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「お前には人を自然体に戻す不思議な力がある」

メモ、書籍仮原稿『エフェクチュエーション』に使用済み。


「僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない・・・」

尾崎豊はそんな風に歌ったけど、勝ち続けたって、別に自分らしくいられるわけじゃない。麻薬中毒で亡くなるロックスターなんかは今も昔も後をたたないし、ビル・ゲイツだってスティーブ・ジョブスだって横山やすしだってみんな、内心有名になりすぎて辛かったと言っている。

「ねぇ先生、私のいいところって何かある?」

受験シーズンになると、よくこんなことを聞かれる。個性派揃いのうちの塾だから、いろんな奴のいろんな良いところを褒めてきた。もちろんこの時には、悪いところには目をつぶるのである。

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「そうだなぁ」
「お前は祭りを盛り上げる天才だよな」
「お前はどんなツマラナイことにも全力投球できる努力の天才だ」
「ラグビー日本代表になれる力を秘めたスーパーラガーマン」
「中村俊輔ばりのファンタジスタ」
「昭和も真っ青のど根性男。よっ!ど根性男!!」
「う〜ん、、、」
「・・・お前の良いところも絶対に答えるから一週間時間をくれ」

ありとあらゆる褒め言葉を放ってきたわけだけど、「これはダントツだ」と思えるものがあるのだ。

「不思議だけど、お前には人を自然体に戻す力がある」
「どれだけ助けられたことか、俺も」

というものだ。

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失礼ながら彼女は米倉涼子のような美人でも、出木杉くんのような天才でも、オリンピックに出られるような超絶な運動神経があるわけでもない。言ってみれば平凡な女子中学生であった。

ただ、なんともなしに上品で、いつも綺麗な長い髪をひらひらとさせ落ち着きながら笑ったり冗談を言ったり、好きなK-popのことを話してくれたりした。

「平凡」という言葉で片付けてしまえばそれでお仕舞いになるのだけれど、彼女が卒業して、かつての教室の写真などをふと見返すと、皆の気持ちがいるべき場所にいるような不思議に安心した気持ちになるのだった。

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学校がなぜ存在するのかと問われれば、それは僕らが成長するためだし、会社も自治体も部活も政治も何もかも、人が前に進むことを否定する組織なんぞただの一つもないだろう。

ただ、いつ勉強が嫌になってしまうかとか、仕事で鬱になってしまうかとかを考えると、それは勝ち続けられなくなった時ではなくて、自然体でいられなくなってしまった時だと僕は思う。

一歩一歩ほうきを使って掃除する。一語一語の文字を味わって文を読む。一本一本鉛筆を削る。幸せな時間というものは何にも追い立てられていない時に現れるものだ。

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マーシャル・マクルーハンは、人は「もっと早くもっと早く」と追い立てられて、全てのイノベーションを起こしたのだと言う。だが逆説的に、我らが本領を発揮できるのは急いで事を為そうとしている時ではなく、自然体でいられる時だ。

急いでする勉強と、自然体でする勉強とは違う。前者はできる限り早く終えたいと思うけれど、後者は一生続けたいと思うのだ。

世界的ベストセラーの『Life shift』。その作者がインタビューで語っていたが、この本の肝は社会の変遷を掴むことにある。これまでは、教育の時代があり、仕事の時代があり、それから引退の時代があった。だが、これから人は教育と仕事と余暇とを同時に生きるのだ。

仕事や学びが、一過性でなくなるのだ。我らは、一生の仕事と一生の学びとを必要とする。

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人は今、速さを求めるべきではない。そうではなく自分のペースを、自然体を希求すべきなのだ。社会が要求する時間に動かされるのではなく、個々の時間から生み出される個々の世界観を展開する時代になった。

急かしてしまうのではなく、人を助けられる時間とペースとを探るのだ。彼女が僕を助けてくれたように。自己の時へと帰郷するのだ。もう学問も仕事も、そちらへと変化してゆかざるを得ないだろう。

速さの時代は終わった。これからは自然体の人間が世界を再構成していく。

自分の世界を作り出す自然体の時間。僕らは先の女生徒が持っていた、いわば「平凡」に立ち返り自らの本来を取り戻す必要がある。

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お読みくださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

下のリンクの新刊出させていただきました。
ご感想いただけましたら、この上ない幸いです😃


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Hayato  Matsui『逆転人生』共著者
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