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七十二候屏風制作物語 ニ 「店構えのいい経師店を後にする」

母校の学科卒業生有志による作品展「すみの会」に出展するための作品制作中です。七十二候の書と龍村の帯を表装して屏風仕立てにする作品です。

数年前に掛け軸を作っていただいた職人さんのいる経師店を久しぶりに訪れました。以前にnoteしたお店です。「店構えのいい経師店のお話」

その経師店の職人さんは高齢のため息子さんに代替わりしていましたので息子さんに2月下旬に作品展に出展することとその制作概要を説明しました。

息子さんは、屏風は4枚(四曲)というのは武士の時代には死を連想する縁起が悪い数字なので作らないとのこと。そして、屏風の骨組みは骨屋さんに頼むのでその分時間がかかること。屏風の枠の漆のサンプルを見せながら、最近は漆を塗る塗師屋さんが人手不足のため漆の色は選べないこと、漆が希少なので価格が高価なことなどなどを説明されました。私は4枚は2枚(二曲)づつの1セット(一双)で構わない、枠は漆塗でなく生地のままで構わないと伝えたのですが、息子さんは現在工務店からの請負業務がメインのようで2月末出展に間に合わせる納品スケジュールでは制作が難しいとのこと。ついては別の店を構えている叔父さん(お父さんの弟さん)を紹介したいとの提案をいただきました。

屏風制作が大変困難であること、他の仕事が立て込んでいることが理解できました。私としては、他にあてもなく提案いただいた叔父さんのお店に行くしか選択肢がありません。その場で息子さんは叔父さんに電話を入れ、私のリクエストをかいつまんで説明してくださいました。

帰り際、息子さんが「本当は壁紙を貼るよりこういう仕事の方が楽しいけど食べていかなくちゃいけないから」とおっしゃいました。ずっとだまってやりとりを聞いていたお父さんからは「屏風ができたら見せてね」と言われました。私はちょっと切ない気持ちで店構えのいい経師店を後にしました・・・。作品完成まで物語は続きます~。



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