の言い回しは気にしない
・過剰な敬語は理解の妨げになる
また、紹介状を書く際のテクニックとして、簡潔さだけではなく「迅速さ」も非常に大事となります。検査所見はデータ添付を活用して本文では "高値" などと省略したり、 内服歴は薬手帳を活用したり、直近の変化のみを記載したりすると良いでしょう。
また、カルテに 自分のテンプレートを作っておくことも時間短縮につながります。
5. 最後に
さて、どうでしたでしょうか『医療者のためのコンサルテーションマニュアル』! 平成最後のHBDも非常に活気にあふれた会となりました。
次回は、令和元年 5月25日(土)に JA広島総合病院 救急集中治療科 高場章宏 先生 コーディネートのもと、
『 輸液セミナー2019 〜輸液ングダム〜 』 をテーマに勉強会を開催します!
最後に記念撮影★
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
令和の時代もHBDはさらに盛り上がっていきたいと思います!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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☆ おまけ (番外編) ☆
HBDでは毎回勉強会の後に、懇親会を開いています。
今日はその懇親会の様子を、少しだけ紹介したいと思います。
この日、勉強会の後にみんなで訪れたのは会場近くにあるクラフトビールのお店。
それぞれの病院での話や、研修での悩み、面白かった話、真面目な話、施設間・職種・世代間での情報交換など、お酒を飲みながら皆それぞれに場の雰囲気を楽しんでいます。
この日はたまたまお店の周年祝いだったようで、ブルワリーからスペシャルゲストが来てイベント開催中でした。
トークイベント後、みんなで記念撮影★
懇親会は、美味しいご飯やお酒を飲みながら、ゆる〜く横のつながりができていく素敵なひと時です。
ぜひお時間が許す際は、勉強会に参加された後の懇親会にも顔を出し見てはいかがでしょうか(^^)
以上、懇親会会場からのレポートでした。
今後ともHBDをよろしくお願いいたします。
かわむーでした。