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『救命救急ただいま診断中』 report!

こんにちは、HBDのかわむーです!

本日は、1月12日(土)に行われた『救命救急ただいま診断中 〜絶対に役立つ!救急診療の24のクリニカル・パール〜』の様子を簡単にレポートさせていただきたいと思います!

2019年最初のHBDは、非常に多くの方にご参加いただき大盛況でした!会場の熱き様子を頑張って伝えていきたいと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いします!


  ***<本日の内容>***
1.  講師紹介
2. 坂本先生  伝授!  <1〜12のパール>
3. 宮崎先生  伝授!  <13〜24のパール>
4. まとめ
5. 最後に



1.講師紹介

本日は、東京から講師としてお二方の先生をお呼びしました!

1人目は、順天堂大学練馬病院 救急・集中治療科の坂本 壮先生

先生は、著書『救急外来ただいま診断中』を筆頭に多くの執筆活動や、全国各地での講演会などを勢力的に行われていらっしゃいます。先生独自のレクチャースタイルは非常に魅力的で、会場全体が坂本ワールドに引き込まれました!


2人目は、東京都立墨東病院 高度救命救急センターの宮崎 紀樹先生

先生は、循環器内科を経て4年前より現在の救命救急センターでご勤務されております。2018年11月に発売された著書『救命救急24 最重症例から学ぶ現場の思考』は、今回の勉強会のテーマ「24のパール」のきっかけともなっています。先生の熱き指導魂に会場でも多くの質問が飛び交い、非常に盛り上がりました!


坂本先生(左)と、宮崎先生(右)



2. 坂本先生 伝授!  <1〜12のパール>


         <<ER診療の心構え>>
①「ほう・れん・そう」を徹底せよ!
② 確定診断する努力を怠るな!
③ 病歴聴取を怠るな!
④ バイタルサインの解釈は適切に!
⑤ 身体所見も怠るな!
⑥ 検査は結果を予想してオーダーせよ!
⑦ 原因検索を怠るな!
⑧ 治療の選択は疾患名ではなく患者ごとに選択せよ!
⑨ 病状説明は丁寧にわかりやすく!予防法も伝授せよ!
⑩ 後医は名医、前医を否定するな!


上記の心構えと、

日々、“疑問”を持ち続けること!

というメッセージから始まった坂本先生による12個のパールの伝授。一つずつ紹介していきたいと思います!



パール1:造影剤腎症を過度に恐れるな!


パール2:BPPVは安静時眼振なし

memo:BPPV (良性発作性頭位めまい)の患者さんは楽な姿勢(だいたい左または右側臥位)でやってくることが多く、その時眼振はない。頭を動かして症状が増悪するのが「回転性めまい」。BPPVではめまいの持続時間は数秒〜数十秒なので、症状は改善するはずです。眼振をみるときは、フレンツェル眼鏡を使いと良いです。


パール3:BPPV 耳石置換法は必須


パール4:軽症頭部外傷患者 CTよりも時間を意識

 memo :   「CTのコンビニ化」

2014年現在の日本におけるCT台数は13,646台といわれています。日本のコンビニは1位:セブンイレブン(20,437店舗)、2位:ファミリーマート(15,469店舗)、3位:ローソン(14,289店舗)。日本のCT台数はコンビニと同じくらい存在するのですね。ここではCT検査について『Canadian CT Head Rule 』を用い見つめ直し、時間を意識することの大切さも学びました。


パール5:ビタミンB1欠乏を見逃すな!


パール6:創部処置 破傷風の予防は必須

memo:創の特徴から破傷風になりやすい危険性の評価を確認しました。受傷してから6時間以上の経過、裂創や複雑な創縁であったり、1cm以上の深さ、挫傷・熱傷・凍傷・銃創、炎症や血流障害、異物、創部虚血、神経障害などは特に危険性が高い創とのことです。



パール7:徐脈+ショック Check the ECG, ASAP !


