治療家のための文化人類学~環境と文化への適応~
暑い、地形が険しい、人が多い、海に面している、性別の優劣づけがある、特定の神を信仰しているなど。
我々が古来より住み着いた場所や集団には、その地域や民族における生活環境の特徴があります。
その環境下において、より快適に過ごしたり、環境による不都合な部分を補うために、人々は生活上さまざさまな工夫を凝らします。
そんな工夫が「生活技術」を生み出し、集団の中で文化として広まります。
こうした文化の成り立ちを
「環境に対する文化的適応」と呼びます。
しかし、
年月が経過し環境が変化すると、
長い歴史の中で形作られてきた文化が
環境に適したものでなくなる場合があったり
環境に対して文化的な適応はしたものの
現代科学と相容れない文化を
形成してしまう場合があったり
環境と文化の関係性は
時に取り扱いが難しいものが多々あります。
マリにおける長い授乳期間
世界最貧国を争う貧しい国、西アフリカのマリ共和国において、子どもは「富と名誉の象徴」とされ、とても大切に育てられます。
ところが、食料不足や医療水準の低さも相まって、小児の死亡に関する統計は世界でもワースト級です。
国際機関からワクチン配給や、薬品、経口補水液の普及支援などを受けましたが、不可解なことに、あまり状況に変化がありませんでした。
子どもを大切にする文化がありながら、なぜ子どもの衛生状態が改善しないのでしょうか。
マリへと渡った調査団による興味深いレポートが存在します。
母親の文化的適応
この問題は大きく分けて
2つの要因によって生じています。
「授乳」に対する信条と
「家庭内のパワーバランス」です。
マリでは親子の絆に関して
強い文化的観念が存在します。
父親と子どもの絆は受精により完成し、
母親と子どもの絆は授乳により形成される
というものです。
父子の絆が完成されているとすれば、父親は子育てに参加しなくなるでしょう。
逆に母親は授乳育児ができなければ、例えば将来年自らが老いた時に子どもから手助けを得られなくなってしまうなど、家族による恩恵を受けられなくなる可能性があります。
またさらに、
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