内山節『時間と自由の関係について』 高校現代文
時間とは何か
遥奈さんが時間について話してくれた。
「古代の生物が海から上がり進化したように、私たちも時間から上がり進化する気がするんです」
彼女は磐田のアーティスト。私がずっと追いかけている人だ。
一橋の観光論、多田治教授に遥奈さんの話をぶつけてみた。
「100年前の糸島の漁村、沖縄の戦火に晒された村々、東京のサラリーマンに流れている時間」
「一つ一つ異なります」
「かつて人は時間を作っていました」
現地に赴き、歴史を通して世界を眺める。多田教授の周りには暖かな空気が流れる。
失われた時間を蘇らせながら旅をしているからだろう。
学習の手引き 2
それでは本文の「学習の手引き」2番を考えよう。
評論文は必ず二項対立を掴んで欲しい。
対立を掴めれば、それほど難しくない。
Chat GPTの解答。
太字の「この自由は、忙しさや制約の多い・・・。」は間違いである。
創造する時間について書かねばならないのに、対立する「時間を配分する自由」について述べてしまっている。
解答例:
時間の量と質の差について述べよう。
以下の問いに答えて頂きたい。
問1 なぜ老人は優しい顔をしていたか
問2 退職して自由に過ごす時間とは
問2解説
問2から考えてみよう。
「退職したら」の方は時間を配分する自由を、「八十歳」の方は時間を自分で作る自由を持った人間である。ゆえに「退職したら」の方は「八十歳で優しい表情をしていた老人」とはまったく異なる。
二項対立をきちんと把握すれば正解できる問題である。
問1解説
問1は難解。私が受験生だった時代の京大では、この種の問題がしばし出題された。諸君はどう考えただろう。
まず「時間を創造する」の意味を考察したい。
教科書に、
「今という時間は経過しない」
「常に今、ここに、存在し続けている」
とある。ここがポイントである。
哲学者ドゥルーズ
「いま、ここ」という概念を提出した哲学者ジル・ドゥルーズ。彼は時間を固定的なものでなく、生成し続けるプロセスと捉えた。
「いま、ここ」は単なる現在の瞬間ではない。過去と未来が交わり新しい出来事や可能性が絶えず生じる場とされる。
私が19の時、篠原美也子がラジオで「自分を叱ってくれる時間。曲を書くのは、そんな時間があるから」と話していた。
存在理由としての時間。「自分を叱ってくれる時間」は、「いま、ここ」で作られる。
内山節は「人は時間とどんな関係を築くか」と問う。数直線の時間ではなく、「いま、ここ」で自分を叱ってくれる時間を作るよう促す。
自分とは何か Who I am.
ハイデガーの『存在と時間』を読んでいても思う。過去の一時点とは自分そのものではないか。
過去に点在する「自分を叱ってくれる時間」が私の本来であり、「いま、ここ」にいる私は自己を開拓する先兵に過ぎない。
「いま、ここ」の時間は、もっとも不安定な私として星屑を発掘し、その苦闘を通し星座のような自己を顕現させる。
ここから手引き5と、問1に答えることができる。
問題 学習の手引き5
「老人はとても難しいことを話していたのである」とあるが、筆者が老人の話から受けた「難しいこと」とはどのようなことか。
解答:
「いま、ここ」で自らを作っていたこと。
問1
なぜ老人は優しい表情をしていたのですか。
解答:
自己へ回帰していたために優しい顔をしていた。
時間から上がり進化する
大学生となった元生徒が顔を出してくれた。驚くほど多くの方にインタビューし、起業イベントでも精力的にプレゼンしている。そのプレゼンを見せてくれた。
「よくそんなに頑張れるね」
「ええ」
「人と会って、自分がどうなるか分からないことが面白いんです」
「どうなるか分からないことが面白いの?」
「はい」
「予想もしなかった自分になれる気がして」
自己のデザインは計画的にできるものではない。彼は自らのコアを探す旅を楽しんでいる。心底驚かされ、私自身感銘を受けた。
西田幾多郎は「究極の善は自己の発見」とし、自己認識心理学では「究極の快感は自己の発見にある」としている。
「いま、ここ」に時を集約し、星屑を連鎖させる。人の本来性は、不安定な自己探究の中にある。
著者は「時間を作る」と話したけれど、私は時間を「いま、ここ」、0へ消し去ることだと思う。
「我らは時間から上がり進化する」
自己に至る道は0にある。
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橋爪さんのHPは以下です。
ご覧くださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃
起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)
下のリンクで拙著『人は幽霊を信じられるか、信じられないかで決まる』の前書きを全文公開させていただきました。
そんなテーマです。是非ぜひお読みくださいませm(_ _)m
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起業家はトラウマに陥りやすい人種です。トラウマから立ち上がるとき、自らがせねばならない仕事に目覚め、それを種に起業します。
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