パール8:肺炎球菌尿中抗原は使用しない

memo:喀痰グラム染色をせよ。


パール9:プロカルシトニンは使用しない@ER

memo:検査には301点(約3000円)かかります。


パール10:悪寒戦慄を診たら腹部エコーを!

memo:悪寒戦慄といえば菌血症。菌血症を起こしやすい感染源は、尿路と胆道系です。CTの前に尿胆管結石、総胆管を可能な限り確認しましょう。泌尿器科へのコンサルトなどもスムーズに行えます。


パール11:検査前確率を正しく見積もり、適切な検査を選択せよ!

memo:肺塞栓症の検査前確率の推定は、WellsスコアやGenevaスコアが有名。検査前確率が高ければ、D-dimer陰性でも否定できないので、造影CTを撮りましょう。


パール12:病状説明はこまめにわかりやすく!

memo:症状や検査結果などの病状説明は15〜30分ごとに細かくしましょう。



以上、1〜12のパールの紹介でした!

坂本先生、ありがとうございました!




3. 宮崎先生  伝授!  <13〜24のパール>


続いては、宮崎先生による13〜24のパールの紹介です!


パール13:病院到着前から勝負は始まっている

memo:病院前情報の解釈として、時間軸を意識し、一つのストーリーに仕上げましょう。到着前から、ABCを安定化させるための準備を開始しなければなりません。


パール14:診断は思考停止 違和感を大切に

memo:「診断する=他に目をつぶる」事ともなりえます。ひとまず診断したことで思考が停止しないこと、違和感に目をすぶらないことを意識しましょう。


パール15:数分後の未来を予測して行動する

memo:放っておけばどうなるのか?治療介入しないとどうなるのか?を意識しましょう。今ある状態が続くとは限りません。見ているのはその瞬間の情報でしかないのです。底を見る(=状態が上向きになる)までは安心しないように心がけましょう。


パール16:「血圧あるから大丈夫」は絶対言ってはいけない

memo:血圧でショックを語ることはできません。今一度ショックの定義をしっかりと理解することが大事です。


パール17:ショックの診療は何よりもショックの認識

memo:「ヤバイタルサイン」を見落とさないようにしましょう!呼吸で注目すべきは呼吸数と呼吸様式ですね。


パール18:ショックの初動 動きながら考える

memo:動きながら考える整える:適切な人員確保と割り振り、気道確保、静脈路確保、採血、血ガス 診る:絞った問診+身体診察 調べる:エコー、血ガス、心電図 など)これら全てを同時に行います。


プチ情報:上記パールの由来ともなっている、

動きながら考える!内科救急診療のロジック(松原知康 先生 著) 

著者の松原先生(広島大学神経内科)はHBDの立ち上げ人の1人でもあります。(この日は東京から駆けつけてくださいました。)

左から、宮崎先生、松原先生、運営メンバーの徳毛先生




パール19:結局できることは 入れる・締める・叩く

memo:実際のショックの病態は複雑であり、〇〇ショックなら〇〇!という治療ではなく、病態に即した治療介入を行うことが大事になります。

実際にできることは限られており、「入れる(=輸液・輸血)・締める(=昇圧剤)・叩く(=強心薬)+ 解除(緊張性気胸や心タンポナーデ等)」が基本となることが多いです。


パール20:急速輸液は目的を明確に

memo:「なぜ入れるのか?」輸液蘇生の目的を今一度見つめ直しましょう。(血圧=CO×SVR 、酸素供給量=CO×Hb×SaO2 ×定数)

「前負荷を上げて心拍出量を増やし、酸素供給を増加させたい」から、輸液を負荷するのであって、「IVCが虚脱しているのを治す」ための輸液は、正当化されません。


パール21:輸液蘇生に指標なんてない

memo:輸液反応性に明確な定義はありません。IVCは一部の場面を除き、輸液指標としては使えません。そして、循環不全の所見がなければ、そもそも急速輸液は一般的に不要です。過剰な輸液は予後不良になるので注意しましょう。


