サン=サーンス 交響曲第3番 「オルガン付き」
吹奏楽では、よくオーケストラ用の楽曲を吹奏楽用アレンジで演奏する事がある。「ダフニスとクロエ」「ローマ三部作」「ペルシャの市場にて」「サロメ」「運命の力」…数え上げればきりがない。俗に「(クラシック)アレンジ物」と言われたりする。
吹奏楽には基本的に、弦楽器はコントラバスやハープしかない(稀にチェロの使用を指示している曲もある)。なので、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロなどは近い音域を出せる管楽器が代わりをつとめる。クラリネットはよくヴァイオリンの代わりにされる。人数の加減もあるのだろう。弦はいくらでも長く音を延ばせるが、私共は限られた"息"と言う資源を利用しているので、アレンジ物は苦しい事がままある。
標題の曲は、以前居た地域のホールの、パイプオルガンの杮落し公演の際に演奏した曲である。
当時は全く知らない曲だったので、演奏する事に決定したと聞いて早速CDを購入し聴いてみた。初めて聴いた私の感想は
「これって吹奏楽で出来るの!?」
だった。
物凄い壮大さ。難解なフレーズはないが、この圧倒的なスケール感を本当に吹奏楽で表現出来るのだろうか?と不安になってしまった。確かに当時の楽団員数は約100名超と大所帯だったが、人数だけいてもどうなるものでもないのでは、と正直思った。
オマケにピアノが連弾で入っている。誰がすんねん?と思った。が、こちらは楽団員に二人ピアノの先生がおられ、私の疑問は即座に解決した。
貰った譜面には案の定、膨大な量のオタマジャクシが泳いでいた。速度も普通だし難しくはないが、これ一体何処で息継ぐねん、と一人突っ込んだ。クラリネットパートの楽団員は、みんな一様に唸っていた。因みにこういう譜面を私共は『黒い』と言う。
パイプオルガンは借りるのに莫大な費用がかかる。奏者も勿論呼ばねばならず、こちらもタダと言う訳にはいかない。当時はそういう問題に全く関心がなかったが、きっと幹部の方々は頭が痛かった事だろう。それでも演る、と決めて下さった事に、今とても感謝している。
練習は大変だったが、本番は最高に楽しかった。この舞台に立てて嬉しい、と本当に感じた。
演奏者でありながら、聴衆の一人である事を楽しめたこの曲は、私の忘れられない思い出の一曲である。