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恋に落ちたナルキソス 〜ナルシシズムと合理主義の終焉〜


恋に落ちたナルキソス


ナルキソスはとても美しい青年でした。あまりに美しく、男も女も彼の虜になってしまうほど。

父、河の神ケピソスと、母の妖精リリオペは、あまりの美しさに息子の運命を憂い、盲目の預言者テイレシアースに相談します。

「自分自身を知らなければ、長生きできるであろう」

ある日、ナルキソスは森に入ると泉に映った自らの姿に恋をし、一歩も動けなくなってしまいます。食事も睡眠も取らず、ずっと水鏡を見つめます。

そして衰弱して死に、いつしか水仙の花になっていました。

以来、欧米では水仙をナルシスと呼び、精神分析では自己愛をナルシシズムと表します。ナルシストの語源ですね。

ほら、可愛いからと部屋で鏡ばかり見ていると水仙になってしまう。
今度、僕とどこかへ行きましょう。

自己増殖する欲望


マーシャル・マクルーハンは、メディアはナルキソスに似ていると話している。自己増殖する欲望は何も満たせない。永遠に望み続けることは、永遠に手に入れられないことと同じだ、と。

『100分de名著』でのE.デュルケム『社会分業論』に目を惹かれた。

かつての社会では「個人」など存在せず、人は家族や村と一体となり生きていた。産業革命が共同体から離れた個人を生み、人は求めずして自由になった。

哲学者の芦田徹郎がこう言う。

「自由とは共同体からの追放である」

解放ではない。

アノミーという哲学用語がある。社会のルールや価値観が崩れた時に生じる個人の迷走状態。

自由な社会はアノミーへ至り行き詰まっている。

情報社会の終焉


ドラッカーは『経済人の終わり』で、合理主義こそ社会を破滅させる元凶だとしている。有用に見える合理主義は孤独へ続く扉だ。連帯の力を奪われたとき、社会が機能することはない。

大学一回生の時に夢中になった本がある。アルビン・トフラーの『第三の波』。

彼は歴史を、農業化の波、工業化の波、情報化の波へ分けた。

ドラッカーはさらに広大な視点で歴史を測る。

ルターの宗教改革以来、プロテスタンティズムも資本主義も民主主義も社会主義もすべて、「合理主義」の枠内にあると。工業化も情報化も連帯の力を人から奪っていった。

いま資本主義の終わりが叫ばれている。
時代の変化はさらに重篤である。
合理主義自体の終焉を捉えねばならない。

ドラッカーと交流が深かったメディア学者、マーシャル・マクルーハンが次に続く社会について語る。

『メディア論』に、それは芸術による社会とあった。

芸術家は象牙の塔から管制塔へ移動しつつある。
かつて高等教育は飾りだったが今は経済の礎となった。
同様に芸術が飾りから本質へ変わる。

"Understandhing Media"より私訳

「芸術家こそが新しい技術の中毒に陥らず、社会を調整する役割を果たせる」

マクルーハンはそうした。

次回につづく。

橋爪純さんの絵

橋爪さんのインスタグラムです。

ご覧くださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

下のリンクで拙著『人は幽霊を信じられるか、信じられないかで決まる』の前書きを全文公開させていただきました。

あなたの墓標には何を刻みたいですか。
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そんなテーマです。是非ぜひお読みくださいませm(_ _)m


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是非ご覧ください(^○^)


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起業家はトラウマに陥りやすい人種です。トラウマから立ち上がるとき、自らがせねばならない仕事に目覚め、それを種に起業します。

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Hayato  Matsui『逆転人生』共著者
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