パール22:救急隊の言う「吐血」は信用しない

memo:吐血(消化器が疾患や損傷によって出血し、口から血を吐くこと)喀血(気管や呼吸器系統から出血し、口から血を出すこと)。

吐血は基本、暗赤色となり、大量かつすぐに嘔吐すると鮮血になります。「黒色や褐色」の場合は吐血ではないことが多いです。


パール23:喀血を見たら気道確保と大血管を意識

memo:喀血は典型的には咳とともに喀出される液体で、鮮紅色です。大量喀血に出会ったら、急変に備えましょう!先ずは①人を集め、全力で②気道確保を行い、落ち着いたタイミングで③原因検索(造影CT)を行いましょう。


パール24:内因性カテコラミンを意識する

memo:ショック時の生態反応としては、内因性カテコラミンによって(心拍数↑ 心収縮↑ 血管抵抗↑により)平均血圧は上昇します。内因性カテコラミンを必死に出してなんとか代償している生体に、鎮静薬を用いたり挿管して楽になると、一気に血圧が低下します。これに備えて、内因性カテコラミンで代償しているような患者に鎮静するときは、昇圧薬をすぐ使用できるようにしておきましょう。

また、代謝性アシドーシスを是正するために呼吸数は上昇します。



以上、13〜24のパールでした!

宮崎先生、ありがとうございました!



4.まとめ

<< 24のパール★おさらい >>

1:造影剤腎症を過度に恐れるな!
2:BPPVは安静時眼振なし
3:BPPV 耳石置換法は必須
4:軽症頭部外傷患者 CTよりも時間を意識
5:ビタミンB1欠乏を見逃すな!
6:創部処置 破傷風の予防は必須
7:徐脈+ショック Check the ECG, ASAP !
8:肺炎球菌尿中抗原は使用しない
9:プロカルシトニンは使用しない@ER
10:悪寒戦慄を診たら腹部エコーを!
11:検査前確率を正しく見積もり、適切な検査を選択せよ!
12:病状説明はこまめにわかりやすく!
13:病院到着前から勝負は始まっている
14:診断は思考停止 違和感を大切に
15:数分後の未来を予測して行動する
16:「血圧あるから大丈夫」は絶対言ってはいけない
17:ショックの診療は何よりもショックの認識
18:ショックの初動 動きながら考える
19:結局できることは 入れる・締める・叩く
20:急速輸液は目的を明確に
21:輸液蘇生に指標なんてない
22:救急隊の言う「吐血」は信用しない
23:喀血を見たら気道確保と大血管を意識
24:内因性カテコラミンを意識する



5. 最後に

どうでしたでしょうか、救急診療の24のクリニカル・パール!

ぜひもっと詳しく知りたい!知識を深めたい!と感じた方は、講師の先生方の本を開いてみると、その中に答えが書いてあるかもしれません。

最後にリンクを貼らせていただきますので、是非手に取ってみてはいかがでしょうか。



さて、ということで、大盛況の幕開けとなった2019年最初のHBD!

次回は、2019年2月9日(土)に坂本先生と同じく順天堂大学練馬病院 救急・集中治療科から小松 孝行先生 をお呼びし、

『病歴聴取を極める 〜全ての言葉に意味がある〜』

をテーマに勉強会を開催します!



今年もHBDをよろしくお願いします!

みんなで、ドラマ『24』のジャックバウアーに(笑)



以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!

かわむーでした。



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坂本壮先生 著書

救急外来 ただいま診断中! 

ビビらず当直できる 内科救急のオキテ

救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに

レジデントノート 2017年6月号 Vol.19 No.4 急変につながる 危険なサインを見逃すな! 〜病棟コールへの動き方を教えます

レジデントノート 2018年2月 Vol.19 No.16 「肺炎」を通してあなたの診療を見直そう! 〜パッション漲る指導医たちが診断・治療の要所に切り込む誌上ティーチング


宮崎紀樹先生 著書

救命救急24 最重症例から学ぶ現場の思考







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