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冷蔵庫、洗濯機、テレビをもたない暮らし

 子どもの頃は、家にテレビがあるのが当たり前の暮らしでしたが、大学生になった頃から、テレビをほとんど見なくなりました。今では家にテレビを置いていなくて、テレビから全く情報を得なくなりました。

「テレビがなかったら、夜にたっぷり時間あるでしょ?」
とある方に言われたことがありました。たしかに、テレビを見ていた頃、夕食を食べたあと、だらだらとテレビを見ていたらあっという間に寝る時間になりました。テレビを見ないとなると、その分の時間でいろんなことができます。本を読んだり、ちょっと手仕事したり、おしゃべりしたり、最近だとクリスタルに癒やされたり。テレビを見る時間が無駄で他のことをしたほうがいい、と言うつもりはありませんが、テレビは一度つけると中毒性があってずっとだらだら見てしまって、実はほかのことをしたほうが楽しかったり充実感が得られたりするのになんとなくテレビに時間を使った、ということになりやすいように思います。

 食や暮らしにオーガニックなものを選ぶようになった頃から、自分の身の周りのさまざまな人工物を見直し始め、機械類や電化製品がどんどん減っていきました。掃除機はやめて、ほうきとチリトリでお掃除。昔から掃除機のうるさい音が好きではなかったのに、なんで使い続けていたんだろうと思いました(最近の掃除機はもっと静かなのだと思いますが)。電子レンジも使わなくなりました。電子レンジがないと、食事を温め直そうと思ったら蒸したりする必要があり、最初はご飯を温め直すときも土鍋で蒸していたのですが、今では冷やご飯で平気になりました。おむすびとかお弁当だと、冷たいご飯を平気で食べるし美味しく感じるのに、家でご飯を食べるときにお茶碗によそって冷えたままだと悲しいみたいになるのは不思議だなぁ、思い込みだなぁと思ったものです。炊飯器も使っていないので、ご飯は土鍋で炊いています。香川に来てからは洗濯機も使わなくなり、たらいや洗面所で水をためて手洗いするようになりました。

 こうやって書くと、何だか大変な暮らしに思えるかもしれませんが、電化製品に頼るのをやめていくプロセスは、自分の力を取り戻すプロセスのように感じられ、楽しく、面白い体験でした。

 洗濯ひとつとっても、スイッチを押してあとはお任せ、ではなく、手でやるとなると、いろいろ考えさせられ、学ぶことがありました。最初のころ、ゴシゴシとこすり過ぎたり、力強く絞りすぎたりして、服があっというまに伸びてボロボロになりました。それが自分の洗い方のせいだとは気づいておらず、「せっかくいい服を買ってもこんなにすぐにのびてしまうんだったら、もう、安い服ばっかでいいかな」と思っていたら、自分の絞り方が問題なのだと相方に指摘されてようやく気づきました。濡れた布を絞るのは、小学生の頃に学校で雑巾を絞ったことくらいしかなかったので、それと同じように固く絞ったら、繊細な服は悲鳴を上げてしまったようです。服の汚れはゴシゴシこすって落とすというよりも、洗剤の力で浮き上がらせて、汚れが気になる部分だけやさしくこする程度で十分なのだと初めて知りました。

 香川に移住する際、冷蔵庫も手放しました。冷蔵庫がないと言うとびっくりされることが多いですが、慣れるとそれが普通になります。そもそも、冷蔵庫で冷やしておく必要のあるものをあまり食べなくなりました。かつて冷蔵庫や冷凍庫に入れていたものといえば、牛乳やお肉、お魚、バター、ソース、マヨネーズ、冷蔵しておく必要のある調味料などだったけれど、どれも食べなくなりました。真夏に豆腐の三パックセットなどを買ってきて、一日で食べ切れなさそうなときは氷をもらってきます。台所に小さなクーラーボックスを置いていて、そこに氷と冷しておきたいものを入れておけば、簡易な冷蔵庫代わりになります。冷蔵庫を手放すことで、かえって食べものを腐らせてしまうことが減りました。冷蔵庫に入れておくと油断するし、しかも奥のほうに入れると見づらく何が入っているのか忘れてしまうようなこともありましたが、冷蔵庫がないとなると、早く食べてしまわないといけないものはあっという間に食べていくので、買ってきたものを食べるリズムがよくなりました。それに、どうしても食べるのが間に合わなさそうであれば、乾燥させたり塩漬けにしたりして、保存食をつくる工夫も生まれて、そういう知恵がついていくのも楽しいです。

 東京のアパート暮らしの頃は、据え付けの照明を使うのもやめて、ワークショップでつくってきた小さなソーラー発電システムで自家発電して、夜はLEDの小さな電球の明かりとソーラーランタンで過ごしていました。夜はちょっと薄暗いくらいのほうが、体も眠る態勢に入ってきてちょうどいいことがわかりました。香川の古民家に引っ越してからも最初はそうしていたのだけど、薄暗いと虫の発見が遅れて悲鳴を上げることになるので、照明は使うようになりました。それでも、普段使う家電が少ないので、一時期の電気代は500円台でした(今は離れも借りて、二軒分の基本料金を支払っているので2倍くらいになりました)。

 電気代をがんばって節約するというのでは楽しくないけれど、自分たちの暮らしの心地よさを追求した結果、いつの間にかそういう暮らしになりました。家電に頼らず快適に暮らす工夫をする、というのを、趣味的に追求してきたところがあります。家電が少なくなると、家の中で電磁波の影響も少なくなり、家電が発する騒音も減り、そういう快適さも手に入ります。ぼくは音に敏感なほうで、掃除機や洗濯機の音を聞かなくていいことで、耳のストレスがかなり軽減しました。

 今、家で主に電気を消費しているものといえばパソコンと照明で、これらを好きなだけ使っていたときでも電気代500円生活ができていました。熱を起こす系の家電の電気消費量が大きいのだということも、家電を減らしていくまで気にも留めていませんでした。どうすればもっと自分が快適に暮らせるか、ということを感じつつ、実際に暮らしを変えていくことで、いろんな発見があって面白いです。

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